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カミコベ一期一会

2022年5月22日、神戸 メリケンパークで開催されたチャリティーロックフェス「カミングコウベ22」にボランティアスタッフとして参加しました。

カミングコウベ、通称カミコベは阪神・淡路大震災の記憶を語り継ぎ、復興に協力してくれた全ての人に恩返しするイベントとして始まったチャリティーフェスで、入場料無料、出演アーティストもスタッフもボランティアで成り立っているイベントです。参加する全ての人が優しさを持ち寄って音楽を心の底から全身で楽しんでいる、そんなあったかいフェス。

大学生のボランティアスタッフとして参加した僕は前日から設営の手伝い、当日は場外スタッフとして案内プラカードを持って立っていたり、見回り等をしていました。お客さんと声を交わし、楽しんできてねと見送る小さな一期一会がなんだかすごくいいなぁと感じました。ライブは見れないポジションだけど、この場にいるだけで楽しい。最高だなカミコベ!

そんな時間が続くお昼過ぎ、石段に座りグッタリしているおじいちゃんを見つけました。
5月でも熱中症になってもおかしくないほどに良い天気だったあの日。念のためおじいちゃんに声をかけて少しお話ししました。

幸い、体調が悪いわけではなかったけど、病気を抱えていて明後日に手術が控えている。おじいちゃんは岡山から1人で来ていて手術のための入院前に最後の思い出のつもりで若いときを過ごした神戸に来た。と。
そんな大事なもん抱えて神戸まで来てくれたのにガヤガヤとしたイベントやっててごめんね、という気持ちに。

なんとそのおっちゃん、ボートレースで的中した舟券もってて、神戸の場外チケットショップで換金するつもりが日曜で営業しておらず、このまま入院したら退院するころには有効期限切れになってしまう。
換金したお金で帰るつもりだったから電車賃も足りなくて途方に暮れていたところに病気の痛みやらフェスの喧騒やら暑さやらでグッタリしていたそう。

ここからは個人的にやったことでカミコベとはなんの関係もないことだけど、僕はおじいちゃんに岡山までの電車賃を渡して新神戸駅までの電車を教えて会場から最寄りの駅まで2人で歩いた。

道中、本当にいろんなことを話した。舟券の有効期限が切れる前に元気になって退院して換金してねとか、このガヤガヤしとるロックちゅうのはよく分からんけど若者が楽しんどるのは良いことやなとか、僕が悩んで就活していることに対して若い頃の苦労は全部が尊い経験なんやから好きなことしたらええとか。

最後に、おっちゃんは電車賃くれたお礼と言って的中している舟券をくれた。これでなんか美味いもん食べて自分のために使ってくれって。受け取れないとは伝えたけどどうしてもと言って聞かない。じゃあ換金したらそのお金で岡山の病院にお見舞い行くね、なんて約束して元町駅で別れた。

名前も知らない、住んでる場所も違う、さっき会ったばっかの人。それでもこんなに心が通じ合う、そんな機会を間接的にでもくれたカミコベが本当に素敵だ。
お金の問題なんかじゃない。人と人との一期一会、あの時間、あの空間はプライスレス。参加した人みんながそう思ってくれているのならばボランティアスタッフの1人としてこんなに嬉しいことは無い。

あの日あの時出会った人、おっちゃんが今日も幸せに何事もなく過ごしていることを心の底から願っている。また来年のカミコベでも会いましょう。

おっちゃんは早く退院して今度は静かな神戸に遊びに来てね。手術が成功することを祈っています。岡山に会いに行くね。あと舟券、全部外れてたで

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