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日進月歩 ~Road to MBA~#67

2020/12/16:スタートアップ・ストラテジー2⑤
 水曜日はスタートアップ・ストラテジー2となり、引き続き数ある企業の経営者だけでなく、スポーツ(スキー)においても共通点が多い高柳先生の講義の5回目となります。早いもので、年内最後の水曜日です。

 本日は、認定NPO法人カタリバ(認定特定非営利活動法人カタリバ)の代表理事であります今村様をお招きし、講話をいただきました。これまでの株式会社でのスタートアップとは違い、市民の自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進することを目的として作られた組織のスタートアップを学ぶことができました。
 起業のきっかけとしては、「当たり前のことと当たり前じゃないことが人によって差がある」という実際の小さな体験をきっかけに、社会に対して問題意識があったとお話いただきました。岐阜県高山市に生まれ、この地域は高校卒業したら働くことが当たり前という時代があり、大学に行くことが近所の皆様から恥ずかしいと思われるほどに壁があったということを身をもって経験した経緯があった。高校を卒業して慶応大学に進学すると、そこには別世界があった。同級生がお金持ちで学校に車で登校したり、頭がいい人が大勢いらっしゃり、各人がこれまで生きてきた経験が「当たり前」になってしまっている現状(課題)があった。このような背景があり、社会課題を解決するためにNPO法人を立ち上げたという問題意識を講話いただいた。

NPOカタリバ:どんな環境に生まれ育った10代も未来をつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動している教育NPO
 ✔ Vision:どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会
 ✔ Mission:意欲と創造性をすべての10代へ
 ✔ Action:子供たちのサードプレイスとサードリレーションシップを学びに

 また、最も興味深かったのは「収益」と「費用」の部分であった。本年の収益は年間12億程の規模となり、前年からも増収となっており、8億程の約6割が「寄付・助成金」からの収益となっていた(他には+行政委託、+事業収入)。これほどの寄付金をどう集めてくるか、寄付税制改革を機に増えてきてはいるが、基本的には”企業”もしくは”個人サポーター”から得られるサブスクリプション型の寄付がほとんどを占めている。子供への支援ということで寄付が集まりやすいとのことであるが、実は裏側に株式会社と同様な体系だったマーケティング戦略があるように見受けられた。YouTubeなどの広告を実施し、ターゲットを決めてPDCAを回すことで、株式会社と同様に戦略を立てて行動して資金調達をしている企業であった。

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 しかしながら、NPO法人であるにも関わらず資金調達を積極的にしていることで批判してくる人々も多くいるという。確かに非営利という中で儲けるという考え方に取ってしまう方々もいるように思うが、資金調達したお金をどういった目的で利用しようと考えているのか、そこをしっかりと理解する必要があると認識する。要はその分社会課題を多く解決できるか、そのために利用されるものであるか、NPO法人として見せていく必要はある。

 今後の目標としては、新しくスタートアップしたい企業へのインキュベーションを提供し、シェアリングできるコーポレート部門の機能を提供していきたいと考えているよう。社会に対して1社で出来ることは限られているので、サービスを提供できる子供の総量を増やしていくためにも、次々と起業を手伝っていきたいのだという。Withコロナによって公教育が受けられない子供に対して、「不登校のサードプレイス」などに携わっている中で、対面を前提としていた教育支援センターの機能を拡張し、”オンライン”でも対応可能となるように市町村と協力をしていきたいとお聞きしました。

 補正予算を利用し、小学生・中学生に対して1台/名にPCを配布できるよう、2021年4月で学校教育で利用できるよう整備を進めているということである。しかし、学校の先生たちのインフラは全く整備されておらず、子供たちの整備ばかりが進んでギャップが生まれている実態がお聞きできた。受講者の中でも高校教師がいますので、実際の現場の声もお聞きでき、どうにかこの新型コロナウイルスで加速した教育におけるデジタルを、第三者の力を借りて進めていきたい(データを持ち運べない、学校の電話からのみ生徒へ連絡など)。また、国の力を借りながら対応を加速させている。

パソコン「1人1台」年度内に、臨時休校受け前倒し(緊急経済対策)
※当初は2023年度までに完了させる計画だったが、2020年度中に実施予定


 後半は、今回の講話内容を基に先生と受講生とディスカッションをして色々と議論をさせていただいた(以下は抜粋)。

株式会社のように「売上」「利益」「株価」という指標でないので、評価は難しい。しかしながら、産学官連携などを利用して国費などを含めて資金調達をしている事例は存在しているため、うまく「教育」というキーワードを活用して資金調達をしていくことが重要となる。
公益資本主義:安定した資金調達(持ち合いなどによって、利益を求める欲望経済を利用しながらも、社会にとって有用な企業を全世界に生み出す流れを起こしていく経済システムを立ち上げようとする運動)
=Googleなどの種類株など、時代に合わせた資金調達があってよい
日本は、スタートアップに対する資金調達方法やサービスは欧米の真似をしているのに、仕組みは真似をしない
=アメリカの西海岸は、金融の仕組みがある、投資家が失敗しても寛容な仕組みがある(契約書に明記)など

 本講義はいつもディスカッションから要素が幅広く拡大され、様々な分野のお話になる。自分自身が知らない分野が多く、言語の意味などを調べるために休む暇がないが、ディスカッションを通して学ぶことがとても多い。年明けの講義までの間は、今までの復習と『「IT前提経営」が組織を変える 』をもう1度読み直して、理解をしていく時間にしていきたい。


         立教大学大学院ビジネスデザイン研究科   平岩 宗

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