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カルマ、運命と自由意志

仏教でもヒンドゥー教でも、これらの宗教哲学の存在意義を語る場合、輪廻転生の話を避けて通るわけにはいきません。

生まれ変わりの思想は、西洋社会では元々はありませんでした。

人間は、神が自らの姿に似せて創りたもうたので、類人猿から人間に進化するというのはおかしいし、人間は最初から人間で、信心深い人生を歩んでいれば、死んだら神の国に行く。

こういう考え方だからです。
でもこれは世界的に見れば、どちらかというと少数派であることがわかります。

19世紀後半くらいからのスピリチュアリズム・ムーヴメントや、東洋思想の影響もあって、西洋でも現在は生まれ変わりというものがあるのではと考え方を持っている人も多いようですが、西洋の神秘主義思想等では、人間は人間にしか生まれ変わらず、仏教やヒンドゥー教のように動物や植物に生まれ変わる可能性はないと考えます。

これは多分、上述のキリスト教的な考え方が根本にあるからだろうと、私は推察しています。

日本でスピリチュアルが好きな人は、知らず知らず、これらの西洋から輸入された知識を得ているようで、「人間は人間にしか生まれ変わらないんじゃないの?」と考えている人が多いようです。

生まれ変わりというものを信じるか信じないかということはさておき。
とりあえずここからは、そういうものがあるとして、ヴェーダに則ってお話を進めます。

インドでは、至上主は(それがシヴァ神であるにせよヴィシュヌ神であるにせよ)私たちの望みは全て叶えてくれるとされています。
所謂「引き寄せの法則」は、正しいということになります。

だから私たちは思考したことを実現できる筈なのです…が、実際はそうならなことも多い。そうですよね?

ここで、「カルマ」というものが登場します。
カルマというのは、よく「業」などと訳されたりしていますが、この語の基本の意味は「行為」です。

この物質世界は、自分のなした行為は、全て自分に返ってくるという法則があります。
良いことも悪いことも、全部です。

だから、良いことをしていれば、良い人生になるということになります。
悪いことをしても、返ってきて、それを自分が受けたら、そのカルマはそこで解消されます。

ちょっと人を傷つけたとか、ひっぱたいたとかいうくらいのことであれば、今の人生を生きている間に、そのうち返ってきて解消されます。
そのうち誰かにひっぱたかれたら、終わりです。

しかし殺人などのものすごく重い罪を犯したりした場合は、簡単には返ってこなくて、次の人生に持ち越されます。
そして死ぬ時に考えていたこと(心にあったこと)は、次の人生で実現されます。

奥様のことを思いながら死んだら、次は女性に生まれ変わるとか。
もし猫のことを考えながら死んだら、猫に生まれ変わるかもしれません。

こういう考え方です。

私たちは多かれ少なかれ、多分何度かは生まれ変わりを経験しています。
次の人生(運命)を形作る条件は、

・本人の望み(死ぬ時に心にあったこと)
・これまでの人生の行為の結果(カルマ)
ということになります。

「死ぬ時に心にあったこと」というのは、どういうことかと言うと、死ぬ時に思い出すことって結局、普段から考えていること、大切にしていることだよね、という意味のようです。
だから、「普段から頭にあること」と言う方が適切かもしれません。

そういう訳なので、たとえば息を引き取る直前に、不意に視界に飛んでる虫が入ってきたなんて場合は、だからといって虫に生まれ変わることはないだろうと思います。
また、突然車に跳ねられて即死、なんて場合は、ただびっくりして何が起こったのかわからず、思考なんて働いていないでしょう。

まあ兎も角、こんな訳で。
自分のやったこと受け取るということを避けられない為、場合によっては望んでも得られないなんてことが、人生では発生する訳です。

但し、外見、性別、出自や才能の傾向等、誕生時にある一定の条件は持ち合わせていますが、それをどう使いこなしていくかについては、各自の自由意志に任せられています。

未来はその心の持ちようや行動によって、良いようにも悪いようにも変えていくことが可能です。(そう意味では、未来を占うなんてことは、意味のない行為だとも言えます)

現実的に目に見えることをきちんとこなして、堅実に人生を歩んでいたら、だいたいが思い通りになっている人というのは、あまり多くの生まれ変わりを経ていないので、要らぬカルマの縛りが少ないのかもしれません。

また世の中には、好きなように好きなものを食べて、大酒を飲んでいても、全然健康を損なわない幸運な人もいます。
結構ひどいことをしてお金を稼いでいても、更なる幸運で裕福な人生を歩んでいる人もいます。

こういう人も、「若い魂」であまりカルマの縛りがないか、以前の人生でとても良いことをして、良いカルマの結果をたくさん受け取っているのかもしれません。

逆に、昨今、乳幼児が虐待を受けて死に至るなどという痛ましい事件をちょくちょく目にします。

ヴェーダ的に考えると、もしかすると過去に同じようなひどいことをして、それを受け取ったのかもしれません。
インドの人なら、多分そう考えるとことでしょう。

こういうニュースを聞くととても心が痛みます。が、私も「これで悪いカルマが解消されて、次の人生では良い人生が待っているといいな」と、カルマの法則を良い方向で信じたいなと思ったりします。

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