見出し画像

コラム・住職の方丈記6~ 十三夜と布袋さん

先月の「中秋の名月(十五夜)」につづいて、明日10月18日は「十三夜」です。

十五夜に次いで美しい月といわれる、日本独自のお月見の風習です。

今でこそ私たちは西洋由来の太陽暦(新暦)を使っていますが、江戸時代までは月齢をもとにした太陰暦(旧暦)を用いていたので、月の満ち欠けがふだんの生活に溶け込んでいました(〇日というのがそのまま月齢を表しているからです)。

新月(1日)に始まり、満月(15、16日)を経て、新月(30日)で終わるのが太陰暦での一カ月ですから、これこそまさに「ひと月」。ということで…十三夜は新月から数えて13日目、満月のちょっと手前の月ということになりますね。

そして明日10月18日は旧暦では9月13日なので、明日の夜が「十三夜」となるわけです。

中秋の名月は中国由来の風習ですが十三夜のお月見は日本独自のものらしく、十五夜の後にやってくる美しい月なので「後(のち)の月」ともよばれます。

また、この時期に収穫される栗や豆など旬のものをお供えしたため、「栗名月」とも「豆名月」とも呼ばれてきたそうです(わたしは初めて知りましたが、みなさんはご存知でしたか?)。

211017 極上栗ようかん

偶然にも、本日ご法事にお伺いしたお檀家さんで栗ようかんをいただきました。十三夜のお供えにピッタリですね、Tさんありがとうございました。

さて、十三夜といえばこの絵。

指月布袋画賛

『指月布袋画賛』 仙厓筆 江戸時代 出光美術館所蔵
出典: http://idemitsu-museum.or.jp/collection/sengai/sengai/01.php

江戸時代の禅僧である仙厓(せんがい)の筆によるもので、「指月布袋画賛(しげつほていがさん)」という絵です。

布袋とはあの七福神の布袋さんで、ふくよかなお体に大きな袋(何が入っているのか気になりますが…)の持ち主です。

その布袋さんが笑顔でお月さまを指さしており(指月布袋)、また一緒にいる子供も楽しそうに両の手を上にあげています(イエーィ!という声が聞こえてきそうですが、江戸時代なのでそんなことを言うはずはなく…さて、当時の子供はなんと言ったのやら?)。

さらにこの絵には、左側にことば(賛)が添えられています。

「を月様幾ツ、十三七ツ」
=お月さまいくつ、十三 七つ

「お月さまいくつ」という、わらべ謡ですが、「十三 七つ」は、十三夜の七つ時(4時頃)のことです。

月はここには描かれていませんが、禅宗では悟りの境地を示していて、「月」を指し示す「指」は経典をあらわしています。

経典はもちろん大切ですがそれだけにとらわれることなく、経典が指し示す悟りの境地へ自ら修行することによって到ることが大切であるということを、和やかに示している絵です。

さて、明日はそんな十三夜。天気予報ではおおむね晴れのようですから、お月見ができそうです。

最近だいぶ寒くなってきたので明晩は早い時間にお月見をしようと思います。

栗ようかんや栗きんとんなど旬のお菓子をお月さま(と自分にも?!)にお供えし、布袋さんと子供を思い浮かべながらのお月見、イエーィッ!とはいきませんが、みなさんもいかがですか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?