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「1日遅れ」

「ただいまー…」

人々が寝静まった夜中、
俺は家に帰ってきた。

システムトラブル続きで
ここ最近はまともに家に帰れた試しがない。


昨日も今日も、
いや、日付が変わってから家に帰ってきたから
正確には1日ずつ前だけど、

俺達にとって特別な2日間さえも
仕事のせいで台無しにされたとあっては
たまったもんじゃない。


いつか絶対、何倍にも変えて取り返してやるからな。

そんな決意を胸に、服を放り込むついでに
風呂で汗を水に流す。


短い時間で風呂を終えると、
ベッドで眠りについている
美空を起こさないよう、
そっと、寝室に入った。



『んー…おかえりぃ…』

「美空?!」
「ごめん、起こしちゃった?」

『だいじょうぶぅ…いつの間にか寝ちゃってたぁ…』

寝起き声で答える美空。

「本当にごめん…」
「寂しかったよな」

『ううん、謝らんとって』
『頑張っとるのは、もう十分知っとるから』


「うん、ありがと…」

自分だって仕事で忙しいはずのに、
俺のことを支えようとしてくれている美空。


それに対して、何も返せてない俺。


くれたものを返すチャンスは、ここしかない。


俺は、美空の目を真っすぐ見つめて

「なぁ、美空」

『なに?』


「これから、今日を含めて、俺達だけの三連休にしないか?」

『んー?どういうこと?』

綺麗な眼差しで返す美空。


「一昨日が俺の誕生日。そして昨日が美空の誕生日」

『うん』

「そして、今日が」




「俺達の、結婚記念日」

「それじゃ、だめかな?」


『ダメ、って言うわけないじゃん…』
瞳が震える美空。


「あ」

「こんなこと言ってんのに、何も用意してない…」


『もーう!お茶目なんだから』
泣きながら笑ってみせる美空。


『後でいいよ、それは』

『じゃあ、私も1つ、提案しちゃおっかなー』


『いっそのこと、4連休にしない?』

「ん?どういうこと?」


『そこまで言わせないでよ…』

美空は頬を赤らめて、



『4日目はー』


『子供の誕生日、だよ?』
そう言って、口に人差し指をあてる美空。

俺はずっと、美空には頭が上がらないらしい。

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