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米国市場:5/1週の振返りと5/8週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,136.25と前週比-0.8%で終了しました。NASDAQは12,235.41と前週比+0.1%で終了しています。
 先週は、週を通じて株価は大きく動きましたが、週単位でみるとほどんど変わらずで終了しています。米国内経済が予想以上に良い状態で持ちこたえていることが指標からもうかがえましたし、賃金上昇が高いことも示されインフレ圧力が依然として高いことを示すデータが出てきています。また、企業の決算が出そろいつつあり、予想よりはよい結果となっていることから市場に安心感をもたらしています。また、銀行株の不安から大きく売られた地方銀行株が金曜日の大幅上昇しました。地方銀行の株価は一定回復しましたが、平時よりもまだ低い状況でここからの回復は少し時間がかかるかもしれません。
 5月3日に閉幕したFOMCは大方の予想通り、0.25%の利上げが行われました。結果、フェデラルファンズ・レートは5.0~5.25%になりました。市場が期待していた利上げの打ち止めは明示されませんで、かわりに今回が最後になる可能性が高い旨がほのめかされています。ただし、今後の経済データをみながら都度判断していくとして、どちらにでも対応できるようなスタンスが打ち出されていることには注意が必要だと思います。
 CMEフェドウォッチツールの最新状況を確認すると、23年は9月から利下げが開始されるとの見方が引き続き50%を占めており、23年末にかけてはさらに下がると見込んでおり、FRBの考え方と、市場の考え方にはまだ開きがあるようです。今後は6月23日のFOMCに向けて、FRB高官から出されるメッセージについて確認することは引き続き必要かと思います。
 金曜日の失業率・雇用者数の発表は、2月、3月の雇用者数が下方修正されたものの、4月の雇用者数は25.3万人と予想を上回る結果となっております。求人数の減少も確認されてはいますが、求職中の失業者を上回る数が提示されており労働市場は引き続きタイトな状態が続きます。結果として、賃金上昇は続くことが確認でき、インフレ圧力は一時よりは弱まったもののまだまだ続くと考えられます。
 S&P500は、今年に入ってから3800~4200のレンジで推移しており、レンジ相場が続いています。これまでのFRBの動きと市場の期待値に大きな相違がないためとも考えていますが、将来の見通しについてはまだ、考え方に相違があり、この差を埋めていく過程でレンジをブレイクアウトしていくのかが気になるところになります。

米国経済

5/1(月):ISM製造業景気指数
 ISM製造業景気指数は、47.1と予想46.7を上回りました。前回値は46.3でした。
5/2(火):製造業新規受注、耐久財受注(前月比)
 製造業新規受注は0.9%と予想0.8%を上回りました。前回修正値は‐1.1%(修正前:‐0.7%)でした。
5/3(水):ADP雇用者数(前月比)、ISM非製造業景気指数、FOMC
 ADP雇用者数は29.6万人と予想14.9万人を上回りました。前回修正値は14.2万人(修正前:14.5万人)でした。
 ISM非製造業景気指数は、51.9と予想と一致しました。前回値は51.2でした。
5/4(木):新規失業保険申請件数
 新規失業保険申請件数は、24.2万件と予想23.8万件を上回りました。前回修正値は22.9万件(修正前:23万件)と下方修正されています。
5/5(金):失業率、非農業部門雇用者数(NFP)
 失業率は、3.4%と予想3.6%を下回りました。前回値は3.5%でした。
 非農業部門雇用者数は、25.3万人と予想17.9万人を大きく上回りました。前回修正値は16.5万人(修正前:23.6万人)と大きく下方修正されています。

