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雌鶏/楡 周平

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昭和29年、ナイトクラブ「ニュー・サボイ」で働く貴美子は、上客の鬼頭から京都で占い師として生計を立てないかとスカウトを受ける。服役の過去を持つ貴美子は、そこを足掛かりに次々と成り…
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2024年6月の記事一覧

雌鶏 第六章 3/楡 周平

【前回】      5  電話から三週間後。小早川(こばやかわ)が森沢(もりさわ)を伴って貴美子(きみこ)の元を訪ねてきた。 「失礼致します……」  小早川の押し殺した声が聞こえ、襖(ふすま)が引き開けられた。 「先生、ご無理をお聞き届けいただき恐縮でございます」  小早川は丁重に頭を下げ、部屋に入ると振り返り、「本日は息子の縁談について相談したく、先方のお父様を同行させていただきました。こちらは、ヨドの森沢社長です」  背後に立つ繁雄(しげお)を紹介する。  一目見た瞬