見出し画像

米国市場:10/9週の振返りと10/16週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,327.78と前週比+0.45%で終了しました。NASDAQは13,407.23と前週比-0.18%%で終了しました。
 先週の株価は、期待されていたよりも下がらなかったCPIの影響で少しの間調整局面に入ったことを示すような動きでした。米国債10年債利回りは、10月6日の4.887%をピークにつけたような動き方をしていました。10月7日以降のガザ地区での戦闘の勃発による影響は短期的にはほとんどありませんでした。
 10月に入って明らかになったことは、雇用は旺盛でしたが、平均時給の引き上げは7¢と大きくありませんでした。また、CPIは、前月比で0.4%上昇し、予想の0.3%を上回りました。前年同月比では、3.7%となっています。インフレは依然として根強く見えておりますが、賃金上昇が少しずつ緩やかになり始めていることや、エネルギー価格が下落基調にあることから、今後のインフレ数値を表す指数も緩やかに下落してくると考えています。また、30年固定住宅ローンの平均金利は7.67%となっており、2000年以来の高水準となっています。このことから中古住宅市場は今後は大きくは動かないということが予想され、また賃金の上昇も緩やかになりつつあることから住宅市場も緩やかに下落していくことと予想されます。
 先週のハマスのイスラエル攻撃を受けて、6日まで下落を続けてきたWTIは5.87%と急騰しました。これは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化のプロセスが進んできましたが、今回の攻撃によって中断されたため、増産の可能性がなくなったためだと思います。ただ、原油価格の上昇を受けても長期金利は大きく反応しておりません。今回の事件を受けて、国際情勢が不透明感を増してきており、人々の動きが制限されてくることから世界全体の景気に影を落としてくるものと思われます。
 世界経済の減速が見てくると、労働賃金に対するプレッシャーも和らいでくると思いますが、賃金上昇に関する兆候はまだあるようです。 ホーメル・フーズは、ミネソタ、ジョージア、ウィスコンシン、アイオワのホーメルで働く国際食品商業労組の労働者が、「会社史上最大の賃上げ」を含む新労使契約の批准に投票したことを明らかにしました。 カイザー・パーマネンテとその従業員のおよそ3分の1を代表する労働組合の連合は、4年間で21%の賃上げを含む暫定的な契約に合意しました。ウォルグリーンの薬局スタッフは、不満足な労働条件に抗議するため、10月末の全国的なウォークアウトと複数の集会のための土台作りを行っており、他の小売薬局の従業員とも参加について協議中です。これらは、来年カリフォルニア州のファストフード労働者の賃金が29%引き上げられる見込みであることや、州の最低賃金の引き上げに加えて行われるものです。ただ一部の動きであり全体の労働市場の動きは引き続き見定めておく必要があると思います。
 FRBが利上げの必要性がなくなった趣旨の記事が11日のWSJに掲載されましたが、フィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁は13日金曜日に、「データで見たり、関係者から聞いた状況に明らかな変化はない。われわれは金利を現状維持できる段階に来ていると信じている」と述べています。このことから10月31日から開催されるFOMCにおいてFRBが利上げをする可能性はかなり低くなってきており、FedWatchToolでも11月の利上げ可能性は10%未満となっていることからも確認できます。先週で長期金利もピークを打ったと見えること、FRBが利上げの手を緩めてきてることから、株式としては上を見てよいのではないかなと考えています。