株式

 23年1Q決算シーズンも終盤に差し掛かり、S&P500に属する企業の85%が、5月5日までに決算発表を終えています。この四半期は減益とはなっていますが、79%の企業が予想を上回るEPSの結果を報告しており、これは5年平均の77%、10年平均の73%を上回っている状況です。また、企業の結果はアナリスト予想を7.0%上回る利益となっており、これは5年平均の8.4%を下回るものの、10年平均の6.4%を上回っています。第1四半期のブレンド(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定結果を組み合わせたもの)の減益率は、先週の減益率-3.7%、第1四半期末(3月31日)予想の減益率-6.7%に対し、5月5日時点では-2.2%となりました。仮に-2.2%が当四半期の実際の下落率であれば、同指数が2四半期連続で減益を記録することになります。
 11セクターのうち5セクターが前年同期比で増益となっており、消費者裁量市場と産業部門が好調です。一方、前年同期比で減益となったセクターは6つあり、素材セクターと公益事業セクターがその代表格となっています。
 売上高については、S&P500の75%の企業が実際の売上高を予想を上回って報告しており、これは5年平均の69%、10年平均の63%を上回っております。全体として、企業は予想を2.7%上回る収益を報告しており、これは5年平均の2.0%を上回り、10年平均の1.3%を上回っています。その結果、第1四半期の混合売上成長率は、先週末の売上成長率2.9%、第1四半期末(3月31日)の売上成長率1.9%に対し、本日は3.9%となりました。仮に、3.9%が当四半期の実際の成長率であれば、同指数が報告した売上成長率としては2020年第4四半期(3.2%)以来の低さを記録することになります。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年後半は収益の伸びを予想しています。2023年第2四半期については、アナリストは-5.7%の減益を予測しています。2023年第3四半期と第4四半期については、アナリストはそれぞれ1.2%と8.5%の増益を予想しています。2023年CY全体では、アナリストは1.2%の利益成長を予測しています。
 フォワード12ヶ月PERは17.7と、5年平均(18.6)を下回っていますが、10年平均(17.3)を上回っています。また、第1四半期末(3月31日)時点の予想PER18.1倍を下回っています。

来週の主な決算発表(予定)

-5/8(月):
<寄付き前>BioNTech (BNTX), KKR (KKR), Tyson Foods (TSN),
<引け後> PayPal (PYPL), Skyworks (SWKS), Trex (TREX)
5/9(火):
<寄付き前>LegalZoom (LZ) Royalty Pharma (RPRX),
<引け後>Affirm Holdings (AFRM), Airbnb (ABNB), Marqeta (MQ), Olo (OLO),
Rivian Automotive (RIVN), Silk Road (SILK), Twilio (TWLO), Upstart (UPST),
5/10(水):
<寄付き前>Cheesecake Factory (CAKE), Nutrien (NTR), Robinhood Markets (HOOD), Roblox (RBLX), Vertex (VERX),
<引け後>Jazz Pharmaceuticals (JAZZ), Sonos (SONO), Trade Desk (TTD), Unity Software (U), Walt Disney  (DIS),
5/11(木):
<寄付き前>Charles River Laboratories (CRL), Euronav NV (EURN), Tapestry  (TPR), 
<引け後>-
5/12(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

5/8(月):
5/9(火):
5/10(水):消費者物価指数(CPI)、
5/11(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
5/12(金):ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 今週は、4月の消費者物価指数と生産者物価指数が発表されます。今週発表された4月の製造業およびサービス業景気指数では、インフレ圧力が過去数ヶ月に比べて高まっていたことから、インフレ圧力が弱まっていないという内容の裏付けるデータが発表される可能性が高いです。この場合、パウエル議長の「FRBの目標2%への道のりは早くない」というコメントを補完する形となるため、金利が年内は下がらない可能性を示唆することにつながり市場がネガティブに反応することになるかもしれません。
 今週から小売業を中心とした決算シーズンの終盤に入り、また、投資家向けカンファレンスが相次いで開催される予定です。これらのイベントでは、需要、インフレ圧力などの関連項目、信用面に関するコメントが注目されてくると思います。
 ドル相場は引き続きドル高のレンジにいるため米国企業にとって、どの程度の逆風となるのか、引き続き注視していきたいです。原油価格も今年に入ってから70ドル~80ドル台でのレンジで推移しており、昨年比との比較による下落が今後のインフレ指標に好影響を与える可能性が高いと思います。ただ、今後の需要・供給については不透明感があり、OPECがどのようなレポートを出してくるかも確認しておきたいです。

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