マガジンのカバー画像

掌編とか短編とか!

28
自作の掌編・短編小説を格納していきます。
運営しているクリエイター

#noteでよかったこと

【ぼくときみの海辺の村の】 #第一回お肉仮面文芸祭

 ゴッゴッカン……  ゴッゴッカン……  ぼくの記憶はそんな音からはじまった。繰り返し打ちならされる音には不思議な静けさがあって、そしてぼくの口のなかには、いっぱいになにかがひろがっていて、ぼくはとにかく夢中でそれを食べていた。とてもおいしかったことだけはよく覚えている。  ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。するとそれは少しずつ小さくなっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。それはかけらのようになっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……

スキスパムハンター・B 〈欲望都市 脳都〉 第二話

【前回】 「なんで……なんでなのよぉ……!」  彼女の名は堕駄打野怒怒子(だだだのどどこ)。煌びやかな世界に憧れ、最近になって脳都に移り住んできた女子大生だ。しかし── 「スキが……スキが全然つかないよぉ……」  怒怒子は歩いていく。足を引きずりながら、薄暗い裏通りをまるでゾンビのように── 「ううっ……ま、眩しい!」  日光に触れた吸血鬼がそうするように、怒怒子は顔をしかめた。路地の向こう。表通りから煌びやかな光が差し込んでいる。 「見て見てオラ野さん、わたし

スキスパムハンター・B〈欲望都市 脳都〉第一話

『今日の脳都からのおすすめは……「地方でバリバリ仕事をしていた私が、気がつけば都心で農家をやっていた」「意識高い系の僕から意識低い系の皆様へ」「これからのスタートアップはキャッサバで未来を掴む」……』  煌びやかなネオン瞬く夜の摩天楼。  そのいたる所にデジタルサイネージ(電子看板)が設置され、サブリミナルめいて人々の心に語りかけてくる。万華鏡のごとく映し出されているのはこの煌びやかな都市──〈脳都〉の公式おすすめ記事だ。通りを歩く人々は携帯端末を操作して、まるで魔法にか