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【前回】 1 「ところで先生、ついでと言ってはなんですが、プライベートなことで一つご相談したいことがございまして……」 世間話に終始していた小早川(こばやかわ)が、改まった口調で切り出してきたのは、昭和五十年夏の夕刻のことだった。 初の来訪から四年。この間何度か卦(け)を立ててもらいにきたとはいえ、鴨上(かもうえ)を通さなければならないのは相変わらずだ。 突然現れた小早川は、「京都に用事がありまして、近くまで参りましたので、ご挨拶にあがりました」と、ふいに思