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【感想】ガールズバンドクライ(第13話「ロックンロールは鳴り止まないっ」)



以下、第十三話全編の内容に触れていますのでご注意ください。

<前回の感想>

●冒頭

教室にいる仁菜とヒナ。黒板には「自習」とあり、他の生徒の姿はない。
二人のやりとりからは、仁菜がいじめられているクラスメイトを助けに行こうとしていて、ヒナがそれを止めようとしていることがわかる。

自習で教室に二人だけっていうのも、どういう状況なんだろうか

教室を出ていこうとする仁菜にヒナが告げる。

「行ったら私、仁菜の味方できんばい。止めたらあいつらに今度は仁菜が目つけられっけんね」
「じゃあ、あん子はどがんなると?」
「知らんよ。うまくやって切り抜けるか、学校来んくなるか、先生が気づいて止めるか・・・」
「それまでほっとくと?」
「あんた・・・なんでそぎゃんと?ほんなこつイライラす・・・いい加減そういうのウザかったけど、」
「私が好かんと!」

ヒナの言う事は正しい・・・実際にそうなった、という意味で

「ヒナの言うことはわかるよ。ばってん、おかしかよ。間違っとう方が正しかて、やっぱ変とよ。私は黙っとられん

そこで目を覚ました仁菜。夢だったようだが、これはおそらくほぼ実際の記憶だろう。

「今日は事務所に行く日だっけ・・・やばい、寝すぎた」

二度寝は危ないよ・・・

ここでOPへ。

●Aパート

サブタイトル

第十二話のサブタイトルは神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」

だから
僕は今すぐ、今すぐ、今すぐ叫ぶよ
君に今すぐ、今、僕のギター鳴らしてやる
君が今すぐ、今、曲の意味分からずとも
鳴らす今、鳴らす時
ロックンロールは鳴り止まないっ

https://www.uta-net.com/song/91883/

売れない!

「はっきり言います。想定の半分も行ってません

事務所に集まった仁菜たちは、三浦さんからダイダスとの対バンライブのチケットの売れ行きが芳しくないことを知らされる。
また、三浦さんによればトゲトゲの露出度、認知度、検索数なども増えているということだが、それでも新曲の再生数が伸びていないらしい。

「これほど検索されていれば、曲もそれなりに動きがあるはず」
「それがないってことですよね・・・」
事務所の責任です」

険しい表情の桃香

宣伝の不首尾だろうと頭を下げる三浦さんに桃香は慌てるが・・・

「これだけ個人発信できる時代です。芸能事務所だって胡座をかいていられません。メリットが無いとなれば、アーティストから捨てられる・・・ですよね?」
「そうね」

ここで三浦さんが智の方を見たのは、智とルパがまさにその個人発信の経験者だからだろう

「もう少し時間をください。対策を考えます」

桃香が言いたかったことは・・・

事務所の前。このあと練習があるはずだったが、桃香は先に帰ってしまったらしい。だと言うのに仁菜以外はそれもやむなしという態度で、ついていけていない仁菜だが・・・

「名前は広まってるのに、曲は伸びない。それってつまり・・・」
曲に問題があるってことです」
「はあ!?」

「ほんとあんたはニブいわね・・・」辛辣な智

「三浦さんは桃香さんが自分でそれ言おうとしたから、言わせないよう止めてたの」
「なんで!」
「そりゃ桃香さんが傷つくから・・・」
「違うよ!これからだよ?あんなにいい曲なんだよ!みんなもすごく褒めてたでしょ?三浦さんも、中田さんも!」
「それで売れれば誰も苦労はしないっつーの」
「でも!」
「ゴッホの絵は生前1枚しか売れなかったってやつですね」
「でも・・・」

今日は解散の流れ

結局人は情報に流される。みんながいいって言ってるものは興味なくても見るし、誰も見向きもしないものは自分も見ない」
「そんなこと・・・」
「ないって言える?同じゲームの実況動画、5000と100万再生だったら、ニーナどっち開く?」

言葉に詰まる仁菜。そこへ追いうちのようにダイヤモンドダストのアドトラックが通りがかる。

対バンライブの直前、バレンタインの日にアルバムをリリースするようだ

アドトラックに小指を立てる仁菜だが、「やめれ!みっともないよ」とすばるに引っ張られていく。

じたばた

助けてあげる

翌日、トゲトゲの評判をエゴサして怒り心頭の仁菜。

『勝てもしないのに喧嘩売ってきたバンド』
『こいつらのイキってる感じが最高にイヤ』
『負け犬はとっとと消えろ』
「せからしかー!ふざけんな!ろくに聴いてもないくせに!大体お前らに負けてるわけじゃねえんだよ!関係ないんだよお前らは!」

あわや、スマホをブン投げるところ・・・

「落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け・・・」

自分に言い聞かせる仁菜。アンガーマネジメントだ・・・

しかもこの時点で対バンライブの初日、ダイダスはチケットがソールドアウト
そんなタイミングでSNSにフォローリクエストが来ていることに気づく仁菜。相手は・・・

ヒナ?えっ!?公式マークもある・・・」

どうやら本物らしい
「拒否」に手を伸ばすが・・・

川崎駅前。人待ち顔の仁菜に声がかかる。あたりを見回すと・・・

「バカは見る~♪」

吐く息も白い、冬

「久しぶり」

絶交した元友人であり、現ダイダスのボーカル、ヒナ

「いいの、変装とかしなくても」
「別に、そこまで有名じゃないよ」
「・・・相変わらず好きなんだ」
「そ、学校の帰りによく一緒に食べてたじゃない」
「お金払うし」
「いいよ、私のおごり」

