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新 戦国太平記 信玄/海道龍一朗

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戦国の雄・武田信玄。緻密な検証から知られざる実像を明らかにしていく歴史巨編!
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2024年8月の記事一覧

新 戦国太平記 信玄 第八章 上洛無常(じょうらくむじょう) 1/海道龍一朗

 九十二   永禄十二年(一五六九)十月、三増峠の戦いで武田勢が北条家に勝利する間、別働隊として駿河で動いていた秋山信友が北条方の蒲原城を囲んだ。  その一報を、信玄は帰還した甲斐の府中で受け取る。  ──われらが小田原にまで出張った理由は、単なる威嚇ではない。蒲原城を制し、相模と駿河を分断するための大掛かりな陽動だ。戦続きとはいえ、ここで手をこまぬいてはおられぬ。  そして、間髪を容れずに、再び駿河への出陣を決意する。  ──こたびこそ、北条が西へ出てこられぬよう拠点を潰