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昔から空を見上げるのが好きだった。
目線を上げると雑多なものが消え、だだっ広い空間がひろがっている。
思考が停止する。

スーパーの入り口を出ると一気に暑さと湿度が身体にまとわりつく。
重い荷物を自転車のカゴにのせ、目を細めながら表に出る。
漕ぎながらやっとバランスが取れたところで目線をあげる。
青空と入道雲は一服の清涼剤。
スカイブルーとくっきりとした白は目に眩しく、だらけた身体をシャキッとさせる。夏を前向きに感じとることができた。

昔から落ち込んだ時、空を見て頭がリセットされる。

なんだか落ち込みがちな学生時代、高速で動く電車の中から、その速さに動じずにゆっくり動く雲を眺めて癒されていた。

娘の妊娠が分かった時もそうだ。妊娠検査薬が陽性となったトイレの小窓から見えた夕空に、不安が吹き飛んだ。
「名前は、そらだ」
前を向くしかなかった。


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