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「大きな変化」

『おーい、聞こえてる?』

画面の向こうにいる紗耶の様子を見て
衝撃を受けた。

出会ったときから変わらなかった、
彼女の象徴とも言えるロングヘアーが
ばっさりボブくらいまでカットされていた。

普段なら耳にかけて見えなくなっていた
白いワイヤレスイヤホンも、
今は、片耳だけしっかりと見えている。


びっくりしすぎて、一瞬時が止まる。

『あれ?聞こえてないのかなー?』


「あ、ごめん。ちゃんと聞こえてるよ」

「紗耶、髪切ったの?」


『そうなのー!どう?似合ってる?』

「うん、似合ってる。凄いイメージが変わった。」


『良かったぁー!そう言ってくれて嬉しい!!』

「でも、寒くない?」
「札幌はまだまだ雪残ってるでしょ?」


『まぁ、確かにそうなんだけど。』
『でもさー。重いし、髪乾かすの面倒くさくって』
『思い切って切っちゃった!』

「そっか。やっぱり長いと大変なんだな。」
「そういえば、仕事はどう?順調?」

『うん!契約も上手くいきそうで、何もなければ予定通り帰れそう!』

「良かった。気を付けて帰ってきてな。」

『うん!ありがと!』


そこから、たわいもない話を繰り広げた。

「そろそろ12時か」
「もう寝ようか」

『うん』


『あ。あのね、一つ言うことがあって』


『じゃーん!』

そう言うと、短かったはずの髪の毛が
普段見ている長さに戻った。


『ドッキリでしたー!!』

『どう?びっくりした?』


「いや、あまりにも自然過ぎてびっくりしなかった」


『えー…』

ドッキリが失敗したと思って、
明らかに落ち込む紗耶。


「いや、そうじゃなくって。」
「そりゃ、大きな変化だけど、あまりにも似合いすぎてたから」


「しかも、より可愛くなってたらさ」


『えー、じゃあ本当に切ろうかなー?』

変化は、大きさじゃないとは思うけど、
マッチするかどうかも、要素の一つだと、思った。

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