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スタートアップアイデアの評価の仕方

Y Combinatorが行なっているインキュベートプログラム Startup School 2019 の講義「How to Evaluate Startup Ideas」の内容を自分の備忘録としてまとめてみました。理由は単純に聞いていて色々勉強になったので。

講師は Kevin Hale。彼はオンラインフォームビルダーのWufooの共同創設者で、Wufooは2011年にSurveyMonkeyに買収されました

この講義のタイトルは How to Evaluate Startup Ideas で「スタートアップアイデアをどう評価するか」ですが、わかりやすく言い換えると「投資家に評価されるビジネスアイデアかどうか判断する方法」です。要は投資家はどのような事業アイデアを好むかということですね。そして「スタートアップアイデア」というのが大前提となります。

ここでスタートアップの定義は以下のように述べられています。

Startup is a company that is designed or created to try grow quickly.

スタートアップは急成長を目指す会社、ということです。

これはそもそも投資家は急成長し得る企業を探している、好む、というのが前提にあります。

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ここから本題で、講義の要約になります。

まず、スタートアップアイデアは仮説で構成されたもので、ファウンダーの役目は「なぜそのスタートアップアイデアが急成長(成功)するのか」を投資家に理解させること。

スタートアップアイデアは「Problem(問題)」「Solution(解決方法)」「Insight」の3つから構成されている。

Problem

これは initial conditions(初期条件)。そのスタートアップが急成長することができる前提条件。以下の点をチェックすることで、そのProblem(前提条件)を評価できる。言い換えれば、投資家は以下のような点を前提条件としているアイデアを評価する。

1. Popular
多くの人や企業が抱えている問題か。

2. Growing
その問題を抱えている人が増えているか。マーケット(市場)として成長しているか。

3. Urgent
できる限り早く解決すべき問題か。その問題を抱えている人は一刻も早く解決したいと思っているか。

4. Expensive
経済的に大きな損失をもたらしている問題か。

5. Mandatory
必ず解決しないといけない(ほっておけない)問題か。

6. Frequent
人が何回も頻繁に直面する問題か。

そのスタートアップが急成長できるかはどういった問題を扱っているかが重要で、上記の6つのうち少なくとも1つは当てはまった方がいい。そしてもちろん複数当てはまった方がより良い。

Popularかどうかはpotential customersの規模、すなわち市場の規模に関係するので言わずもがな重要。Growingも絶対成長市場でなければいけないことはないが、縮小していたり、明らかに縮小が予測される市場は注意が必要。

そしてFrequentも重要で、なぜなら人が短いスパンで何回も直面する問題は、それだけ解決へのモチベーションが上がるから。

例えば、100万人以上が抱える問題で、前年比20%市場が伸びていて(その問題を抱えている人or企業が増えていて)、毎時間直面する問題で、結果的に大きな損失をもたらしている、といったProblemだとGood。

Slackがいい例。

Solution

Solutionに関してのアドバイスはたった一つ。

Don't start here.
Solutionから始まるな。

Y Combinator が極力避けるアイデアが、SISP(Solution In Search of a Problem)。SolutionありきでProblemを探すな、ということ。

例えばエンジニアで、使いたい技術が先にあり(ブロックチェーンやReact Nativeなど)、それを使ってどういう問題を解決しようか、と考える流れが危険。

決して不可能ではないが、問題がまず先にあり、それを解決する手段を探す流れよりも急成長させるのが非常に難しいことが多い。

Insight

なぜそのスタートアップが(他を差し置いて)スケールするのかという仮説。

Y Combinator的に言うとそのスタートアップが持っている Unfair Advantages は何か。

このInsightによって他ではなく自分(たち)が成功すると投資家に理解してもらう。

Unfair Advantagesは大きく分けて5つ。

1. Founders
その分野の超エキスパートかどうか。GoogleでProduct Managerやってました、とかMicrosoftでエンジニアやってました、みたいなのは(もちろんそれ自体はGreatだけど)Founders Unfair Advantageとまではいかない。
バイオテックでその分野ずっと研究してました、とかこの病気の治療法についてずっと研究してました、とかがFounders Unfair Advantage。

2. Market
毎年20%伸びている市場とかはMarket Advantage。ただ、これだけだとやや不十分で、これプラス他のAdvantageがあるようが良い。

3. Product
そのプロダクトが類似のものより10X(10倍)いいか(数倍とかではなく)。これは誰から見ても明らかなくらいの差がある方が良い。

4. Acquisition
費用ゼロで顧客獲得ができるもの。有料広告などではなく、口コミでどんどんユーザー獲得できるものが良い。

5. Monopoly
ユーザーが増えるにつれ他社がより追いつけないほど市場を独占し得るか。ネットワークエフェクトをもつサービスやマーケットプレイスがこれに当たる。

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感想

ここで述べられているのは(当たり前のことかもしれませんが)スタートアップの事業アイデアを考える時に非常に重要な要素だと改めて感じました。

ただ Insight、unfair advantages はなかなか難しそう。Marketは成長分野であれば当てはまるとは思いますが、それ以外の難易度が高いです。Foundersはそもそもかなりの知識や経験を要するので学生時代から研究員していたり、40代起業家としてそれまでの経験を活かすといった場合以外は当てはまりにくいような気がします。そしてProductは技術的なブレイクスルーなどを持っていない限り初期段階で圧倒的な性能の差をつけることは難しいかもしれません。Acquisitionはいわゆるインフルエンサーなら優位性を持っており、他にも事前準備として時間をある程度かけてSEOで優位なポジションをとったり、あるいはソーシャルメディアで地道にリーチできる基盤を作ったりということはできるかもしれません。それがunfair disadvantageとして評価されるかはわかりませんが、少なくとも初期のスタートダッシュには有効な場合も多々あるように思います。