ヒルバレーのポップコーン(ストロベリーフレーズ)

「・・・何の用?」
「なんにも。ただ誤解しているだろうなって思って」
「何を?」
「あのさあ、わざとダイダスのボーカルに収まったわけじゃない
から。言ってたでしょ、オーディション受けたって・・・あそっか、
それってもう絶交した後だ。仁菜、学校来なくなっちゃったし」
「なに、自慢しに来たの?私の言う通りにしないからこんなことになったって。私の言うことを聞けばこんなことにならなかったのにって」
「正解、と言いたいけど半分は違う」

ヒナの「わざとダイダスのボーカルに収まったわけじゃない」という話を言葉通り受け取るなら、芸能なり音楽活動という目指す方向性があった上でのめぐり合わせといったところだろうか。
とはいえ「ダイダスのボーカルオーディション」という認識無しで受けるということはまず無いだろうから、いざ受けるという段階ではそのポジションをしっかりと理解していたことだろう。

「チケット売れてないでしょ」
「関係ないでしょ」
「関係ないことないと思うけど。一緒にライブやるんだし」
「一緒じゃない!」
「仁菜の事務所の三浦さんが、うちに相談に来た。なんとかならないかって」

ヒナが言うには、トゲトゲのチケットはキャパの3割も売れていないらしく、三浦さんからダイダスに両日出演してほしいという打診があったそうだ。
そしてそれはダイダスのスケジュールとしては可能だが、仁菜たちの考えを聞いておきたいというのが呼び出しの主旨ということらしい。

ぐぬぬ

そのとき施設のBGMだろうか、ダイヤモンドダストの「Cycle Of Sorrow」が聞こえてくる。

「聞こえてる?これが売れるってこと。大事なこと。大切なこと。
いい加減さあ、認めたら?私が間違ってたって。ヒナが言ってたことが正しかったって。言うこと聞けばよかったって。

ヒナの言葉を聞きながら、トゲを放射しつつ高校での記憶がフラッシュバックする仁菜。

「全部さらけ出して生きてやるんでしょ?」
「・・・!」
「”間違ってた”って言えばいくらでも助けてあげる」

「全部をさらして生きてやる」は第5話のライブでの仁菜のセリフだ。ヒナが仁菜のバンド活動を認識したのは少なくとも第8話以降かと思われるので、後でライブ映像を確認したか何かだろう。

「潔く負けを認めろ」といったところだろうか

舌を出し、小指を立てて見せるヒナ。
仁菜は立ち上がり、「帰る!」「お金!ごちそうさまでした!」とドリンク代だかを置いて去っていく。

キレつつもきちんと「ごちそうさま」は言う仁菜

仁菜の背中を見送るヒナの表情が意味するところは・・・

上段左 いつものサラリーマン!?とことん揉め事の現場に居合わせる運命なのか・・・

否定しないで!

電話での呼び出しに応じ、桃香の家に来た仁菜。他のメンバーは全員集まっており・・・

ダイダスから両日とも対バンにできないかって連絡が来たらしいんだよね」
「同じ客の前で普通に勝負したいって」

険しい顔つきの桃香

まさにヒナから聞かされた対バンの件だったが、ダイダス側からの提案、という点が違っていた。そう聞いてさすがに仁菜もどういうことかの察しはついたようだ。

すばるや智は提案に賛成寄りのようだが・・・

「でも今からだと、勝負に関係なくお客さんが入ったのはダイダスのおかげってことになりますよね。それってもう私たちが負けを認めたようなもんじゃないですか」
「仁菜さんは反対なんですか?」
「はい、嫌です」

「始まった」
「ニーナの気持ちもわかるけどさ・・・」
「嫌なんです。絶対に嫌だ!」

机を叩き、強く訴える仁菜

「どんな思いをしてここまで来たと思ってるんですか!桃香さんは間違ってない、桃香さんの歌は通用するんだって、それを証明するんですよね!それを信じてるからここまでやってきたんです!」

そんな仁菜に、桃香は冷静な言葉を返す。経費などお金の問題があり、想定を下回っているからには、ダメージを減らすことを考えるしかないという。

会場費、グッズ、宣伝費・・・「お前が責任とるって言うのか」

「原因は全部私だ。ごめん」

桃香は仁菜に・・・皆に対して頭を下げる。

さすがに驚いた様子の面々

「それは、ダイダスにも頭を下げるってことですか」
「別にダイダスに下げてるわけじゃないじゃん」
「そうよ、向こうの提案に乗ってあげるって話でしょ」
「下げてるの!本当にダイダスがそんな提案してくれると思う!?」

仁菜の言葉に驚く桃香と一同

「どういうことだ?」
「決まってるじゃないですか、三浦さんから頭を下げて頼んだんです。一緒にやってくれませんか、助けてくださいって」
「そうなの?」
「どうしてそんなこと知ってるんだ」
「言いに来ました・・・ヒナが私に間違ってたって言えって。そしたらいくらでも助けてやるって。私、言いたくありません!だって、私・・・」

