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SaaSのプライシング(価格設定)で注意すべき5つの点

今回はSaaSスタートアップにおけるプライシングの重要性ではなく(すでに重要なのは周知の事実なはずなので)、価格設定において考えるべきポイントを自分の言葉でまとめてみました。この記事では以下のPodcastをメインに、記事の最後にあるYouTube動画なども参考にしました。

尚、このPodcastに登場するのはOpenViewというベンチャーキャピタルのVP of Marketing Strategy(マーケティング戦略)であるKyle Poyar氏。彼は過去に世界トップレベルのプライシング戦略コンサルティングファームのサイモン・クチャーで働いた経験を持ち、計10年以上SaaSのプライシング戦略に関わっているいわばプライシングのスペシャリストです。

安すぎる価格設定

これは特にエンタープライズ向けのBtoBで特に注意すべき点になります。もちろんどのサイズのエンタープライズ向けかにもよりますが、多くの場合企業はそこまでprice sensitiveではなく、使うツールに相応のコストがかかることは理解している場合がほとんど。そして考えるべきもう一つの重要な側面としては、価格はそのプロダクトの品質を示すシグナルにもなるという点。

安すぎると感じられると、逆にそのプロダクトの品質を疑われるリスクもあります。すぐ消えてなくなったりしないか、継続的に開発リソースをそそぎ改善される見込みがあるか、必要なカスタマーサポートを提供するだけのリソースを確保でき得るプライシングか、など採用を検討する企業の立場になって考えることが必要になります。

採用を検討している企業においては、採用後に何か問題があり変更するということはコストになるため、コロコロと使うプロダクトを変えるのは極力避けたいと考えるはずです。

バリューメトリックの選定

Value Metric(s) とはカスタマーが感じるそのプロダクトの価値と一番相関性のあるメトリック(パラメーター、要素)です。ユーザー数であったり、利用時間であったり、利用回数であったり、ケースバイケース。

最近よく耳にするのは、ユーザー数(1ユーザー当たり月◯◯円というモデル)がもっとも一般的に採用されているバリューメトリックではあるものの、多くの場合それ以外にもっと重要なメトリックがあり、意外とユーザー数以外のメトリックを変数として料金プランを考えた方がいい場合も多々あるようです。

AWSはわかりやすい例で、ユーザー数での課金モデルではなく、実際に使ったコンピューティングパワーをもとにした課金モデルですね。

このバリューメトリックの定義は競合との差別化にもなり得ます。「あそこの課金モデルは◯◯ベースだがうちはこっちにしてはどうだろう」など、しっかりターゲットとするユーザーのペルソナをイメージした上で彼らにうまく訴求できるバリューメトリックを考えるのは重要かと思います。(結果的に他社と同じメトリックをベースにするとしても、その考えるプロセスは重要。)その際に競合他社のプロダクトの料金プランのどこにユーザーが不満を持っているか、持っていそうかを考え、分析することは良いアプローチだと思います。実際、個人的に過去に使ったことのあるユーザー数課金モデルのSaaSプロダクトで、チームのうち一人はたまにしか使わないユーザーであっても1ユーザーとして課金されることに若干抵抗があったという経験もあります。

プライシングページの最適化

当たり前のようで意外と疎かにされているように個人的に感じるのがプライシングページの重要性。単に機能の差をリストとチェックマークで表しているだけではなく、実際にそのページを訪れた潜在顧客がちゃんとプランの違いを理解しているのか、そして自分にあったプランを見つけやすく工夫されているか、カスタマー目線で考えるべきです。

プライシング(料金)自体の最適化よりも、プライシングページの最適化の方がコンバージョンに影響があることも意外とあるようです。A/Bテストやオンページ解析(Hotjarなど)を使ってしっかりとしたデータを取ることもプライシングページの最適化には重要になってきます。

既存顧客に対する単価拡大/アップセル

バリューメトリックは、カスタマーが支払うコストのスケーリングが実際の価値提供に比例するべきです。前述のAWSがもしユーザー数ベースの課金モデルだったとしたら1ユーザーで膨大なコンピューティングパワーを使ってもコストは変わらない、というようなことになってしまいます。カスタマーが得られる価値(の増減)がしっかり価格に反映されるようなモデルが理想で、それであればカスタマーに提供した価値に比例する形で客単価(売上)が上がっていくはずです。

また、Salesforceに代表されるように、しっかりとしたアップセルモデルがあることも大事です。代表的なのは松竹梅的な料金プランの展開です。クラシックな例ですが、選定するバリューメトリックも含め、カスタマーの成長に応じて適切な機能(価値)を適切な価格で提供できるよう、各プランの内容も熟考すべきです。

プライシングは動的であるべき

プライシングはスタティック(静的)で変化のないものではなく、いわばプロダクトマネジメントのようにコンスタントに改善されるダイナミック(動的)なものであるべきです。データを収集したり、ユーザーとのコミュニケーションから得られた情報をもとに常に改善と最適化を繰り返すことが大事になります。

データドリブンなプライシングという観点は、それだけ聞くと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、自分としては意外と抜けていたり忘れている部分のように感じました。

また以下のYouTube動画の冒頭にもありますが、ローンチ当初のプライシングはかなり悩むことも多いかもしれませんが、後から修正する動的なものと捉えれば、ある程度気が楽になるかもしれません。

尚、カスタマーへのヒアリングによって価格に関するフィードバックをもらうことは非常に大切ですが、Van Westendorp's Price Sensitivity Meterというモデリングされた手法もあるようです。

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補足リソース: