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日進月歩 ~Road to MBA~#85

2021/2/24:第4回 Japan Sports Week(スポーツビジネス産業展)
 本日は、2月24日~26日に開催されているスポーツビジネス産業展(@幕張メッセ)に参加し、様々な方のセミナーや地方創生に取組みをされている企業との交流を目的に学んでまいりました。今回は2つのセミナーの内容について、学んだ内容をまとめてみました。

■基調講演:スポーツの成長産業化に向けた取組と今後の展望(スポーツ庁:室伏長官)

 現在は、第3期スポーツ基本計画の策定中ということで、第2期スポーツ基本計画(平成29年~令和3年)の内容を前提に講話が進められた。スポーツ市場拡大と再投資の好循環(スポーツ環境の改善、スポーツ参画人口の拡大、スポーツ市場の拡大)を目標に、市場規模5.5兆円であったものを2025年までに15兆円を目指そうと進められている。新型コロナウイルスの影響によって、目標達成は難しい状況ではあるが、取り上げてご紹介していた3つの観点(①中央競技団体の役割変化、②スタジアム・アリーナ改革、③他産業との融合)について、まとめてみました。

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➀中央競技団体の役割変化
 中長期の強化戦略を実践するために、私の会社含めてJOCやJPCが多面的に支援を実施しています。特に普及・マーケティング戦略を推進し収益力UPを目指す、ガバナンス(組織強化)と競技力UPに向けた取組みがスポーツ庁の委託事業として、数多くサポートされているのが実状でした。役割が変化していく中で、特に中央競技団体が自立して実施すること、つまり組織強化や知見の醸成といった部分が重要であると感じております。

<持続可能な競技団体の成長>
【フェーズ1】戦略策定フェーズ(講習会やワークショップなど)
【フェーズ2】戦略実行フェーズ(日本トライアスロン、テニス、ハンドボールで事例が出てきている)


②スタジアム・アリーナ改革
 令和3年度より、全国に20拠点を目指して構築していく(令和3年3月で対象地域は発表予定)が、スタジアム含めた地域がコストセンターでなく、プロフィットセンターへ改革していくことを目標としている。

<改革機能の特徴>
 ✓ 単機能型 ⇒ 多機能型に向けて
 ✓ 行政主導 ⇒ 民間活力導入に向けて
 ✓ 郊外立地 ⇒ 街中立地に向けて
 ✓ 低収益性 ⇒ 収益性改善に向けて


③他産業との融合
 特徴的な取組みとして、「SOIP(Sports Open Innovation Platform)」があげられるが、スポーツの価値高度化と他産業の価値高度化を推進していく中で、いくつか事例が出てきているのも成果となる。

【事例1】スポーツをする、みる、ささえる(ARでバーチャルに、フェンシングで剣先を可視化してエンタメ、トレーディングカードで資金調達)
※株式会社Meleap、フェンシング協会、株式会社Ventus
【事例2】他産業との価値高度化(特に健康に関わる医療・ヘルスケア領域との融合や取組みが多く見受けられる:SIX Pad・コンディション評価)
※株式会社MTG、aiwell株式会社
【事例3】社会課題の解決(徳島県美馬市と大塚製薬で市民向け運動を開発し、Jリーグチームなどとの連携も見られている

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※出所:未来投資会議 2020.3


 これまでの取組みを前提とした場合に、令和3年度の方向性を教えていただいた。個人的に、これまでの取組みや今後の方向性はとても良いことを考えているとは思うが、それをビジネス化(収益化)させるためには、何かが足りないと感じています。また、事例ももっとオープンな形で情報収集が出来るように、情報開示を推進していくべきではないかと感じています。

<令和3年度の方向性>
 ✓ 中央競技団体の経営力強化推進事業
 ✓ スポーツオープンイノベーション推進事業
 ✓ スタジアム・アリーナ改革推進事業
 ✓ スポーツシェアリングエコノミー導入促進事業
 ✓ ポストコロナに向けたスポーツイベント等の開催支援事業(第3次予算案:55億円)

【スポーツの成長産業化に向けた取組み事例】
 ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク(スポコラファイブ:P4)

 スポーツの成長産業化への基盤形成に向けて、複数分野の企業等と中国地域のプロスポーツクラブ等が連携した上で、新商品・サービス検証・開発、販路拡大等への取組を円滑に行う制度を創設
⇒ホームチームのスポンサーがアウェイチームのおもてなしして、相互に協力することで、地域発展させる仕組み(地域や社会の課題等の解決に繋がる基盤構築で、この取組みいいなぁと感じました。)


