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根源のヴィリャヴァーン

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#ファンタジー

寂滅のエシュトザガン

 ダマル・ガは、一人静かに佇んでいた。  風が、その美しい髪を揺らしている。見つめる空は黄昏れて、ゆっくりと、落ちゆく陽が世界を赤橙色に染めていた。その黄昏のなかを、白きラルの群れが羽ばたいていった。その光景は美しく、そして悲しい。ケェケェと寂しげな鳴き声が聞こえてくる。 (あぁ、お前たちは……)  ラルたちは去ろうとしているのだ。このエシュトザガンの階層世界を。滅びゆくこの世界から、安住の地を求めて──。  だから、ダマル・ガは祈る。ラルたちが安らぎの地を得られます

根源のヴィリャヴァーン

 わたしたちは誰もがヴィリャヴァーンの輝きから生じ、その根源の炎を胸に抱きながらこのエ・ルランの地へと落ちてきた。  だから、誰もが落ちてきた苦しみに囚われ続け、輝ける炎を胸に抱いていることすらも忘れて、その生命を終えていくのは悲しいことである。 「なればこそ。人の身のままヴィリャヴァーンに到ろうなどと望むことは、人としての分際を超えた行いでありましょう」 「それは許されざる行い。エ・ルランの地に災いと争乱とを招き入れることになりましょう」  壮麗なる列柱が輝く中、少