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【囲碁】名人&女流本因坊の指導碁が2000円のほんとうの狙い【真面目な分析】

Twitterを眺めていたら、こんな記事が流れてきました。

芝野名人、上野女流本因坊による「幽玄の間」15周年記念特別指導碁実施!

このイベントの概要は以下の通りです。

・オンライン対局場「幽玄の間」の15周年記念イベントとして開催
・抽選で計6名が指導を受けられる
・申し込み資格は「幽玄の間」の有料会員
・指導碁の模様はプロの解説付でYouTube中継される

これについて、Twitterでは、「これは安すぎる!」「囲碁の価値を下げているのでは」のような意見が多数を占めていたので、正直驚きました。そこで、このnoteでこのキャンペーンの狙いと、本当に安すぎるのか、という考察をしたいと思います。

目次

このnoteの構成は以下の通りです。
1.キャンペーンの表の目的(導入)
2.キャンペーンの裏の目的(考察)
3.キャンペーンの効果(推定)
4.まとめ(結論)

1.キャンペーンの表の目的

結論を言えば2,000円という価格設定はタイトルホルダーの指導碁が2,000円で受けられるチャンスという意味で安いですが、「価格設定として適切ではない」という意味の安さではないでしょう。

キャンペーンの価格設定に疑問を持っている人は、キャンペーンの目的をとらえ違えているのでは、と思います。

あくまで目的は「オンライン対局場「幽玄の間」の15周年記念イベント」です。
いわば、ファン感謝祭です。(野狐やOGSなど無料で楽しめ、日本のプロも多数アカウントを持ち、日々研鑽している対局ソフトがある中で)幽玄の間を有料で使い続けてくれているに対する感謝の意味を込めたイベントなのです。
この指導碁を受けるためには、月額2,000円の使用料(現代風に言えばサブスク)を継続している必要があります。そんな人たちに、たまに特典(しかも受けられるか分からない)があってもよいのではないでしょうか。

しかも、幽玄の間の周年記念イベントは今回が初めてのようです。(10年のときもとくにキャンペーンのお知らせはありませんでした)

このことをアイドルやバンドで例えるならば「15年に1度のファンクラブ限定ライブのチケットが安い」くらいの出来事なのではないでしょうか。

2.キャンペーンの裏の目的

実はこの15周年記念と銘打ったキャンペーンには、裏の目的があると考えています。それは、以下の2つです。

・コロナ禍で、インターネット対局の需要が高まった中、日本棋院の「幽玄の間」の会員数増加につなげたい

・コロナ禍の影響で新規会員登録をした人に対して、今後も有料会員を継続してほしい

日本棋院の収入源のうち、多くを占めるであろう「スポンサー収入」「市ヶ谷にある日本棋院 東京本院の使用料」の収入の見込みが立っていないはずです。日本棋院は非営利団体ですが、公益財団法人としての活動実績を積み上げることや、2019年度の大きな赤字などもあり、財政的なこれ以上の打撃は避けたいはずです。
そこで、急遽、このようなキャンペーンを行い、何とか収入源を確保したいのではないかと思います。

また、今回のキャンペーンの布石として、4月から開催されているプロ同士の研究会があると思います。無料公開部分を設けたことで、無料会員でも対局の模様を閲覧でき、あまり直接的な収入につながらなかったはずです。しかし、プロの公式手合いがない中だったので、接続数は増えたのではないでしょうか。
そんな中、今回のキャンペーンによって、幽玄の間に慣れ親しんだユーザーを会員として取り込みたいのかもしれません。

ただし、この通知が出た2020/5/19に会員登録をしても、このキャンペーンには応募できないのでは?と疑問に思います。それは申し込み資格の欄に秘密があります。

申し込み資格:
幽玄の間有料会員(カード決済または口座引き落とし実績がある方)

大切なのは(カード決済または口座引き落とし実績がある方)です。幽玄の間の入会システムを見てみれば、有料会員登録月は無料です。
したがって、5月に入会した人はカード決済または口座引き落とし実績がないのでは?と思います。

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仮に、本当に5月入会の新規会員に指導碁応募の権利がないのであれば、それはホームページに記載すべきだと思います。これから急いで入会する方は問い合わせたほうがいいかもしれません。

3.キャンペーンの効果

このキャンペーンの効果、今月以降の幽玄の間有料会員の継続率新規加入数によって定められると思います。

今回のキャンペーンに使用した費用をざっくり

・プロ対局料 30,000円×2人
・解説者報酬 30,000円×1人
・機材準備等 30,000円
・雑費 

全て含めても10万円強、どう見ても15万円以内にはおさまっているはずです。

これに見合う損益分岐点は、
〔(新規会員登録した人×月数)+(解約を思いとどまった人×月数)〕×2200円 > キャンペーンにかかった費用

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2020/5/21追記
参加料が計算に入っていませんでした。正しくは、
〔(新規会員登録した人×月数)+(解約を思いとどまった人×月数)〕×2200円 + 2200×6円 > キャンペーンにかかった費用
で計算されます。
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となります。仮に費用が15万円かかったとすれば、68ヵ月分効果があればよいということになります。
簡単にいいかえれば、大体これくらいの成果で、キャンペーンの効果はあったと言えると思います。

・5人がこれを機に新規会員登録をして、1年継続した
・8人が大会を1か月先延ばしにした

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2020/5/21追記
参加料が計算に入っていませんでした。正しくは、
・5人がこれを機に新規会員登録をして、1年継続した
・2人が大会を1か月先延ばしにした
となります。
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雑な計算をつらつら書きましたが、あくまで概算です。
日本棋院の実情としては、対面対局や施設関連の部門が動けない中なので、
人材のリソースにはある程度余裕があると思います。その人材でできることを実践したのかもしれません。

4.まとめ

・指導碁価格2,000円は、対象限定のキャンペーンのため、安すぎるわけではない。
(無料にした場合、キャンセルの恐れがあるため一応お金はとっておこうくらいの設定だと思います)

・恒常的にこのような企画を行うのであれば、桁が足りないくらい安すぎるので、今後の価格設定は注視したほうがいいかもしれない。

サポートがnoteを書く頻度の向上+モチベーションアップになりますので是非お願いします。