「言いたくないことは、たとえ小説の中の人物でも黙っている権利がある」作家・伊藤朱里さんインタビュー
太宰治賞を受賞してデビューし、巧みな人間描写でファンを増やしている伊藤朱里さん。このたび、デビュー作『名前も呼べない』刊行当時(2016年)に収録したインタビューを再掲します。
必然性のある物語を 第31回太宰治賞を受賞した『名前も呼べない』(「変わらざる喜び」改題)は、冒頭の一文からしてどこか独特だ。
「恋人が授かった初めての娘は、まもなく生後二ヶ月になるところだった」
契約社員として2年半勤めた会社を退職した25歳の恵那は、送別会という名目の女子会に招かれた。恵那