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芭蕉と芥川、その共通点は…

(旧中山道クロスバイク行)ここまでのあらすじ
みどり湖駅からクロスバイクに乗って旧中山道をたどる旅もいよいよ終点洗馬に到着。
その1/みどり湖駅事件はこちら

芭蕉句碑

洗馬の集落の南の外れに小さな公園がある。これが今回のサイクリング最後の訪問地となる。

洗馬にて
入梅(つゆ)ばれの私雨(わたくしあめ)や雲ちぎれ

芭蕉句碑

芥川龍之介は芭蕉のファンでもある。「芭蕉雑記」の中でこの句に触れている。

芭蕉はその俳諧の中に屡しばしば俗語を用ひてゐる。たとへば下の句に徴するが好い。
梅雨(つゆ)ばれの私雨(わたくしあめ)や雲ちぎれ
「梅雨ばれ」と云ひ、「私雨」と云ひ、「雲ちぎれ」と云ひ、悉く俗語ならぬはない。しかも一句の客情(かくじやう)は無限の寂しみに溢れてゐる。(成程かう書いて見ると、不世出の天才を褒め揚げるほど手数のかからぬ仕事はない。殊に何びとも異論を唱へぬ古典的天才を褒め揚げるのは!)かう云ふ例は芭蕉の句中、枚挙に堪へぬと云つても好い。

青空文庫より芥川龍之介「芭蕉雑記」

なぜか石碑と芭蕉雑記の引用とは微妙に違う。

洗馬駅に戻りバイクをオーリスの屋根に積んだ。

ここまでお読みくださったみなさま(複数ではないかもしれませんが(笑))ありがとうございます。桔梗ヶ原はドレミが就職しなければほとんど縁がなかったと思われますが、あれこれ調べるとまこと興味深い歴史を持つ土地でした。この夏はさすがに炎天下で写生というわけにもいかないので、避暑を兼ねて図書館など訪ね、古書の中にも探訪を続けたいと思います。さて今回のサイクリングは終わりですが、沿道に少々やり残したことがあります。

あとがき

まずはここ。芭蕉と芥川の共通点…おわかりですか?それは大の義仲びいきであることです。

鳥唐ホタテフライ定食990円。ごはんは1/3にしてくださいと頼んだ。昼時をずいぶん過ぎているのでお客さんは少ない。店の人に声をかけ率直に「誰が店名を決めたのか」聞いてみた。すると同年配の料理人はにやりと笑って答えた。
「それ、ときどき聞かれます。オーナーがつけました。」
なるほど…やはりボクならずと同じ疑問を抱く人が少なくはないのだろう。

「実は最初、もう少し駅の方で「牛若丸」というラーメン店を開きましてここはその支店なのです。」
いや、牛若はさすがにダメでしょう…ボクは芭蕉翁と芥川先生をも代表して抗議口調で答えた。すると店員は、
「ハイ、あっけなくつぶれました。」
と、今度は破顔して笑った。

後白河法皇の院宣を戴き京に上った義仲追討軍は範頼軍3万騎、義経軍2万5千騎であったが、義経は事前に「関東の飢饉の影響で鎌倉軍は千騎に足らず」との噂を京に流した。義仲はこの姑息な作戦にまんまとひっかり、僅か900騎を率いて宇治での決戦に臨んだために滅びた。木曽びいきのボクたちにとって義経はダークな仇敵である。その点、敵将ながら弁慶には誰もがピュアでクリーンなイメージを持っている。

洗馬で「食事・厨房弁慶」はぎりぎりセーフだったようだ。この味でこの値段なら今後もつぶれることはない。機会があれば今度はドレミを連れてアジフライ定食を食べに来よう。

さて、もう一箇所行かなければ旅は完結しない。

ここである。ボクは駅前駐車場にオーリスRSを慎重に停めた。何しろ上にジャイアントを積んでいるので料金所のテント屋根が引っかかりそうになる。駐車料金は30分無料である。

改札横の窓口で事情を話すとぽっちゃりとした若い女性駅員がころころと笑いながら頷いた。

支払いにはPasomoが使えた。

駅舎を出ると桔梗ヶ原の空が美しかった。

おしまい

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