泣き崩れる仁菜

「間違ってないから!」
「ニーナ・・・」

仁菜は桃香のギターをつかみ、こたつの上でかき鳴らし始める。

「だから頭なんか下げないで!」

「ダイダスの両日出演」が仮に本当にダイダス側からの提案だったとしても、この段階でそれを飲むということは仁菜の言った通り負けを認めたことになる。それだけでも仁菜にとっては承服し難いことだろうし、三浦さん(トゲトゲ側)からこの件を打診したとわかった以上は、両日出演に同意することはダイダスに頭を下げるのと同じことになるわけで、それは「絶対に嫌」ということになるだろう。
それはトゲナシトゲアリが、先の仁菜のセリフの通り「桃香さんは間違ってない、桃香さんの歌は通用するんだって、それを証明するんですよね!それを信じてるからここまでやってきたんです!」と、そういうバンドであるから・・・つまり仁菜にとって自身とバンドの根幹に関わることなのだ。

「あの時の私を否定しないでください!」

「あの時の私」とはヒナに止められてもクラスメイトを助けに行った瞬間のことだろう。ヒナはその時のことを指して「間違っていたと言えば助ける」と言ってきたのだから。

智は無表情に、すばるは呆れたように、ルパは困ったような寂しげな顔で、桃香は驚きの表情でそれを見ている。

「お金、責任、人気、そんなの分かってる!悔しい、悔しい、悔しい、悔しい!」

「せからしかー!!」

勢い余って足を踏み外し、こたつから落下してしまう仁菜。

心配して身を乗り出す面々

「私って、なんてちっぽけなんだろう・・・!」

両手で顔を覆い、涙する仁菜。そんな仁菜を見て、桃香は・・・

アイキャッチ。こたつの上には・・・

あのォ~・・・ここの桃香さんなんですがね・・・
こたつに飛び乗ってギターを弾き始めた仁菜を驚きの目で見ているのは、まあその突飛な行動に驚いてるというのもあるかもしれませんが、(後のシーンに関わる話でもあるけど)仁菜のギターが上達してることに驚いてるっていうのがあると思いますし、その後こたつから落ちて泣く仁菜をひとりなんか「まったくしょうがねーな・・・」みたいな微笑みを浮かべて見てるのはもうなんか本格的にダメと言いますか・・・「私の歌」に脳をヤられすぎてるとしか思えないんですよねぇ・・・だってもうこの時点で仁菜の主張を受け入れてる顔してるんだもの・・・ハァ~ア!(クソデカため息)

ここでAパート終了。

●Bパート

選択と責任

教室。おそらく冒頭の夢/回想の場面の続きだろう。

「あいつらがやったと・・・?言ったはずだよ。味方はできんって」

仁菜の額には絆創膏が貼られていた。高校の回想シーンで何度も現れている姿だ。いじめを止めに行った結果、受けた傷なのだろう。

「私のしたことそんなに嫌だった?」
「あんさ、仁菜と話している時いつも感じとった。正義のトゲ出して、繊細振りかざして、みんなを傷つけて・・・なんか、自分が悪者に見えてくる

場面は現在。前回も登場した、仁菜の家の近所の神社。
仁菜は高校でのいじめと、ヒナとの絶交について桃香たちに話していた。

「それっきり絶交か」
「はい・・・」
「すこぶるニーナらしいエピソードだわ」
「それで、いじめられてた子はどうなったんですか?」
「それが不思議なんですけど、少ししたらその子たちと一緒に私のこといじめてきたんです」

驚きの表情を見せる桃香たち。

「そしてこっそり話すんです。あの子たちに謝りなって。きっと
許してくれるからって。そしたら私もこんなことしなくて済むって」
「なんなのそれ・・・!」
「でも、震えてたんです。その子たちに怯えてた」

仁菜はそんな目に遭っても、助けた子のことを悪くは思えなかったのだろう。

驚き→憮然としたり、悲しそうだったり・・・すばるたちの表情の変化にも注目したい

「でも、助かったんでしょ?あんたが恩人なんでしょ?」
「それで学校行けなくなったわけか」
「はい」
「間違ってないから、か」

仁菜に代わって怒っているような智の勢いにグッと来る

「間違ってるわよ!どう考えてもあんたが間違ってる!」
「智ちゃん・・・」
「だってそうでしょ!?そのヒナっていう子の方がどう考えても
正しいわよ!でもね!・・・でも・・・だから私は惹かれたんだと思う。
あんたの歌声が好き!
たぶん・・・ルパも桃香も、すばるも」
「智ちゃん・・・!」

智ちゃんがデレた!!!!!

智の言葉が嬉しかったのか、勢いよく抱きつく仁菜。

「やめ・・・!」
「いいでしょ?」
「そういうの好きじゃないの・・・!」
「結論、出ましたね」

ルパさんマジでママ(?)

