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掌編とか短編とか!

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自作の掌編・短編小説を格納していきます。
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#AKBDC

【ぼくときみの海辺の村の】 #第一回お肉仮面文芸祭

 ゴッゴッカン……  ゴッゴッカン……  ぼくの記憶はそんな音からはじまった。繰り返し打ちならされる音には不思議な静けさがあって、そしてぼくの口のなかには、いっぱいになにかがひろがっていて、ぼくはとにかく夢中でそれを食べていた。とてもおいしかったことだけはよく覚えている。  ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。するとそれは少しずつ小さくなっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。それはかけらのようになっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……

【アクズメ・ザ・キラー】 #AKBDC

 ガンギマリ一家のドン、ガガンボの邸宅は騒然としていた。伝説の殺し屋にして国際指名手配犯の殺人鬼、アクズメ・ザ・キラーによる襲撃予告が届いたためだ。  ガガンボは襲撃予告を握りつぶし、怒りをこめて叫んだ。 「ドンヅマリ・シティを影から支配する、このオレ様を殺すだと? 理由は『お前の犬がうちの前でクソしたから』だと? 抵抗する奴は皆殺しだと!? なめくさりやがってドグサレがァッ!」  そのまるまると太った体がわなわなと震えている。こめかみには怒りのあまり血管が浮かび上がっ

時空漂流アクズメ【神蛾転生の章】 #AKBDC

1. 序章「エルフの王子……! レディ! ダーヴィ……っ!」  悲痛な叫びとともに手を伸ばす。  しかし、その手は決して届かない。  逆巻く時空断裂の渦。その光景は、まるで世界の終わりのようだった。空が、大地が、そして三人の仲間たちが。無慈悲な渦の中へと飲み込まれていく。 「くくくくくっ……はぁっはっはっはっはぁー!」  木霊する禍々しき笑い。恐るべきジエンド・タイクーンは黒衣を翻して嘲り笑った。 「これは自業自得というものだ、アクズメ! 時空を跳躍し、彼の地へ到ろ