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マザレス番外編 烙印の報復 ユキオとエミコ  没エピ ユキオとエミコ編① スピンオフ

「ヒラヤマの兄貴何やってるんだろ、早くさらっちゃえばいいのに」
ミニヴァンの助手席、エミコが退屈そうにそういった。
「昨日いた母親とガキどもがどっか行ってまだ戻って来てないんだ」
運転席のユキオが言う。
「ああいう仲のいい家族見てると超ムカつく」エミコが吐き捨てるようにいう。
「お前も親にやられてたのか?」
「ウチの親は最低。親ガチャ失敗なんてレベルじゃないわ。あの家にいたらいつか生命保険かけられて殺される。だから逃げてきたんだ。でもうちらはみんなそうじゃない? ユキオんちは違うの?」
「俺んとこはそうでもなかった」
「そう、可愛がられて育ったんだ?」
「そんなわけ無いだろ、両親とも自殺したんだ。全部この国の政治家のせいだ。いつだって嘘ばっかりつきやがって……」
「じゃあ、頑張って政治家になれば? この国をいい国にすりゃあいいじゃん。なんでこんな事やってんの?」
「そりゃあ、オレは頭良くないし真面目にやってもろくな人生にならないからに決まってるだろ」
「それでヤクザになっていい暮らしがしたいわけ?」エミコがふんっと馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「甘いわ、そんなん」
「うるさい、黙れ!」そういうとユキオはエミコの脇腹を殴りつけた。
「痛っ! 何すんのよ! やっぱりユキオも一緒じゃんか。男はいつもそうよ、やるだけやって飽きたら殴るのよ、あんたもうちの父さんと同じよ!」そういって泣きじゃくるエミコ。
「オレは違う!」
「だいたいヒラヤマのこと兄貴ってうけど、年変わんないでしょ?」
「うるさい、アニキは兄貴だ!」
「尊敬してんだ? ヒラヤマの事」
「アニキを呼び捨てにするな!」
「あたしヒラヤマに犯れたんだ……」
「いつだ?」
「三日前の夜、アジトのトイレで、ヒラヤマのヤツいつになくガンジャと酒で出来あがってて、いきなり襲い掛かりやがった。それで無理やり咥えさせられて、そのあと2回もぶち込みやがった」
「……」
「殺されるかと思ったよ、マジで。酷く殴られて、首絞められて───。思い切り腕に噛み付いてやっと逃げたけど、きっと殺すつもりだった、あたしを。アイツ狂ってるよ。あたし見たんだよ、あいつ動物かなんかの目玉瓶にいれて集めてんだよ、それでその瓶眺めて二ヤついてるの。気持ち悪いとかってもんじゃないわ。変態野郎サイコキラーなんだよ、きっと。ヒラヤマがバラバラ連続殺人の犯人よ!」ユキオは黙ったまま窓の外を見ている。

エミコが囁くようにいった。

「拳銃もってるの。それでヒラヤマ殺ってよ、ユキオ」

 ───空調の効いた車内、ユキオの額から汗がにじむ。


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