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掌編とか短編とか!

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自作の掌編・短編小説を格納していきます。
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#SF

【ぼくときみの海辺の村の】 #第一回お肉仮面文芸祭

 ゴッゴッカン……  ゴッゴッカン……  ぼくの記憶はそんな音からはじまった。繰り返し打ちならされる音には不思議な静けさがあって、そしてぼくの口のなかには、いっぱいになにかがひろがっていて、ぼくはとにかく夢中でそれを食べていた。とてもおいしかったことだけはよく覚えている。  ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。するとそれは少しずつ小さくなっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。それはかけらのようになっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……

校則になった君と #架空ヶ崎高校卒業文集

2222年卒 絶対屈 折率夫  長いようで短かった三年間の高校生活。いろいろなことがあったはずなのに、思いだせるのは校則になった君のこと、ただそればかり。  あれは入学して間もないころだった。お互いに帰宅部だった退屈な日々、みんなが部活動や奉仕活動にはげむさなか、ふたりきりの下校時間。誰もいないあぜ道、僕の前をスキップするように歩く君の姿。今でも鮮明に覚えている。そのとき、ただカ=ラスの鳴き声だけが聞こえていたということも。  君は振りかえってこう言ったんだ。 「同好

宇宙、燃えて #1200文字のスペースオペラ

 茫漠たる宇宙空間に、雄々しく佇む少年が一人。  その輝く体は真空の中においても泰然自若。その鋭く高貴な眼差しは大胆不敵に見据えている──天の川煌めく、宙の彼方を。 「ふん、来たか」  視線の先。空間が歪み、爆発的な質量が出現していく。それは巨大なる惑星群であった! 重力の嵐が荒れ狂い、潮汐力で自壊を繰り返しながら、惑星群は少年へと迫る! 「はは! 愚か!」  少年は呵呵と笑った。 「群体進化属〈ゾアス〉ども。この程度で超越神人〈ファウア・ターカ〉たるこのデリーサ

衛星軌道旋風ギャブリエル 凄絶メリクリ殺! #パルプアドベントカレンダー2019

 静かな朝だった。 『ピピーガガッ……死ぬには良い朝だ』 『ザザッ……そうね、アデル』  完全なる無音。丸みを帯びた大気層に、眩い陽の光が差していく。それはたった5分程度の朝。あっという間に過ぎ去っていく朝だ。 『ザザッ……ごめんなさい、アデル。わたしは、もう……』 『ガガッ……わかっている……わかっているさ、ファティハ』 『ザザッ……あぁ……わたし……血が……止まらない』 『ガガッ……ファティハ……もう話すな……』 『ザザザッ……もう……あなたのことを……サポート……