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オンライン法事の舞台裏

オンライン会議、オンライン診療、オンラインセミナーなどいろいろな分野でオンライン化が進んでいますが、お寺や葬祭ホールではオンライン供養(葬儀・法事)が行われるようになりました。

オンライン供養といっても、大きく2つのケースに分けることが出来ます。

1つめは、リアルな参列者の他にオンラインで参列される方もいるというもの。

これはリアルで参列している人たちが、遠方に住んでいる人たち(親せきなど)にPCやスマホなどを使ってビデオ通話で法要を中継し、画面越しお参りしてもらうというものです。

お孫さんが遠方に住んでいるとか、親せきが全員県外だからということで、中には施主家の方が自前のスマホやタブレットで何人にも中継することもあったりします。

先日のご葬儀では、故人のお孫さんがスマホの画面越しに祭壇に向かってお別れの言葉を述べていました。

もう1つのケースは、施主家も含めてリアルな参列者が誰もいないというもの。たとえるなら無観客のライブやコンサートのようなものでしょうか(雰囲気はだいぶ違いますが)。

この場合はわたしがお堂でご供養している様子をオンラインで中継し、画面越しに参列してもらうことになります。

オンラインでは何人も参列しているのに、お堂にはリアルな参列者は誰もいなくてパソコンやタブレットだけがあるという、ちょっと不思議な感じです。

そんなオンライン供養ですが、スマホやパソコンの画面越しに参列しているだけではわからないその舞台裏を、今回は”リアルな参列者が誰もいない法事”を例にご紹介したいと思います。

さて、そもそもオンラインにはネット環境が不可欠なのですが、ふだんうちのお堂にはWi-Fiの電波が来ていないので、オンラインの法事をする時は、まずは中継機を使って寺務所から電波を引っ張ってくることから始めます。

この中継機1号は庫裏の玄関を上がってすぐの壁にあるコンセントに設置しました。手のひらサイズのコンパクトなものです。

210825 中継機1

続いてこちらは中継機2号。お堂の入り口付近にイスを出しその上に置きました。この奥がお堂ですが、これでようやく電波が届きます。

210825 中継機2

こちらは法事の様子を中継するパソコンです。ちょうど良い高さの台があったのでそれを使うことに。画面には祭壇が写っています。

210825 ノートPC

最近はオンラインミーティングのzoomかLINEのビデオ通話で中継することがほとんどです。

時間になると参列のみなさんが次々と入室(入堂?)してきます。全員そろったところで、画面越しにご挨拶し、法事の流れをご案内してから始まります。

また、事前に般若心経などをPDFでお送りしてあるので、それを見ながら画面越しに一緒にお経を唱えてもらったりもします。

210825 祭壇

祭壇の前の経机のところにあるのはタブレットですが、ちゃんと中継されているかどうかを確認するためのもので、祭壇とわたしの後ろ姿が写るようになっています。

210825 タブレット -

自分の後ろ姿を画面越しに確認しながらおつめするというのは、自分が二人いるようでなんとなく変な感じですが、こうしておけば途中何か不具合があってもすぐにわかるので安心です。

実は以前お参りの最中にネット接続が不安定になり切れてしまったことがあったのですが、その時は法事の様子をモニターしていなかったので、終わるまでトラブルがあったことに気が付きませんでした。

結局おわってからもう一度つなぎなおしたりしたのですが、そんなこともあり家族から拝借してきたタブレットでモニタリングしながらおつとめしています。

必要に迫られて始めたオンライン供養ですが、いろいろ試行錯誤してきて現在はこんなセッティングになっていています。

210825 大間

今はテクノロジーのお陰で、パソコンやタブレットがあれば法要の様子をオンラインで中継することが出来るので、お檀家さんには自宅にいながら画面越しにお参りしてもらうことが出来るようになりました。

オンライン供養は、何年も前から技術的には可能でしたが、心理的にはあり得ないことでした(そもそも葬儀や法事は実際に参列することに意義があるんだから、画面越しにお参りするなんてねぇ…とみなさんも思いませんでしたか)。

わたしもほんの2年前までは自分がオンライン供養をすることになるとは思ってもいませんでしたし、zoomはもちろんLINEのビデオ通話すら使ったことがありませんでした。それが今では必要ならオンラインでご供養することもありますし、お檀家さんも違和感なく画面越しにお参りしてくれます。

環境や状況が変われば、必要に応じてわたしたちの価値観も行動も変わるものですね、ホントに。

210825 人の世のあたりまえも常識も…


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