「たまに帰ってきた日には」
「うわぁ…綺麗」
初めて見る福岡の風景は、気持ちいいものだった。
眼下に広がる、にぎやかな街並み。
少し見る方向を変えれば、穏やかな海が広がっている。
『ほら、あそこ!』
「ん?どこどこ?」
『あれだよ、あの小さな島』
祐希が指差したのは、陸続きの小さな島。
彼女の、故郷だ。
雨上がり故に、少し霞んで見えてしまっているのが残念だ。
「でも、来れて良かった」
『そう?嬉しい』
「でもさ、帰らなくて良かったの?実家」
『うん、別にいい』
『だって、実家はいつでも帰れるし』
『二人だとさ、なかなか来れないから』
「まぁ、確かに」
「実際、今まで予定合わなかったからね」
「でも」
「今度来た時は二人で、祐希の実家に行こうか」
『え、うん…』
「あ。もしかして、いやだった?」
『ううん、そうじゃなくて』
『これって、プロポーズってことだよね』
『指輪、用意しといてね』
タワーからの帰り道。
寄り道する箇所が、1か所増えた。
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