マガジンのカバー画像

根源のヴィリャヴァーン

3
運営しているクリエイター

2020年3月の記事一覧

寂滅のエシュトザガン

 ダマル・ガは、一人静かに佇んでいた。  風が、その美しい髪を揺らしている。見つめる空は黄昏れて、ゆっくりと、落ちゆく陽が世界を赤橙色に染めていた。その黄昏のなかを、白きラルの群れが羽ばたいていった。その光景は美しく、そして悲しい。ケェケェと寂しげな鳴き声が聞こえてくる。 (あぁ、お前たちは……)  ラルたちは去ろうとしているのだ。このエシュトザガンの階層世界を。滅びゆくこの世界から、安住の地を求めて──。  だから、ダマル・ガは祈る。ラルたちが安らぎの地を得られます