「でも、三浦さん達がここまで頑張ってくれたんだ・・・責任は取らなきゃな
「マジかぁ・・・でもまあ、なんとなく想像してた気がする。最初からこうなるって」
「こいつだもんな」
「うん、ニーナだもん」
「ひど!」

境内に響く、5人の笑い声

事務所。仁菜たちはトゲナシトゲアリとしての選択を三浦さんに伝える。

「断る?」
「はい、すみません」
「対バンにしたいって言ってきたんですよ?ちゃんと勝負したいと」
「わかってます。でも、今からじゃ私たちが助けられた形になってしまう」
「たとえそうでも、少なくともお客さんには・・・」

桃香が差し出したものを見て、三浦さんは言葉を飲み込む。

「みんなでそう決めたので」

「退所願」と書かれた封筒。仁菜たちは自分たちの選択の責任をとるべく、事務所を辞めることを選んだのだった。

「もちろん、それがどれだけわがままな選択なのかも、事務所にも少なくないダメージになることも分かっています。今回のイベントの経費を教えてください。いつになるかは約束できませんが、必ずお返ししますので・・・お願いします」

揃って頭を下げる仁菜たち

頭を上げて理由を教えてほしいという三浦さんに逡巡を見せる桃香だが、その問いには仁菜が答えた。

三浦さんは(もちろん仁菜たちのために、ではあるだろうが)嘘を言っていたわけなので、そこを把握していると伝えていいものだろうか・・・という迷いだろう。

「連絡が来たんです。ダイダスのヒナから、直接私に。三浦さんの気持ちは嬉しかったです。私が無理言ってライブすることになったのに、ここまでしてくれるなんて・・・なのに断るなんて失礼だって、今でも思ってます。でも・・・ごめんなさい!わがままで」

改めて頭を下げる仁菜

「実を言えばわかっていたんです。あなたたちの気持ちに反することになるのは」
「三浦さん・・・」
「三浦もダメですね・・・勘違いしないでください。お金と契約のことは
事務所と三浦が何とかします」
「えっ?」
三浦は、そんなあなたたちだから一緒にやりたかった・・・最後くらい役に立たせてください」

「引き止める」とかじゃないあたり、三浦さん、トゲトゲに対して「分かり手」すぎる・・・

レコーディングスタジオ。新曲のレコーディング・エンジニアを務めてくれた中田さんにも、退所の件を伝える仁菜たち。

「やめる?」
「はい」
「何?移籍?」
「いえ、フリーでやっていこうかと思ってます」
「何か不満があったの?」
「ないです。ただ、自分たちで決めたんです。それだけです」

「ふうん・・・青臭いこと言うねえ・・・」
「怒ってない?」
「余計なこと喋るからよ」
「ふうん・・・
10年経って生き残ってたらまたおいで。タダで仕事してあげる
「はい、ありがとうございます!中田さん!

少し微笑む中田さん。彼なりに、トゲトゲを気に入ってくれたのかもしれない。

一生の誓い

事務所/スタジオからの帰りだろう。いつもの吉野家の前にいる仁菜たち。

「牛丼食べてくか」
「どうせ飲みたいだけでしょ」
「そんなことないですよ」
「ルパは説得力なし」

「そういえば、二人ともここで初めて出会ったんですよね」
「そうね」
「beni-shougaか・・・誓い、立てませんか?紅生姜で。
智ちゃんたちの大切な名前でもあるし、大切な一生の誓い

「紅生姜で誓いを立てる」というのは「誓いの酒を酌み交わす」みたいなことだろうか。一緒に誓いの紅生姜を食べよう!

「何を誓うのよ」
「この5人でずっとやっていく!絶対にやめない」
「なら食べていくしかないじゃん」
「いいですねえ」
「ほんと一杯だけよ」

仁菜の言った「誓い」は、桃香がかつてダイヤモンドダストのメンバーと交わした・・・果たされなかった約束と同じ。

「一杯だけ」は丼じゃなくてルパに対してお酒のことを言ってるんだよね、智ちゃん?

「桃香さん!」
「ん?」
「私、この街が好きです。笑ったり泣いたりしてくれる仲間と出会えたこの街が、大好きです!」
「・・・川崎な!」
「・・・はい!」

最初に目指した「東京」ではなかった。でも今は、この場所が・・・

運命の華

いよいよ対バンライブ、トゲナシトゲアリのワンマンDAY当日となった。
ちなみに観客の中には、
・キョーコと革ジャン
・第5話で桃香に絡んできたバンドマン
・第7話でトゲアリトゲナシトゲトゲTシャツを着ていた女の子(たち)
・いつものサラリーマン
・すばるのスクールの子たち
と思われる人たちの姿があるので、探してみると面白いだろう。もしかしたら筆者も気づいていないようなキャラが他にもいたりするかもしれない。

Twitterで見かけたのだが「第三話冒頭の鳩がいる」という指摘には笑ってしまった。

本番前の楽屋で喋っている仁菜たち。結局、チケットの売れ行きはソールドアウトにはほど遠かったようで・・・

「コールド負けですね。日本シリーズ4連敗~みたいな」
「奇跡は起きずか」

「でもさ、わかってたことだよ。私たちは現実が厳しいって知ってるし、簡単じゃないってことも」
「どの口が言ってんのよ」
「一番わかってないのはニーナでしょ?」
「ですよね・・・」
「ま、だから言えるんだろ?間違ってないって」
「桃香さん・・・」

