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読書メモ 英語独習法

本書の概要と読むべき人

認知科学の研究者である著者が、合理的な英語の学習法を、仕事で英語を使えるレベルを目指す読者に向けて書いた本。
まさにそういう内容なので、想定読者にあてはまる方にはぜひオススメしたい。

英語独習法 はじめに より
本書の第一の目的は、認知科学で知られている「学習の法則」を外国語学習に当てはめ、さらに英語の特徴を勘案しながら、英語学習の合理的な学習法を提案することである。「合理的な学習法を提案する」だけでなく、「その理由としくみを解説する」ということが本書の特徴で、これまでの英語学習の数多の書物と違うところだと自負している。
英語独習法 P15より
本書は主に、仕事の場でアウトプットできるレベル、すなわち自分の考えを的確・効果的に表現し、相手に伝えられるレベルの英語力を目指す人に向けてかかれている。

この本の鍵概念として紹介されるスキーマというのはおもしろい。
スキーマは説明が難しい概念だが、理解するのは簡単だ。
本書での説明は丁寧でとてもわかりやすい。結論だけ抜書きすると、「ことばについてのスキーマは、氷山の水面下にある、非常に複雑で豊かな知識のシステムである。スキーマはほとんど言語化できず、無意識にアクセスされる」と説明されている。

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スキーマのイメージ 本書P28より

ぼくは、日本語における「noteは好き」と「noteが好き」の「は」と「が」の違いがわかるために必要な知識、英語におけるaとtheを正しく使う知識が分かるために知っているようなことがスキーマだと理解している。母国語のことなら正しく使われているかどうかが簡単にわかるが、それを人にわかるように説明できるかというとできない。その背景にあるのがスキーマだ。

英語独習法 P27より
母語についてもっている知識もスキーマの一つで、ほとんどが意識されない。意識にのぼらずに、言語を使うときに勝手にアクセスし、使ってしまう。子どもや外国の人がヘンなことばの使いかたをすれば、大人の母語話者はすぐにヘンだとわかる。しかし、自分がなぜそれをヘンだと思うのか、わからない。

本書では、英語のスキーマを形成するために、コーパスを活用して単語の理解を深める方法が丁寧に書かれている。例えば日本語の「恥ずかしい」の英訳として挙げられる"shy", "embarrassed", "ashamed" はどう使い分けられるのかについて、どうやって自分で調べるかということが書かれている。そうした方法を使って、より多くの単語について自ら調べ、英語のスキーマを深めていくのがこの本でいうところの英語独習法である。 

感想

いま、2021年10月に受験する英検1級の勉強に力を入れているが、合格してもまだまだ目指すレベルにはほど遠いのだな、ということを、本書を通じて再確認することとなった。
ぼくは、最終的には普通に本が読めて人と話せるレベルを目標にしているのだけど、「普通に人と話す」のはだいぶ先のことになりそうだ。いまのところ、ぼくが言ってることは相手に分かるけど、単語選びが拙い外国人のレベルだ。多分、普通のフランクな会話の中に、ニュースのような言葉遣いとか、自分は気づかずにしてしまっている。普通の英語話者の大人の水準には遠い。

その理由は、英検の勉強では、スキーマはあまり身につかないからだ。ほとんどの問題が選択式で、英作文についてもいくつか覚えた定型文パターンを使えば合格できてしまう英検1級で、深く大きなスキーマは身につかない。

だからといって、英検やTOEICのような英語の試験を受けることに意味がないなんてことはまったく思わない。試験勉強を通じて、聞いたことがある単語数が増えているのはもちろん、たくさんの英語表現に触れ、なにがアリなのかをたくさん覚えているはずだ。

自分の英語はまだまだだな、と思うが、そんなことは気にせずに、自分の英語はバッチリです、という顔で堂々と話しながら、より向上していきたいと思う。日本人と日本語で話すときは謙虚という評価がもらえるかもしれないが、英語でしゃべるときに自信なさそうにしゃべっていいことなんて一つもないことがほとんどだ。

英検1級合格のあと、英語レベルアップのためにどうしようか、ということを考えているところなのだが、この本に書いてあることに沿ってみるのは良い選択だと思っている。

これまで、英語の勉強といえば、問題を解くことだとばかり思っていた。しかし、この本にあるような地道な方法を使って、単語の意味を丁寧に理解していくのはきっと必要なことだ。半ば受け身で、ただ出てくる問題を解いていくことに比べて、取り組むハードルがやや高いのが、今の自分にとっては難点である。英検1級合格後の英語力向上のための一つの選択肢として覚えておきたい。良い読書だった。

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