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ヴェーダの宇宙観(3)

ヴィシュヌ派では、精神宇宙はどのように説明されているのでしょう。

ヴィシュヌを根源の至上主として信仰する人々をヴァイシュナヴァ(Vaishnava)といい、シヴァを至上主として信仰する人々をシャイヴァ(Shaiva)と呼びます。

ヴィシュヌ派の中でも、私が学んでいるのはヴィシュヌではなく根源の存在がクリシュナ神であるとする教えです。

この系統では、クリシュナ神はヴィシュヌの8番目のアヴァターラ(化身)ではなく、クリシュナこそがトップ、至高の存在であり、宇宙の源であるとされます。

地上に降誕し、経典『バガヴァッド・ギーター』を語ったのも、ヴィシュヌ神の化身ではなく、至上主ご自身が自ら降誕したのだとしています。

また根源の存在は光の玉のような非人格的な存在ではなく、名前も姿もある。

このように考えます。

根源の存在、原因の中の原因ですから、我々が持っているものは、名前も姿も含め、全て持っている、という考え方です。(宇宙の源の存在が人格神というのは、多くの人にとっては、すんなり受け入れ難いのではないかと思います)

クリシュナは創造の源のエネルギーであり、完全体です。
この宇宙の全ては、クリシュナの性質の反映です。

「ヴィシュヌ」とは、すべてに遍満するという意味です。

シヴァ派や、その他西洋の神秘主義哲学などでは、我々個々の魂は神そのものと同じ存在であると考え、解脱(開放)とは、その元の存在と同化することであると考えます。

しかしヴァイシュナヴァは、我々も至上主も、持っている性質は同じだが、その量が違うと考えます。

同じ性質は持つが、同一の存在ではないということです。どちらかというと、至上主という「全体」を構成する要素の一つという捉え方です。

それゆえよく至上主は太陽、個々の魂は火の粉や太陽の光に喩えられます。

そして個々の魂はそれぞれに個性を持ちます。

この派の教えで、所謂「解脱」を達成するとは、「全体」の一部となり、至上主と愛を持って関わりあうこととされます。(これをすなわち「バクティ」と言います)

クリシュナは物質的要素の全くない、「精神宇宙」の中心部に存在します。

そのクリシュナが、自身を拡張させた神がヴィシュヌ、さらにその拡張体がシヴァとされています。

完全体であるクリシュナが64の性質を持つとすると、ヴィシュヌは60、シヴァは54の性質を持ちます。

一方、我々人間は50くらいと言われています。

ヴィシュヌの本体があるのは、精神界の中心より一つ外側の「ヴァイクンタ(Vaikuntha):不安がまったくないところ」という領域です。

シヴァの本体(サダーシヴァ)があるのは、その外側の「カイラース」という領域です。

ここまでが精神宇宙。

そして物質宇宙と精神宇宙の間には、「無限の光の領域=ブラーマジョーティー」という領域が存在するとされています。

この光は、至上主の放つ光輝です。

純粋なスピリチュアルエネルギーのみでできた精神宇宙と物質宇宙のイメージは、図のような、大きな領域の中に、何層かの殻に包まれたココナッツのような物質宇宙がある感じです。

物質宇宙は、火・風・土・水・エーテルでできていると言われており、物質宇宙の「殻」もこれらの5つの物質の層になっているそうです。

見ての通り、物質宇宙はとっても小さい。精神宇宙の四分の一くらいのサイズとされています。

そして物質宇宙の下半分は水です。

(ちなみにこの図は、先日のギータークラスの先生の講義に基づいて描きました)

さて、物質界を創造するにあたり、クリシュナは自らを拡張させてヴィシュヌ となります。

このヴィシュヌ が物質宇宙を創造する為に、更に拡張します。

物質宇宙に入る最初の拡張体はマハー・ヴィシュヌです。

マハーヴィシュヌは「カラナの海(原因の海)」に横たわっています。

マハーヴィシュヌの呼気に合わせて、その毛穴からたくさんの物質宇宙が生まれ、吸気に合わせて吸い込まれて消えていきます。

我々はこの一つ一つの小宇宙に生きていると言われており、このマハーヴィシュヌの一呼吸が311兆年。

前回書いていた宇宙の寿命とはこのことです。

これら一つ一つの小宇宙にはさらなる拡張体であるガルボダカシャーイー・ヴィシュヌが入っています。

この小宇宙の下半分も海で、竜王アナンタの上にガルボダカシャーイー・ヴィシュヌが寝そべっています。

そのガルボダカシャーイー・ヴィシュヌの臍から蓮の花が伸びて、そこからブラフマー神が生まれます。

ブラフマー神は、宇宙最初の生命体です。

実際に物質宇宙に直接タッチして、管理監督しているのは、ブラフマー神のようです。(「創造主」というよりは、「造物主」ですね)

ヴィシュヌはすべてに遍満する存在であると書きました。

また、我々も至上主と同じ性質を持つとも。

ヴィシュヌはさらに拡張し、クシーロダカシャーイー・ヴィシュヌとなって、我々個々の生命体に宿ります。

こういったあたりが、ヴィシュヌ派宇宙観ということになります。

ヴィシュヌのアヴァターラ(化身)が10度降誕するということや、その役割やエピソードなどは、基本的にシヴァ派と同じです。

10回目の化身はまだ降誕していません。これが降誕する時は、宇宙が終わる時だそうです。

シヴァ神はいずれにしても破壊神ですので、宇宙の創生そのものには関わりを持ちませんが、物質宇宙が終焉を迎える時、破壊のダンスを踊るとされています。

ブラフマー神が生まれ、創造の為の材料が全て揃った時、ヴィシュヌが視線を送ることで、実際の創造活動が推進されていったと言われます。

その視線は全ての生命体(ジーヴァ)への愛そのものであり、その視線が実は主シヴァであるという説明も見つけました。

が、これがヴァイシュナヴァに一般に支持されるものなのかどうかはわかりませんが。
参考:https://harmonist.us/2016/03/lord-siva-the-glance-of-love/

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