桃香の言う通り、仁菜が大人しく物わかりのいい人間なら「間違ってない」を貫き通せなかったし、きっとこの5人はこうして集まってすらいなかっただろう。

「そういえば」と桃香が話題を変える。昨日のダイダスのライブに伴って、トゲトゲの新曲に対するコメントが増えているらしい。桃香がそれらを読み上げていく。

「俺は好きだぞ、これ」
「なんでこんなに叩かれてるの?」
「うっせえな、数字じゃねえんだよ、曲は」
「まだ途中なのに決めつけてんじゃねえよ」

「・・・って黙ってればいいのに、こういうこと言っちゃうやつも世の中にはいるってことだ」
「本気って伝わるんですね、桃香さん」
「そうだな・・・」

ここの仁菜のセリフだが、第11話でダイダスのステージを見た桃香の「お客にもちゃんと伝わってるんだ・・・本気は」というセリフにも呼応しているように思う。(もちろん本作では「本気」というキーワードは他にも随所に用いられているが)

「でも、あんなにギターが上手くなってるなんて思わなかったよ」
「まさかあそこまでとはね」

「本当にいいんですか?私が演奏して」
「いつも見晴らし公園で練習してましたもんね」
「いいんじゃない」
「みんなありがとう・・・!」

どうやら、ついに仁菜がステージでギターを持つことになるようだ。
そんな話をしていると、三浦さんから呼び出しがかかる。

いよいよ本番

楽屋を出た仁菜は、ホワイトボードに自分宛ての書き込みを見つける。

「仁菜へ♡上をみて!!ヒナ」

指示通りにしていくと・・・

「ひだり見て ヒナ」

『バカは見る♡』
「あいつ・・・!」

ヒナのイタズラ、あるいは挑発か、嫌がらせか・・・それを見た桃香たちは面白がって好き放題言い始める。

「面白いじゃない」
「案外ヒナって子はニーナに折れて欲しくないのかもしれないね」
「どういうこと?」
「わざわざ謝れって言いに来たんだろ?言えば意地張るって知ってるからだよ」
「確かに、仁菜さんラスボスみたいですもんね」
宇宙一ムカつく正論大魔王だな」
「でも倒したらゲームが終わってしまうから倒れてほしくない」
「全然嬉しくないです」
「褒めてるんだよ・・・私が言うんだから間違いない

さて、我々はもはやこういった場面ですばるの言う他者に対する見解はおおむね正しいということを経験的に知っているわけだが、ここでは桃香すらそれに乗っかって、すばるの意見を補強しているように思う。
そうなるとつまりヒナは仁菜の反応を見越してああいった提案を投げかけてきたということになるだろう。このへんについては、後で詳しく述べたいと思う。

ついに「モンスター」から「大魔王」に進化した仁菜。ゲーム好きのすばるからの(ゲームになぞらえた)最大級の賛辞・・・なのかもしれない

改めて、三浦さんから声がかかる。

「皆さん、時間です」

三浦さんにとってもトゲトゲとの最後の仕事になってしまうからだろうか、見守るような優しさと、一抹の寂しさを感じさせる表情だ。

下段右 空気中のちりやホコリに照明が当たって輝いているのだと思う。あたかも自然現象としてのダイヤモンドダストのようだと筆者は思ったが、Twitterを見ていると北斗七星とみなす意見が多いようだった。確かに形としてはあからさまにそれっぽい。ただ、これが北斗七星を表現しているとして筆者の知識や感覚から「こういう象徴/演出であろう」と言えることが無いためそこは他の方の考察/感想に譲りたいと思う

幕が除かれ、照明がステージを照らす。

仁菜のギターは前回楽器屋で見ていたものだろう。頑張って買ったんだね・・・

客入りは会場の3~4割といったところだろうか。満員には程遠い埋まり具合だが、観客からは仁菜たちへの声援が上がる。

「えっと、皆さんご存知の通りダイヤモンドダストとの対決だったわけですが、結果は見てわかる・・・ああっ!本日はお越しいただいてありがとうございます!」

頭を下げる勢いでマイクにぶつかる仁菜。そんな古典的な・・・
ちなみに説明するのもなんだが、仁菜が慌てて言葉を切ったのは、「結果はダイダスには及ばない」とか「少ない」みたいな言い方をしては、実際に来てくれているひとりひとりのお客さんに失礼になってしまうと思ったからだろう。

観客から「かわいー」という声も。ワイトもそう思います

「実は私たち、けっこう意識してました。ダイヤモンドダストに勝ちたいって、負けたくないって・・・フェスの時も本気で張り合ったりしてました」

そこまで話して、仁菜は二階席の正面(関係者席だろう)にヒナの姿を発見し、眉をひそめる。

「突然ですけど、自分語りします。いいですか?ルパさん」

「自分語りはウザい」派のルパさんの許可も出たところで・・・

「私、高校の時いじめられてる子を助けに行ったことがあって、その時、教室から助けに向かう途中、嬉しかった。なんか誇らしかったしそんな私が好きでした。そのせいで今度は自分がいじめられることになっちゃって、結局学校辞めちゃったんです」

「でも、あの時から一度も行かなきゃよかったとか、行かなければこんなことにならなかったのになんて思ったことはなくて。それでわかったんです。
私、何一つ後悔してません!
桃香さんの歌があったから私は強くなれたし、そんな話をよくヒナと・・・