■スポーツチーム経営と戦略:プロ野球からJリーグへ転身した社長が語る『今後のプロスポーツビジネスの展望』(株式会社清水エスパルス:山室社長

 みずほ銀行の執行役員からプロ野球の千葉ロッテマリーンズの球団社長に転身し、慢性的な赤字体質を黒字へと転換させた実績を持つ山室社長の視点で、①プロスポーツは強くなければ経営は厳しいのか、②プロ野球とJリーグの違い、③プロスポーツビジネスの展望といった内容を講話いただいた。

➀プロスポーツは強くなければ経営は厳しいのか
 千葉ロッテ時代のシーズン順位と売上高や利益の相関を基に、取組み内容をお話いただいた(以下お話の内容から抜粋して表を作成)。以下の表からは順位と売上高・粗利・観客動員数との相関は見られず、順位としては強くなっているわけではないのに、観客動員数や売上高・粗利を伸ばしていることが出来ていることが見受けられる。強くないと経営は厳しいということ「(=イコール)の関係」ではないことが分かるだろう。

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 ではどんなことをしたのか。千葉ロッテはきちんとした「ドラフト会議戦略」を基に、競合リスクを恐れずにチャレンジすること、未来のスター、地元選手といったように明確に続けていくことで、地元のファンを増やすことが出来たようである。明確なビジョンを基にした「チームの戦略」による部分が大きいと改めて感じる部分があった(一般ビジネスと同様)。

<一般的なビジネスとの利益構造の違い>
 基本的な売上と費用によって利益を得る構造は変わらないが、以下のようなスポーツビジネスならではの”ジレンマ”が存在している。
 ✓ 固定費が非常に高い(選手年俸やスタジアム費用)
 ✓ 変動比率が高くないが、損益分岐点を超えると「利益幅」が大きい
 ✓ 有名な選手を取ったから成功するとは限らない(通常の投資と違う)


②プロ野球とJリーグの違いは
 違いとしては大きく3つの視点があり、A:組織の違い、B:資金構成の違い、C:モデルの違いをあげられた。今回は、AとBの”Jリーグ”について詳しく書いていこうと思います。

<B:資金構成について>
 Jリーグの平均資金は49.5億円であるが、1位のヴィッセル神戸が114.4億円のため、上振れされている数字ではある。プロ野球とは桁が違っており、Jリーグは少ない資金の中でやりくりをしていると見受けられる。その中で、資金構成を見てみると、以下のような収益構造となる。
※1位:神戸(114.4億)、9位:清水(42.9億)、18位:大分(18.6億)

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<C:モデルについて(Jリーグ)>
 Jリーグは欧州モデルと呼ばれ、以下のような特徴が存在している。
 ✓ オープンシステム
 ✓ 中央集権的(リーグが非常に強い権限を有している)
 ✓ 合議制(多様な分科会や実行委員会、理事会)でルールなども存在
 ✓ 自由に移籍(プロ野球はFAやドラフト会議など)
 ✓ 降格昇格が前提
 ✓ 放映権はJリーグが一括管理し売却(DAZN/12年/2239億円)
 ✓ サポーター文化で地域とのビジョンが明確化

③プロスポーツビジネスの展望
 今後のJリーグはどうなっていくのか。プロスポーツは、チケット・放映権・広告・グッズ・飲食・スクール・その他の多様なビジネスの集合体となっている。エンターテイメント的な考え方は野球の方が進んでおり、サッカーは競技性が強く、エンターテイメント性をあまり提供していないチームが多いことも特徴としてあげられる。
 それでは「エンターテインメント性」とは何か?何を提供していくべきものなのか?要素としては、選手との一体感・ホスピタリティ・アクセスが良い・臨場感・笑顔などのエンターテイメントなど様々なものが存在しており、投資対効果(ROIやIRR)といった明確な指標をもって行動していくべきであると学ばせていただいた。山室社長が千葉ロッテ時代の時は、ROI:35%、IRR:8%にて設定して基準を設けていた。
スタジアム・アリーナ運営・管理計画に基づいて取組み(Jリーグも指定管理制度「ボールパーク」を活用して、サッカースタジアムを駅近・街中・多機能化という試みをしている)

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 スポーツにおけるビジネス化という面でも、ここ数年で大きく変化している。プロスポーツクラブ、地方のスポーツクラブ、中央競技団体、スポーツ庁、我々JSCも含めて、産業化するためにどうしたら良いか、スポーツの良いところを踏まえた上で、どう他産業と融合していくのか。変化できるかできないかの分岐点の時期にきているのではないか、と改めて感じるイベントとなりました。しかしながら、新型コロナウイルスの影響もあって参加企業も少なく、担当者不在のブースもあり、少し物足りない部分もあったので、オンラインにしてでも内容の濃いイベントであることを、今後も祈念しております。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合出場(通算115試合1得点)/関東サッカー/埼玉県サッカー
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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