【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第一章 5/岩井三四二
(第一章 死と隣り合わせの任務 )
五
明けて大正二(一九一三)年の正月──。
英彦は亜希子とともに、年賀のため麻布の実家を訪れていた。
「しかし飛行機ちゅうのは、危なくないか」
床の間を背にした父が、ほぼ真っ白になった鼻の下のカイゼル髭をひねりつつ問う。英彦は答えた。
「危ないといえば危ないのですが、そこはなんとか注意を払って乗り切るしかないです。機体と発動機の整備を念入りにやって、気象の悪いときには無理に飛ばないようにすれば、そこまで危険なものではありません」