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軍都と色街/八木澤高明

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かつて栄えていたが、摘発などで姿を消していった色街。 その名残りを求めて各所を巡り、成り立ちや歴史、軍都との関わりを考察するドキュメンタリー。
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#集英社文庫

軍都と色街 第十二章 佐世保 後/八木澤高明

米兵とハウスと呼ばれた売春施設  一九四五(昭和二十)年に太平洋戦争が日本の敗戦により終結すると、日本軍に代わってやって来たのが米軍だった。  この連載でもすでに取り上げているが、日本各地への米軍の進駐を前に、首都圏にはRAA(特殊慰安施設協会)という米兵向けの慰安施設を運営する組織がすでに立ち上がっていた。東京や神奈川では、女性たちを集めて進駐前には慰安施設が営業できる態勢を整えていたのだった。  佐世保においても、東京の動きが伝わっていたのだろう、米兵を相手にする慰安施

軍都と色街 第十二章 佐世保 前/八木澤高明

 佐世保へは、博多から鉄道で移動した。それにしても佐世保という地名には、何とも不思議な響きがある。語源が気になり少し調べてみると、アイヌ語から転訛したという説や狭い川の瀬を意味する、させから生じたという説、さらにはさせぶという木が繁茂していたことが、語源になったという説もある。それにしても様々な説がある。  佐世保など語源のはっきりしない地名というのは日本にはかなりある。この列島の歴史の深さを感じる時でもある。  そんな取り留めもないことを考えながら、車窓風景をぼんやりと眺め