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【2021年夏 那覇市議選のすすめ】〔特別編〕 那覇市議選挙を振り返る 仲村之菊

 これまで「2021年夏 那覇市議選のすすめ」として上中下の三度にわたり、那覇市議選と市議選立候補者の畑井モト子さんの紹介をしてきた。その那覇市議選が終わったので、上中下に続く完結編として那覇市議選を振り返りたい。

 7月のはじめ、夏本番の沖縄では那覇市議選挙が開催された。辻立ちする立候補者は強い日差しの中で汗を拭いながら最後まで自身の公約をアピールしていた。
 これまで勝手連として応援してきた畑井モト子さんの得票は1119票、結果からいうと落選であった。しかし最下位当選者の得票数が1554票、次点が1508票であるから、県外出身者で完全無所属ということを考えれば、大健闘であり惜しい結果だったといえる。
 手探りながらも違反行為を絶対にしないといった運動形態は、本来ならば当然だが、実際には珍しくもある。また、大きな音量で訴えることはしないというスタイルも斬新であった。
 7月9日の夕方、応援もかねて声をかけに行こうと畑井モト子さんがいるおもろまちへ向かった。近づく頃には大きなレインボーフラッグが見え、交差点には畑井さんの応援団と後援会の人々が手を振っていることがわかった。
 丁度、この日の選挙活動を終えるところだったようで、少しのあいだ手応えや最終日を迎えるにあたっての思いなどを聞くことが出来た。畑井さんは想像以上に陽に焼けていて、疲れこそ見せないものの、「全力でやりきるしかない、人のため犬猫のため」ということだった。

 畑井さんは選挙後に注目が集まったこともあり、連日沖縄の地元紙に取材記事が掲載されたり、またはシンポジウムに登壇したりと、選挙後もなかなかと忙しいようだ。
 声がかかる主な理由としては、畑井さんの人柄はもちろんであるが、LGBTQを公表した立候補者は畑井さんのみであったことと、立候補前からの猫のボランティア活動での実績をかわれたことなどであるようだ。
 しかし、本来畑井さんについて注目すべき点は、「選挙の戦い方」ではないだろうか。多くの人が「地元票がないから無謀」だとか「違反をせずに選挙戦に挑むことは無理」と言っていたわけであるが、その両方の苦言を「無効」にした大健闘であることは、以後の選挙戦でも語られるべきである。

 さて、選挙戦翌日の新聞の見出しであるが、地元紙の琉球新報は「野党躍進 19議席」、沖縄タイムスは「野党6増過半に迫る」との見出しで、両紙共に女性が最多であることを謳った。また、沖縄タイムスは、投票率が過去最低の46・4%となったことにはコロナの影響もあるのではないかと推測しているが、コロナの影響で選挙に初めて行った人もいただろうと敢えて言っておく。
 当初は80名を超える立候補者が想定されていたが、最終的に63名の立候補者となった。現職が32名で新人が28名だった。その内、無所属の立候補者が25名にも及んだことは、現市政に対する憂慮だけではなく、近年稀に見られるようになった「何かに属することへのハードルの高さ」と「組織特有の柵への懸念」があったのではないかと推測する。
 わたしは選挙ウォッチャーではないので、今回の市議選について面白いことは書けないが、ただここでどうしても申し伝えたいことがある。それは、議会制民主主義の中における選挙戦においては、いくら友人知人が当選を果たしたからと言って、それで終わりではない。むしろ友人や知人との決別があるかもしれないぐらい、
 当選者には責任を持って果たすべきことを果たしてもらわなければならない。それがむしろ友人知人としての責任であるようにも思う。
 一票というものは議会制民主主義において、わたしという個人を預けたも当然である。わたしの私生活も仕事も趣味もすべて預けたようなものである。当選者はその個々人の生活や仕事や趣味まで担うつもりで公約を掲げて挑んでいるはずであるとわたしは考える。
 だからこそ、間違えを間違えと指摘することが議会制民主主義で最も重要であるはずだと考えるが、昨今ではそれをせずに、友人知人だからと言って間違えを指摘しないそぶりを見せている。当選した友人知人を信じる、信じないは勝手であるが、それでは議会制民主主義は正常に機能しない。
 しかし、信じる、信じないに重きをおくばかりに終始した上で、民主主義は守れと声高に言うのは無謀だということを今の日本社会を見た上できちんと認識すべきである。今の国会がわたしたちの写し鏡であることをわたしたち自らが一度受け入れて再考察する必要があるだろうと思う。
 友達を本気で叱れない人間関係から成り立っている現代日本に、忖度が蔓延って当然であることも再考察した上で、今後の日本政治、あるいは沖縄を考える必要があるように思う。

【執筆者:仲村之菊、「神苑の決意」第58号より】


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