それは、忘れていた記憶

「そっか・・・」

ヒナも好きだった。ダイダスの歌が。
私だけの歌じゃない。ちゃんと届いてたんだ。

微笑んで、仁菜は続ける。

「改めて、本日は本当にありがとうございます!皆さんはこっちに来てしまうへそ曲がりな人たち。でも私は、そんな人たちが大好きです!」

「そして叫んでやります!絶対負けてないって、間違ってないって!」

「私たちの、始まりの目撃者になってください!」

<第13話挿入歌「運命の華」>

誰だっておんなじ 命の上に生きてる
居場所がないなら 飛び立ってゆけ

運命が絡まって轟いて 他の道食べ尽くした

高校時代の桃香
「めざせ!!ぶどうかん←漢字で書けよ!」”ぶどう”の絵が添えられていたり
桃香のスマホ、このときから割れてるんじゃないだろうな・・・

私に残った人生 君と歌っていくこと

「私に残った人生 君と歌っていくこと」で桃香が仁菜の方見てるのヤバすぎますって
祖母、天童と歩くすばる。今よりも少し髪が短い。

灯りも風もない まるで孤立の牢獄

すばるがドラムに興味を持った瞬間なのだろうか
11話でも一瞬映っていたが、やはり智の母親だろう
ピアノのコンクール?母親とは対照的に無表情な智。

苦しくて辛くって 傷だらけで全部が嫌だったんだ…

写真立ての人物はルパの父親だろう
ビールは、父親が好きだったのだろうか
長い髪を自分で切ったルパ
どうしても、”遺品の整理”といった状況を思わせる
同じ音楽を好きだった

広げた翼は穴だらけでも

イヤホンをして、涙を流す桃香
自分たちで初めて作った曲を聴いて・・・そんな場面なのかもしれない

地獄の底だって 君と歌えるなら

かつての仲間たちと、それぞれの”糸”
光に向かって落ちていく桃香。第10話で仁菜が姉に語ったセリフを思い出す。
「それが、奈落の底に落ちてるのか、大空へ向かって飛んだ瞬間なのかはわからないけど、私は、あの歌で飛べたの」
そしてここの映像にかぶさる歌詞は「地獄の底だって 君と歌えるなら」
桃香の”糸”

消えたくって 羽ばたいて 今
消えたくなくなった

ルパの”糸”
智の”糸”

摘み取って残した ここでいつか 華咲かせる

すばるの”糸”
みんなの”糸”が仁菜に集まっていく

消えたかった 私はもういない

消えなくてよかったな…

だって君と出会い 芽吹いてしまった 運命の華

歌詞の引用全て:https://www.uta-net.com/song/356558/
みんなの”トゲ”が・・・
”輝き”へと変わっていく
”中指立ててけ!!”
ステージを見つめるヒナ
ふと気づくと・・・
ダイダスのナナたちがそこにいた
ヒナにウインクしてみせるナナ
ムッとした表情になるヒナだが・・・
ステージに向き直り、どこか不敵な笑顔

「「「「「せーの・・・」」」」」

「トゲナシトゲアリ」と「ダイヤモンドダスト」の意匠が施されたステージ

「「「「「ありがとう!!!!!」」」」」

●全体的な感想

13話の中で気になった点について、ここまでで書ききれなかったことを述べていきたいと思います。

衣装のこと

トゲトゲのライブ衣装ですが、実はOP映像ではすでに登場していたものですね。

OPより

衣装のテーマというか、全員に共通しているのは「これまでの自分」「今の自分を構成している(してきた)もの」みたいなことかと思います。
仁菜は高校の制服を中に着ていますし、桃香の衣装は第8話の回想シーンで登場した「アイドル路線のダイダスの衣装」をアレンジしたものと思われます。

第8話より

すばるはいつもの制服スタイルの流れからだと思われるヤンキーというかスケバンというか特攻服スタイルの衣装ですし、智とルパはバイトしていた吉野家の制服アレンジで、二人のユニットであった「beni-shouga(紅生姜)」の文字も入っています。

それと、仁菜、桃香、ルパの衣装には写真?のコラージュみたいなものもほどこされていますね。智とすばるに関しては確認できませんでしたが、よく見えないだけかも。
これらも、仁菜たちの「構成要素」みたいなものを表現しているんじゃないかなと思います。

左から1.仁菜の衣装・・・第三話の仁菜のステージ衣装イラスト?と、新川崎(仮)のときに撮ったものだろうか、3人でピースサインを合わせたところの写真
2.桃香の衣装・・・桃香の家の猫、第5話のライブ衣装のTシャツ、桃香の私服のメガネをかけた犬のデザイン、仁菜と同じ新川崎(仮)の写真
3.ルパの衣装・・・よく見えないが智の頭のリボン?

ヒナと仁菜の関係性について

仁菜はラストシーンのライブの直前、ふと今まで忘れていたことを思い出します。

ヒナも好きだった。ダイダスの歌が。
私だけの歌じゃない。ちゃんと届いてたんだ。

13話より、仁菜のモノローグ

ヒナとは絶交した経緯とか、あと仁菜があまりにもダイダスの歌への思い入れというか自分だけのものだという想いが強すぎたためとかもあるかもしれませんが(実際「私だけの歌じゃない」と言ってますし)、ヒナも自分と同じくダイダスの歌が好きだったということをずっと忘れていたんですね。

でも、仁菜は思い出しました。それも、ただ思い出すというより何かこう「悟り」のようなものとしてそれが訪れたような感じがある。それは「ちゃんと届いてたんだ」というセリフにもあらわれている気がするのですが、その意味を正しく筆者が受け止められているかどうかは正直あまり自信がないです。

