ストックオプション発行、結局、何したら良いの問題。

はじめに

スタートアップ経営に欠かせないものとなったストックオプション(「SO」)。ネット上には多くの情報が上がっていますが、断片的な情報も多く、しかも難しいですよね。
これから初めてSOを発行しようとする場合、「で、結局、何をしたらいいの…?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は、全体の流れを簡単にご説明します。

続編(仮)

細かい論点やロジ回りの悩みどころは、別のnoteで書きたいと思います。
「誰に何個付与したら良いか分からないんですけど…」とか、「退職する社員に付与したSOを誰かにあげていいですか…」とか、「社員に付与するSO個数を個別に割当契約書に書き入れるのがマジで大変なんですけど…」とかね。「放棄書のひな形ください!」もありそうですね(笑)

やることリスト

0. 全体

早速ですが、やることリストです。手っ取り早く全体像を掴んじゃいましょう。
誰がオーナーシップを持つ業務なのかも整理しました(ご参考に)。


  1. SOの設計【CFO/経営企画】

  2. 既存株主対応【CFO/経営企画・法務】

  3. 株主総会決議・取締役会決議【CFO/経営企画・法務】

  4. 割当契約書の締結【法務】

  5. 登記手続【法務】

  6. 新株予約権原簿の管理【法務】

  7. 法定調書の提出【経理】


です。以下、ポイントだけ挙げていきます。

1. SOの設計

ホットトピックはここだと思います。一般的なものを挙げてみます。
なお、租税特別措置法に基づく税制適格SOを発行しようとするのであれば、「行使価額の評価」に関して注意が必要です。
また、税務の話と会計の話があるので要注意です。どちらか一方だけフォローしていれば十分!というわけではありません。


  • 誰に何個付与するか

  • 行使価額の評価(1株いくらにするか)

  • 行使条件の設定(例示)

    • 上場しないと行使できない設計

    • M&Aが発生したら行使できる設計

    • 在籍条項(SO権利者が役職員の地位を喪失していないこと)

  • 無償取得事由の設定(例示)

    • SO権利者が役職員の地位を喪失したこと

    • SO権利者が懲戒処分されたこと

    • M&Aが発生したこと

  • べスティング条項(例示)

    • 上場後1年経過したら25%行使可能


2. 既存株主対応

投資契約書・株主間契約書において義務付けられている事前通知・事前承諾事項に該当していることがよくあるため、その対応が必要です。
なお、10%とか15%のSO発行枠が設けられていることを想起した方もいるかもしれませんが、別の話です。

3. 株主総会決議・取締役会決議

(1) 株主総会決議(:募集事項の決定)

非公開会社(未上場会社)の場合、株主総会決議が必要になります。ここで単に「株主総会」と言っても、会社の事情に応じて、色々な株主総会が含まれることに注意が必要です。

  • 株主全員による株主総会(臨時株主総会や定時株主総会です)

  • 普通株主による株主総会(SOの目的である株式が普通株式であることが多いと思いますが、未上場で譲渡制限が付いていますので、必要)

  • 優先株主による株主総会(SOのような潜在株式発行に関し、拒否権が儲けられているのであれば必要)

あとは、取締役をSOの付与対象者にする場合、報酬規制にも留意してアジェンダを設定する必要があります。
なお、株主総会決議に基づいて、取締役会にその決定を委任することも可能です(1年間の期間限定付き)。

(2) 取締役会決議(:割当先の決定)

割当先の決定(誰に何個付与するか)は取締役会決議事項です。

なお、上記のとおり、株主総会から募集事項の決定について委任を受けていれば、その委任の範囲内で取締役会決議をすることになります。
「委任の範囲内」には新株予約権の内容も含まれますので、勝手に違う内容の新株予約権を発行することはできません。新株予約権の内容は、たいてい、「要項」として作られているのではないでしょうか。

4.割当契約書の締結

発行と割当ての決議が行われたら、会社と役職員との間で割当契約書を締結することになります。
税制適格SOとするには、租税特別措置法第29条の2の要件が割当契約書に定められている必要があります。
※2024年4月1日施行の改正法で、いくつかの要件が改正されました。

新株予約権の内容が記載された「要項」ではなく、これを別紙とする場合の本紙である割当契約書に租税特別措置法第29条の2の要件を盛り込まなりません。

5. 登記手続

司法書士(※商業登記に慣れている司法書士さんがおススメ)に依頼しましょう。
IPOを目指す会社なのであれば、登記申請が遅れているとあとで間違いなく指摘されます。

なお、SO発行のように登記申請が関係するコーポレートアクションは、司法書士との連携が必須です。せっかく決議したのに登記通りませんでした…という悪夢を避けるためにも、信頼できる司法書士さんを捕まえましょう。

6. 新株予約権原簿の管理

株主名簿の新株予約権者版です。SO権利者も新株予約権者ですので、新株予約権原簿が必要です。
※ソンナコトハシッテイル、ハヤクヒナガタヨコセという声が聞こえてきそうです(笑)

7. 法定調書の提出

登記申請完了で満足してはいけません。法定調書(「特定新株予約権の付与に関する調書」)の提出が残っています。
翌年1月31日が期限ですので、お忘れなく。

おわりに

文字にすると難しそうですが、うまく外部リソースを使っていけば、案外?超えるべきハードルは高くありません。
巷にあふれる情報が、体系的に、手続的に、どこの話をしているのかが分かるだけでも、思考がクリアになるのではないでしょうか。

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