大阪 宝塚など

梅田へ出かけた。
半年ぶりの梅田。
どころか電車に乗ることさえも半年ぶりかもしれない。
仕方がないご時世とはいえすっかり出不精になってしまったみたいだ。
電車の中はガラガラというわけでも無かったが、2人で座る席を見つけるのはそれほど難しくはないくらいの客数だった。
日曜日の昼過ぎにしては異常なのかもしれない。


梅田駅から阪急百貨店方面へ出ると、さすがにたくさんの人がいた。それでもやはり通常時の日曜日と比べるとすいているのだろう。道ゆく人はそれぞれの休日を楽しんでいるようだったが、みんなマスクをしていて、ある種ディストピアのようだった。あるいはその予行演習なのかもしれない。世界が放射能まみれになっても人類は案外たのしくやっていけるのかもしれない。


阪急ビルの29階にある宝塚歌劇団ショップに入った。入り口には消毒液。この後も店に入るごとにうんざりしながら消毒ボトルのポンプをプッシュする羽目になった。
ショップには宝塚のトップスターのポートレートが所狭しと並べられており、僕には誰一人判別することができなかった。水族館で餌を待つペンギンの群れを見た時と同じ気分だった。写真の女性たちはいかにも男装の麗人といった佇まいだったが、男の、少なくとも僕の持つあらゆる欲求のいずれをもかきたてるものではなかった。
もちろん客層から店員までみな女性で、おそらく全員が熱心なファンだと思われ、僕はたいそう居心地の悪い思いをした。正直なところ僕は一刻も早く店を出たかったし、人間離れした鼻筋の男装家を見るくらいなら、駅で買ったカルピスのラベルでも読んでいる方がマシだった。
そういうわけですぐに店を出た。


そこから駅方面までもどり、紀伊國屋へはいった。もちろん消毒もさせられた。
紀伊國屋の中はかなり混んでいた。通路が狭いのもあるだろうが。感染症特集が組まれていて、パンデミックなタイトルの小説がディスプレイされていた。


横丁方面から出て茶屋町へ向かい、H&Mを一瞬で出た後、ABCマートへはいった。サンダルを買うためだったが、手頃な値段で手に入る良いサンダルが見つからなかった。サンダルに3千円以上出すのは僕の中ではナンセンスだった。
結局ここも何も買わずにでて、すぐ隣にある巨大なユニクロにはいった。人がかなり多く、所狭しと並べられた夥しい数の商品やら久しぶりに目にしたカラフルな空間やら雑音やら定員の対応の悪さに当てられ、かなりストレスが溜まった。そこから体調を崩してしまったのかもしれない。僕はすぐに静かな所で休みたかったし、なんなら早く帰りたかった。
やはり大阪は好きになれない。


その後地下へ行き、比較的空いていたハワイアン系のバーガーショップへ入った。レジの店員がやはり対応が悪く、フリーコールの自動音声案内に対して不毛に話しかけているような気分だった。
テリヤキバーガーとチーズバーガーのポテト・ドリンクセットを注文した。出来上がりを知らせるブザーは南国の鳥の鳴き声のようにけたたましい音を上げ、僕は飛び上がるほど驚いた。
バーガーはかなり量が多かったが、勢いで頼んだ手前食べないわけにはいかなかった。僕は終始無言でバーガーを貪った。バンズはサクサク生地で楽しい食感だったが、味も何もわからないくらいに僕は憔悴していた。ポテトは細いタイプで悪くはなかった。やはり楽しむことはできなかったが。
我々は帰ることにした。

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