株式

 S&P500種株価指数の第3四半期決算シーズンは、まだ決算が出始めた段階ですが好調な滑り出しとなっています。好業績サプライズの数とその規模は5年平均と10年平均を上回った状況です。その結果、S&P500種株価指数は先週末と比較し、また前四半期末と比較し、13日金曜日時点で、第3四半期の増益となっています。同指数が前年同期比で増益となるのは、2022年第3四半期以来となります。
 S&P500構成企業のうち約6%が2023年第3四半期の決算を発表しています。これらの企業のうち84%が予想EPSを上回る実績を報告しており、これは5年平均の77%、10年平均の74%を上回っています。企業が発表した収益は予想を10.1 %上回っており、5年平均の8.5%、10年平均の6.6%を上回っています。。第3四半期のブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定を合わせた)増益率は、先週の-0.3%、第3四半期末(9月30日)の-0.3%に対し、0.4%となっている。仮に0.4%が今四半期の実際の増益率であれば、2022年第3四半期(2.3%)以来の前年同期比増益となります。
 売上高に関しては、S&P500構成企業の66%が実際の売上高が予想を上回ったと報告しており、これは5年平均の68%を下回ったものの、10年平均の64%を上回っています。また、企業が報告した売上高は予想を0.9%上回っており、これは5年平均の2.0%、10年平均の1.3%を下回っています。第3四半期の混合売上高成長率は1.9%で、先週の収益成長率は1.7%、第3四半期末(9月30日)の収益成長率は1.6%であった。もし1.9%が今四半期の実際の増収率であれば、11四半期連続の増収となる。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年第4四半期の収益成長率(前年同期比)を7.6%と予想しています。CY2023については、アナリストは(前年比)0.9%の増益を予想しています。CY2024については、アナリストは(前年比)12.2%の利益成長を予想していいます。
 12ヵ月予想PER は18.1 で、5 年平均(18.7)を下回りますが、10 年平均(17.5)を上回っています。第3四半期末(9月30日)の予想PER18.1も上回っています。
 来週、S&P500種構成企業55社(ダウ30種構成企業5社を含む)が第3四半期の決算発表を予定している。(Source FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

10/16(月):
<寄付き前>Charles Schwab (SCHW)
<引け後>
10/17(火):
<寄付き前>Albertsons (ACI), Bank of America (BAC), BNY Mellon (BK), Goldman Sachs (GS), Johnson & Johnson (JNJ), Lockheed Martin (LMT)
<引け後>Interactive Brokers (IBKR), JB Hunt Transport (JBHT), United Airlines (UAL)
10/18(水):
<寄付き前>Abbott Laboratories (ABT), ASML (ASML), Elevance Health (ELV), Morgan Stanley (MS), Procter & Gamble (PG)
<引け後>Alcoa (AA), Crown Castle (CCI), Lam Research (LRCX), Netflix (NFLX), PPG Industries (PPG), Tesla (TSLA)
10/19(木):
<寄付き前>American Airlines (AAL), AT&T (T), Blackstone Inc (BX), Freeport-McMoRan Inc (FCX), Union Pacific (UNP)
<引け後>CSX (CSX),Intuitive Surgical (ISRG)
10/20(金):
<寄付き前>American Express (AXP) 

米国の主な経済指標

10/16(月):ニューヨーク連銀製造業景気指数
10/17(火):小売売上高、設備稼働率、鉱工業生産指数
10/18(水):住宅建築許可件数、住宅着工件数
10/19(木):中古住宅販売件数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数
10/20(金):

今週の着目点

 イスラエルとハマスの紛争をめぐるニュースは今後はさらにひどいものになると予想されます。また、ワシントンでの下院議長選出に向けた取り組みなどが注目されてきます。この下院議長選出は、初期段階では長引くようにみえますが、11月中旬の政府閉鎖に向けては国際情勢の不透明感から予想に反してさっさと決まるように考えています。
 今週の経済指標としては、9月の小売売上高と9月の住宅着工件数と建築許可件数が注目される。月小売売上高は、コストコの9月売上高と比較してみたいと思います。9月の小売売上高報告には、3ヵ月の業績も含まれるため、チポトレやアマゾンなど9月期の業績を測る基準となると考えています。
 9月の住宅着工件数と建築許可件数は、住宅ローン金利の動向を考えるとおおきく上振れするような数字ならないと思います。トール・ブラザーズ(TOL)、NVR(NVR)、DRホートン(DHI)などの住宅メーカーだけでなく、ビルダーズ・ファーストソース(BLDR)は、これらの株価のピークを打ったと考えてます。中古住宅販売件数も発表される。こちらも、住宅ローン金利の動向を考えると、新築住宅の借入コストが上昇しているため、ここ数年のように住宅が売られ市場が活況を呈すようなことにはならないことが確認されると思います。
 FRBベージュブックも発表されます。各州の経済、インフレ圧力、雇用市場に関する見解を示すもので、金融政策を確認する上での一つのツールになると思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?