2023/1/14 読 統合失調感情障害(SAD)の治療

【読んだ論文】

Current Evidences on Psychopharmacology of Schizoaffective Disorder

José E. Muñoz-Negro et al.

Actas Esp Psiquiatr. 2019 Sep 1.

【研究デザイン】

meta-analysis (Up to Nov. 2018)

【内容】

・統合失調感情障害(SAD)に対する治療ガイドラインは存在しない。

・SADは、中等度から重度の感情障害と統合失調症の主要な症状が同時に存在し、少なくとも2週間は精神病症状を呈する疾患。有病率は0.32%

・米国において、SADにおいてパリペリドン(PAL)が唯一使用を認められている。精神病および感情症状を軽減し、機能性を改善することが示されている。再発予防効果も示されている。副作用としては体重増加と高プロラクチン血症が多い(7-13%)

・リスペリドンは精神症状及び感情症状に対して有効であり、忍容性も良好であった。抗うつ作用は他剤より強いが、抗躁作用はHPDと同等である。

・オランザピンは高い臨床効果を示し、副作用も少なく、脱落者も少なかった。副作用として体重増加が大きかったが、錐体外路作用は少なかった。抑うつ症状および認知症状に対して優れているが、抗躁作用はHPDと同等である。

・クエチアピンも抑うつ症状や幻覚妄想への有効性が示されているが、RPDと同等程度の副作用リスクがあり、抗躁作用が示されていない。

・アリピプラゾールは有効性、忍容性、安全性が確認されている。副作用、錐体外路症状については、プラセボと統計的に有意な差は認められず、高プロラクチン血症は減少した。

・SAD 患者の 90%がクロザピンに反応し(p<0.01)、統合失調症患者よりも臨床効果が高く、中止率も低くなっている。リチウムとの併用は認知機能と陰性症状を大きく改善した。

・リチウムとカルバマゼピンで再発予防効果と入院リスクの減少が示されている。副作用としてはどちらも振戦、食欲増進、口渇があげられる。うつ病型や病型が特定不能な場合にはCMZがより有効であるが、躁病型ではLiとCMZの差はなかった。

・双極型のSADにはバルプロ酸が有効であった。副作用による中止はみられなかった。

・ラモトリギンは強迫症状や感情・妄想症状に有効だという報告がある。

・抗うつ薬(SSRI、SNRI、TCA)はパリペリドンと併用することでうつ症状には効果があったが、リスペリドンは単独で使用したほうがいい(併用しない方がいい)というデータがある。忍容性もRPD単剤の方がよかった。

【コメント・まとめ】

SADの治療ではパリペリドンが経口・LAIともによいと考えられる。

まずは6mgで開始し、反応をみて必要があれば3mgや12mgへ増減するのがよいようである。長期管理はやはりLAIがいいだろう。

リスペリドンも効果があるが、PALと違い、抗うつ薬との併用がNGな点には注意しておきたい。

(液剤やOD錠もあり、頓服使用ができる点がPLIにRPDが勝るように思われた)

オランザピンは体重増加のリスクは高いが、錐体外路症状に有効であり、感情障害(とくに抑うつ症状)にも有効である。IMやOD錠があることも利点ではないか。

抑うつがなかなか抑えられない難治例にはクエチアピンも有効である。

アリピプラゾールは副作用が少なく、忍容性が高い。PALは高PRL血症が比較的多いため、そういう患者にはAPZがいいのかもしれないと思った。

急性の抑うつ症状や情動症状がある場合、リチウムやカルバマゼピンなどの気分安定薬の使用も検討すべきだろう。

抗うつ薬の使用には、双極性障害以上に慎重になるべきと考えられた。


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