それでも言葉にするならば、それは「ダイダスの歌から何かを受け取ったのは自分だけじゃない」「桃香さんの歌は届く人には届いてたんだ」という気づきなんじゃないかと思うんです。
たぶん仁菜は、「自分を救ってくれた桃香さんは、桃香さんの音楽は間違ってない、それを証明したい」という想いが強すぎて、桃香さんと桃香さんの音楽を肯定しているのは世界で自分だけかのように思い込んでいたフシがあるんじゃないかという気がするんですよね。けど、もちろんそんなことはなかった。そしてその自分だけじゃない他者のひとりというのが、友達だったヒナに他ならない、と気づいた。そういう瞬間だったんじゃないでしょうか。

ただ、あそこで別に「和解」というかヒナとのわだかまりが溶けて消えたとかそういう簡単な話ではないと思うんですよ。
でも、たぶんあそこで「ヒナも好きだった。ダイダスの歌が。私だけの歌じゃない。ちゃんと届いてたんだ。」と思ったのであれば、同時に仁菜はヒナが現ダイダスのボーカルであることについても何か感じたと思うんですね。
もちろんヒナがどういう想いで今ダイダスのボーカルをやってるかというのは、本人のセリフとかで明快に語られているわけじゃないから、わからないといえばわからない。
でも、たとえば11話のダイダスのライブシーンを見た桃香がこう言ってるわけですよね。

お客にもちゃんと伝わってるんだ・・・本気は

11話より、桃香のセリフ

であるならば、それは仁菜にだって伝わっているはずなんです。
つまり、たとえどんな動機に根ざしているとしても、ヒナは生半可な想いではダイダスのボーカルをやってないんですよ。

だったらどうなるのか、というと、ここでようやく仁菜とヒナの関係性という話になるんですが、筆者は、二人はいわばコインの裏表みたいな存在というのが一番しっくりくるかなと思っています。

仁菜は、元ダイダスの桃香と共にトゲナシトゲアリとして。
ヒナは、桃香の抜けたダイダスで新しいボーカルとして。
同じものを好きだった二人が、そこから道は分かれたけれども、それぞれの大事なものを守り、体現しているんだと思うんです。

13話より。
二人の根っこはきっと・・・

ヒナは仁菜をどう思っているのか?

正直、わからないです。
でもヒントはあると思います。たとえば13話でヒナが仁菜に「三浦さんが両日出演を頼みに来た」と伝えたこと。

すばると桃香のこんなセリフがありました。

「案外ヒナって子はニーナに折れて欲しくないのかもしれないね」
「どういうこと?」
「わざわざ謝れって言いに来たんだろ?言えば意地張るって知ってるからだよ」

13話より、ライブ直前のシーン

たぶんこの二人の言っていることは正解で、ヒナは仁菜の反応を見越して両日出演の件を伝えに来ていると考えるのが自然だと思います。
じゃあ、ヒナは仁菜に両日出演のことを突っぱねて欲しかったからああいうことを言ったのか?と言われると、それはわからないです。筆者としては、そこには一言では言えない屈折した感情があるはずだと思っています。やはり、親友ではあったけれども、考え方の違いから絶交している相手ですからね。

対バンの件に関してであれば、強いて言うならヒナは仁菜に、ヒナの思う仁菜として競い合う相手であって欲しかったんじゃないかなと思います。
ヒナの思う仁菜とは、つまり「”謝れ”なんて言われたら意地でも謝らない仁菜」であり、「ことの真相を知っても知らなくてもおそらく両日出演の件は受け入れないだろうが、万が一真相を知らずに受け入れるなんてことは一層プライドが許さないだろうと思われる仁菜」であり、「ヒナがどうしてもある面では相容れなかった仁菜」なのだろうと思います。

13話より。
きっと、悪感情だけでも、かといって好意だけでもない

ナナたちはどう思っていたのか?

ちなみにヒナ以外のダイダスのメンバー(ナナ、リン、アイ)はこの件をどう思っていたのか。そもそも、この企画自体ナナたちがどう思っているのかということ自体明らかになっていませんし、これも憶測にすぎませんが、なんとなく、

・ヒナは独断で三浦さんの打診の件を仁菜に伝えに行った
・でもナナ(たち)はそれをなんとなく察していてヒナの好きにさせた

とかそんなことだったんじゃないかなという気がしています。
理由を言葉にするのが難しいのですが、下の画像のシーン(いつの間にかナナたちがヒナの横に来ていて、ナナがウインク→ヒナがムッとしてステージに向き直り、不敵に笑う)を見て、そういう感じなんじゃないかなあと思いました・・・そう感じたとしか言えないですね、すみません。

アイちゃんが涙ぐんでいるのがかわいい。8話でもそんなシーンがあったし、メンバーの中で一番涙もろいのかもしれない。

OPの変更点

OPの最後、アウトロで次々に切り替わるカットの中に13話だけ違う部分がありましたね。これは最後のライブシーン直前の仁菜の語りに対応した変更だと思います。

1~12話まで
13話

●「ガールズバンドクライ」を振り返っての感想

「間違ってない」ということ

作品を通して仁菜が常々口にしてきた「間違ってない」という言葉。本作にとって重要なキーワードだと思います。
「間違ってない」という言葉に意味が近い別の言葉として「正しい」というのがあると思うんですが、仁菜はけして「(自分が)正しい」とは言いません。この違いはなんだろうか。ずっと考えていて、なかなかうまく説明できないのですが、ひとつ筆者が思ったことは、それは「内側」と「外側」の違いなんじゃないかということです。

