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米国市場:3/6週の振返りと3/13週の予定

市場概況

 先週の市場は、3回にわたって大きく下げS&P500指数は今年の上げ幅がほぼなくなるまで下げました。S&P500指数は、3861.59と前週比-4.55%、NASDAQは11138.89と前週比-4.71%で引けました。先週は、雇用統計が発表されまでは株式が動く要因はないと思っていましたが、パウエルFRB議長の議会発言とシリコンバレー銀行の破城、CitiのCFOがクレカ残高の上昇について発言から市場は大きく動きました。
 火曜日の議会証言においてパウエル議長は、FRBがインフレを抑制するためには、これまでの予想以上のことが必要になると述べ0.5%の利上げの可能性も示唆するような発言をおこない、市場予想よりも高く着地する可能性が高いことが懸念され、案の定、火曜日の市場は下げに転じています。
 また、9日はCitiのCFOマーク・メイソンが「信用度の低い顧客は、クレジットカードの支払い遅延が増え始めており、それが銀行の損失拡大につながるだろう」と述べたことにより、リセッションに対する懸念が高まりこの日も大きく値を下げています。
 そして、一番大きなニュースになったのは、SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行の破城です。これは、2008年の金融危機以来初めて、そして現在までに2番目に大きな銀行の破綻となりました。SVBは、IPOして間もないベンチャー企業を基盤としており、先日のSVBは投資ポートフォリオの損失が予想されることからバランスシートの補強に動いた結果、取り付け騒ぎが起き、株価は大暴落しました。顧客基盤が今苦境に陥っているシリコンバレーの企業が多いことから金融不安に陥ることはないと思いますし、また、その後にFRBと財務省から発表されたディスカウントウィンドウの緩和措置等を発表していることから預金者の損失に対するリスクが消えました。
 この破城は、FRBが積極的に利上げをした結果、アメリカの一番弱いところにダメージが蓄積した結果のものと考えられるため、今後もFRBが積極的に利上げするという線はほぼ消えたと考えてよいと思います。

米国経済

3/8(水):ADP雇用者数
 ADP雇用者数は、24.2万人と予想21万人を上回りました。前回修正値は11.9万人(修正前:10.6万人)でした。年間給与は雇用継続者が前年比7.2%増、転職者は14.3%増となりました。転職者数は1月と比較して若干減少していますが、それでも2桁の数字であることから、賃金インフレが依然として熱いことがわかります。また、企業が必要とする人材の確保に苦慮していることも、労働市場が依然として厳しいことを物語っています。

3/10(金):失業率、非農業部門雇用者数(NFP)
 2月の失業率は、3.6%と予想3.4%を上回りました。前回値は3.4%でした。非農業部門就業者数は前月比31.1万人増と予想22.3万人を上回りました。前回修正値は50.4万人(修正前:51.7万人)でした。
 高インフレや金利上昇にもかかわらず米国経済が強いということを示しています。これは、他のデータと整合性のある内容でした。レジャー・ホスピタリティー、小売り、医療の業界で就業者数が伸び、物流・倉庫、金融、製造などの分野は就業者数が減少しています。平均時給は33.09ドルと前年同月比4.6%の上昇でした。時給の伸びは昨年より鈍化したものの、依然として新型コロナウイルス流行前の水準を上回っている状況です。

株式

 22年4半期決算もほぼ終わり、2023年第1四半期決算の予想をアナリストが出し始めています。その予想ですが、2023年第1四半期の業績予想を平均よりも大きな幅で引き下げています。1株当たりで見ると、第1四半期の推定利益は12月31日以降5.7%減少しています。この減少は5年平均の-2.8%より大きく、10年平均の-3.3%より大きい状況です。
 ガイダンスの面でも、最近の平均と比較して、多くのS&P500企業が2023年第1四半期のEPSガイダンスを低めに発表しています。現時点では、S&P500のうち106社が2023年第1四半期のEPSガイダンスをだしており、そのうち81社がマイナスのEPSガイダンスを、25社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。これは、過去5年平均の57社、10年平均の65社を上回っています。
 ネガティブなEPSガイダンスを発表した企業の数が多く、業績予想の下方修正が純増したため、2023年第1四半期の推定(前年同期比)減益幅は第1四半期の開始時点と比較して大きくなっています。12月31日のS&P500の推定(前年同期比)減益幅-0.4%に対し、本日時点では-6.1%の減益幅となる見込みです。
 仮に-6.1%が実際の減益幅となった場合、同指数は2020年第2四半期(-31.8%)以降で最大の減益幅となります。また、同指数が2四半期連続で減益を報告することになります。
11セクター中5セクターが前年同期比で増益となる見通しで、消費者裁量、産業、エネルギーセクターが牽引しています。一方、前年同期比で減益となるセクターは、素材、ヘルスケア、通信サービス、情報技術セクターを筆頭に6セクターと予測されています。
 また、売上高については、当四半期においてアナリストが予想を引き下げました。その結果、2023年第1四半期の推定(前年同期比)収益成長率は、当四半期の開始時点に比べ、現在は低下しています。本日現在、S&P500の(前年同期比)収益成長率は2.0%と予想されており、12月31日の(前年同期比)収益成長率の予想値は3.4%より低くなっています。
 仮に2.0%が実際の成長率となった場合、同指数が報告する収益成長率としては、2020年第3四半期(-1.1%)以来の低水準となることになります。収益が前年同期比で増加すると予測されるセクターは7つで、金融セクターがその筆頭です。一方、収益が前年同期比で減少すると予測されているのは、素材セクターを筆頭に4セクターです。
 今後、アナリストは2023年上半期は減益、2023年下半期は増益を予想していますが、こちらも引き下げられています。2023年第1四半期と第2四半期については、アナリストはそれぞれ-6.1%と-3.9%の減益を予測しています。2023年第3四半期と第4四半期については、アナリストはそれぞれ2.8%と9.6%の増益を予想しています。2023年CY全体では、アナリストは1.9%の利益成長を予測しています。
 フォワード12ヶ月PERは17.2であり、5年平均(18.5)、10年平均(17.3)を下回っている状況です。

来週の主な決算発表(予定)

3/13(月):
3/14(火):
<引け後>Guess (GES), Lennar (LEN), SentinelOne (S), Smartsheet Inc (SMAR), StoneCo Ltd (STNE)
3/15(水):
<引け後>Adobe (ADBE), Five Below (FIVE), UiPath Inc (PATH), Williams-Sonoma (WSM)
3/16(木):
<引け後>FedEx Corp (FDX), Quest Diagnostics Inc (DGX), Williams-Sonoma, Inc. (WSM),
3/17(金):

米国の主な経済指標

3/13(月):
3/14(火):消費者物価指数(CPI)
3/15(水):小売売上高、生産者物価指数(PPI)、ニューヨーク連銀製造業景気指数
3/16(木):住宅建築許可件数、住宅着工件数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数
3/17(金):設備稼働率、鉱工業生産指数、ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 今週も経済指標の発表が多いため、こちらは引き続き確認はしておく必要がありますが。上述した通り、SVBの経営破綻を受けて、センチメントが大きく変わったように思います。こちらの幕引きがどのように行われるかで動きも変わると思います。
 少なくとも、0.5%の利上げがされることはなく、0.25%を予定通り引き上げて、その後は据え置くという考え方が今後は主流になってくるのではないかと思います。
 2月の消費者物価指数と生産者物価指数は引き続きファクターとなりえますが、すでにそれほど重要ではないかもしれません。

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