マガジンのカバー画像

掌編とか短編とか!

28
自作の掌編・短編小説を格納していきます。
運営しているクリエイター

#パルプアドベントカレンダー2019

【ぼくときみの海辺の村の】 #第一回お肉仮面文芸祭

 ゴッゴッカン……  ゴッゴッカン……  ぼくの記憶はそんな音からはじまった。繰り返し打ちならされる音には不思議な静けさがあって、そしてぼくの口のなかには、いっぱいになにかがひろがっていて、ぼくはとにかく夢中でそれを食べていた。とてもおいしかったことだけはよく覚えている。  ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。するとそれは少しずつ小さくなっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。それはかけらのようになっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……

サンタ・リベリオン #パルプアドベントカレンダー2019

『市民。サンタは禁止である』 『やめなさい! 今すぐサンタ行為をやめなさい!』  威圧的な拡声器。〈抗サンタ委員会〉治安部隊の操る浮遊装甲兵器が、地上を舐めるようなサーチライトで照らしている。 「お姉さん……お姉さん!」  燃え盛る車両のそばで、倒れた女性を抱える少年。女性が身に纏う装束は、赤一色で染まっている。 〈第一次ゾンビ戦争〉。  多剤耐性インフルエンザパンデミックの発生と恐るべきゾンビ兵団の出現。辺境のコロニーから生じた戦争は、数十万もの人々を死に至らしめ

衛星軌道旋風ギャブリエル 凄絶メリクリ殺! #パルプアドベントカレンダー2019

 静かな朝だった。 『ピピーガガッ……死ぬには良い朝だ』 『ザザッ……そうね、アデル』  完全なる無音。丸みを帯びた大気層に、眩い陽の光が差していく。それはたった5分程度の朝。あっという間に過ぎ去っていく朝だ。 『ザザッ……ごめんなさい、アデル。わたしは、もう……』 『ガガッ……わかっている……わかっているさ、ファティハ』 『ザザッ……あぁ……わたし……血が……止まらない』 『ガガッ……ファティハ……もう話すな……』 『ザザザッ……もう……あなたのことを……サポート……