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. * 未来永劫晴れていることは、自然天然には有り得ない。 貞親にとって自然天然とは、人の思惑など一切頓着しない超越だ。善悪とは完全に無関係だ。 いや、自然は悪だ。 だからこそ美しい。胸を打つ。 洋上は不穏に充ちて、うねる。 貞親は溜息を呑みこんで、乱れに乱れた波に隠された規則性を見抜こうと、意識を海に集中させる。 晴れて凪いでいるときは、世界は穏やかに整然と動いているかに見える。けれど、こうして乱れはじめると混沌の乱舞で貞親を翻弄しはじめる。 一定の
. * 太閤秀吉の時代、海商は武士や豪族が多かった。越前敦賀などは、とりわけ顕著だったようだ。 遠い智識として、それらを漠然と知っている貞親は、ひょっとしたら船頭は、本当に甲斐武田氏の出かもしれないと思うようになっていた。ただし貞親は甲州には海がないことを知らない。 甲斐武田氏の出かどうかはともかく、船頭には曰く言い難い鬱屈がある。酒を浴びるように呑むことや、理不尽な暴力の背後に、抑えようのない怒りと怨みがあるような気がするのだ。 半泣きの爨が声をあげる。