「正しい」、つまり「正解」という概念は、自分の「外側」にあることも多いと思います。たとえば、自分ひとりで考えてもなかなか答えが出なかったことが、他者の考えや情報を知ることで解決することがあります。あるいは、自分ひとりの問題ではなく他者が絡む問題には、仮に自分の本意でなくとも、そうすべき「ベターな解答」や「最適解」が望まれることもあるでしょう。こういった状況では「正しい/正解」が自分の「外側」にあったと言えると思います。いくら「自分にとってこれが正しい」と思っていることがあった(「正しい/正解」が自分の「内側」にあった)としても、それが他者や状況にとっても「正しい/正解」とは限らないということです。

反対に、「間違ってない」というのは自分だけが判断できることです。もちろん、それが「正しい/正解」かどうかはわからない。でも「間違ってない」ことだけは確かだという感覚。他者によらず情報によらず、自分自身の中で納得できる基準に基づいて判断される自分の中の「絶対防衛ライン」、それが「間違ってない」ということではないかと思うのです。

ある状況において、これが「正しい」かどうかはわからない。しかし「間違ってない」ということだけはわかる。そういう選択ができたなら、結果がどうであれきっと後悔なんてしない。

井芹仁菜の「間違ってない」とは、そういう生き方を貫くことなんだと思います。

第13話、ライブシーン直前のMCにて。
「私、何一つ後悔してません!」

井芹仁菜は「憧れ」

作品を通して、仁菜というキャラクターを好きになれない、共感できないという人もたぶん多いんじゃないかと思います。
仁菜はワガママだし、感情的だし、やることなすことけっこう無茶苦茶です。第11話でいみじくもステージで背負った「傍若無人」の文字は井芹仁菜という人間をけっこう的確に表現していると思います。

ですが筆者は井芹仁菜というキャラクターに出会って、彼女に強く惹かれました。そういう魅力があるからです。

第11話のすばるのセリフを一部借りるならば、嘘はつかないし、すべてに全力。目指したものやなりたいものに本気で、まっすぐに向かって行ける。

第11話より

できることなら仁菜のように生きたい。
そんな風に感じるのは、たぶん筆者だけではないと思います。
この「ガールズバンドクライ」という作品が描いていることのひとつ・・・井芹仁菜というキャラクターが体現していることのひとつは、この「憧れ」
ではないでしょうか。

我々は(勝手に一緒にするな、と思われた方は申し訳ありません)どうしてなのか、なかなか仁菜のように生きることができません。
だから眩しい。
自分を貫き、自分を誇らしく思える。そういう自分が好きで、後悔しない生き方を選べる。そういう仁菜のことをうらやましいと感じる。

筆者は、必ずしも人は自分を好きにならなくてもいいと考えている人間ですが、それでも自分を全く肯定できず、自己嫌悪しながら生きるのは辛いことだと思います。
だから、もし誰に否定されても誰に認められなくても、自分だけは自分を肯定できる・・・そういう小さな灯火みたいなものが人間には必要なんだと思います。
小さくて見失いそうな心の灯火だけど、自分にも確かにそれがあるということを、井芹仁菜という眩しい光が照らしてくれたから、思い出すことができた。
「ガールズバンドクライ」は、井芹仁菜は自分にとってそういう存在だったと思います。

この作品に出会えて

いちオタクとしてアニメなどを見ている以上、作品に対して少なからず期待していることがあって、それはやはり「見たことのないようなものを見せてほしい」「感動させてほしい」というのがあると思います。いや、他の方がどうかはわかりませんが少なくとも自分はそうです。

アニメって毎シーズン相変わらず作品数は多いし、技術的な進歩もあってか、どの作品も品質(クオリティ)という面では最低レベルが保証されているというか、よっぽどひどいものってなかなか見かけない。逆に言うと魂が入ってない作品でも見た目はキレイだから、なんか見れてしまう。

で、そんな中、本作は魂入ってるなっていうのを見せてくれた作品だと思っています。

最初は正直敬遠していた、フルCGアニメという手法。
フタを開けてみると、イキイキとしたキャラクターの動き、仕草、表情・・・作品世界の中に、キャラクターが生きている。
そして、この作品ならではの表現を生み出そうという気概を感じるライブシーン。フルCGアニメにしかできない表現に到達しているのではないか・・・技術的なことには詳しくないのでこの言い方が妥当なのかはわからないんですが、そんな風に思えました。

そういう作り手の熱量を感じながら毎週のエピソードを追いかけるうち、人に勧められてそれほど期待するでもなく見ていた本作ですが、いつしか自分は「ガールズバンドクライ」が大好きになっていました。

こういう作品に出会えるということはオタク冥利に尽きる部分があります。
本作を勧めてくれた先輩オタクと、ここまで記事を読んでくださった方に感謝申し上げます。ありがとうございました。

「ガールズバンドクライ」の続編や展開がどうなっていくかはまだわかりませんが、作品の世界がここからどんどん広がって行ってほしいと切に願っています。

EDについて

手島nari先生がこんなツイートをされていました。

そうだったのか!!
というわけで改めてED「誰にもなれない私だから」の映像についても詳しく見ていきたいと思いますが、これはそのうち別記事で書きたいと思います。


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