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掌編とか短編とか!

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自作の掌編・短編小説を格納していきます。
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#同じテーマで小説を書こう

【ぼくときみの海辺の村の】 #第一回お肉仮面文芸祭

 ゴッゴッカン……  ゴッゴッカン……  ぼくの記憶はそんな音からはじまった。繰り返し打ちならされる音には不思議な静けさがあって、そしてぼくの口のなかには、いっぱいになにかがひろがっていて、ぼくはとにかく夢中でそれを食べていた。とてもおいしかったことだけはよく覚えている。  ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。するとそれは少しずつ小さくなっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。それはかけらのようになっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……

君との想い出 #同じテーマで小説を書こう

 シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム。  それは奇跡だ。  君は、たしかにそう言っていたね。  今になってしまえばボクにも良くわかる。  シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム。  それはたしかに奇跡だ。  失われた時間を取り戻すように、ボクはそれを食べる。それは輝いている。それは香しい匂いでボクを魅了している。スプーンをいれる。サクサク、ポクポクと楽しげな音がする。一匙すくう。輝きが軌跡となって、スプーンのあとについてくる。  奇跡だ、とため息をつく