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新 戦国太平記 信玄/海道龍一朗

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戦国の雄・武田信玄。緻密な検証から知られざる実像を明らかにしていく歴史巨編!
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2024年2月の記事一覧

新 戦国太平記 信玄 第七章 新波到来(しんぱとうらい)11/海道龍一朗

 九十    戦いが動いたのは、駿河だけではない。  武田勢の侵攻を知り、徳川(松平)家康も遠江へ侵攻を開始する。  最初に標的としたのは、浜松にある曳馬城だった。  五千の兵で城を囲み、無血での降伏を迫っていた。 「城方からの返答はまだか?」  徳川家康は苛立った様子で訊く。 「まだにござりまする」  酒井忠次が顰面で答える。 「あの寡婦はいつまで意地を張るつもりなのだ。まさか、籠城するつもりではあるまいな」  家康が言った寡婦とは、曳馬城の主だった飯尾連龍の妻、於田鶴の方