「きずく」
『やっぱり、仕事の後はこれじゃないとね』
お通しの塩キャベツを食べながら
黒ホッピーを飲み干す奈々未。
「そうだなー」
「でも、今日のプレゼンは結構苦戦したな」
「クライアントが結構ギリギリまでごねてたし」
『確かにね、もうちょっと積めた気がするけど』
『ま、仕事の話は忘れて、飲も?』
俺たちの目の前に、焼き豚串が置かれる。
串を取って、ばら肉串を口にする奈々未。
『ここって、焼き鳥じゃないんだね』
「昔は豚の方が安かったから、昔からの店は豚中心らしいよ」
『へぇー』
串の奥に刺さった肉を口につまみ
引っ張って頬張る奈々未。
『そういうさ、無駄な知識を持ってるくらいなら、別のベクトルに発揮してほしいよね』
『例えば、些細なことに気づく能力とかさ』
『こうやって、サシで飲んでるんだからさ』
自分の勘の悪さを、これほど恨んだことはないかもしれない。
でも、これから「きずく」分には、いいよね?
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