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木彫珈琲ミル


姉が営んでくれていた喫茶兼展示室を継ぐことになったのは数年前。

喫茶室の商いを学びながら、

工房で作り始めたのが「木彫りの珈琲ミル」だった。

何度か試作を繰り返しては、寝かせておくこと数年。

SNSに載せていた写真から問合せを頂くこともあった。

最近、熱心なご依頼を頂く好機に恵まれ、

今回、ひとつの完成となった。






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木の塊を彫刻のように削りだして制作しているので、

「木彫珈琲ミル」と名づけた。



「ミル」に興味を持ったのは、喫茶室を引き継ぐことになった時。

自分の創作と喫茶を結びつけて考えていた時、偶然目にした「中西ミル」という作品だった。

中西さんが手掛けたコーヒーミルなので「中西ミル」と云うらしい。

豆を挽く臼の部分はKalita製だ。



喫茶室は江戸時代の商家の一室を修繕して営んでいる。

客室からは坪庭が見え、薄暗い室内に柔らかな光が届く。

そんな光がつくる、様々な陰影を目にしては、美しいと感じていた。

月灯りも同様で、「なまこ壁」や「鏝絵」、「礎石」や「瓦」「飛び石」など、

先人達が残した仕事はどれも凹凸があって、

灯りはその凸に引っかかり、凹に影を落とすのだ。

その灯りの色合いや陰影がいつも心に残っていて、

そんな「光を捉えられる作品」を作りたいと思っていた。


その表現のひとつとして、この螺旋がある。






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削りには自作の豆鉋を用いる。

刃(鉋身)は機械刃であるHSS鋼(ハイス鋼)を切断・楔状に切削・裏すきを経て用意する。

機械刃は本来、機械研磨が基本だが、近年の人工砥石は優秀で手研ぎでも良い刃がつく。






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出来上がった鉋身に合わせて樫の木で鉋台を打つ。

好みの螺旋形状に合わせて刃や台の形を加工して、

削れるよう調整する。

道具は作品と共に増えていく。






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挽いた粉を受ける「抽斗」も塊から削りだす。

位置を決め、ツマミを取り付ける。

ツマミは木で作る場合もあるが、今回は真鍮を使用した。






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真鍮棒を旋盤で好みのサイズに削りだす。






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突っ切りバイトで切り落とす。






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火で炙り焼き鈍す。






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手製の金槌で仕上げる。






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ハンドルの握り部分も削り出して制作。

全ての木部を塗料で保護し、組み立てて完成となる。






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・「木彫珈琲ミル」 樹種:ウォールナット


ミルの機能はそのままに、

「彫刻作品のひとつ」として制作しています。

今後も様々な樹種、身近にある木々を用いて制作していきます。


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