米国市場:10/24週の振返りと10/31週の予定
市場概況
先週は、S&P500、Dow、Nasdaqともに上昇して週を終えました。先週は、1,000社を超える企業の決算発表があり、またいくつかの重要な経済指標も発表されました。まだ、明らかに強気といえる状況ではないのですが、環境としては、弱気から転換するにはよい時期に来ていると考えています。
今週は大手IT企業の決算発表がありApple(AAPL)を除いたAmazon (AMZN) 、Meta (META) 、Alphabet (GOOGL) 、Microsoft (MSFT) などの決算はかなり厳しいものになりました。これらの企業は、競争力があるいい企業ではありますが、今回のように為替、広告現象などの厳しい環境下ではたとえ競争力があったとしても、投資家から厳しい目で見られることになると思います。今後は、従業員数やお金の使い方についてかなり厳しい指摘がされるようになるのではないかと思います。その中で例外として、Apple (AAPL) , は、よい決算でした。iPhone14 Proのサプライチェーンの問題等はありますが、今後の第4四半期もよい決算を出すためのシナリオを組んでいるのではないかと思われます。こればかりは実際に決算が発表されないとわからないですが。。
来週はFRBが金利政策を決定するための会合が開かれます。短期金利はさらに0.75%引き上げられることはほぼ確実視されています。この会合での論議のポイントは、次の1~2回の利上げの規模をめぐるものと予想されています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の火曜日の記事で、記者が中央銀行のコメントを吟味していたのは、この点でした。
まだ、インフレ率は高い水準を維持していますが、6月よりCPIの前年同月比が下がってきており、前月比も大きくは上げていないことからインフレのペールは明らかに鈍ってきており、勢いはつづかないものと考えております。今後の指標でこの辺りが明らかになるにつれて相場も元気になってくるのではないかと思います。
第3四半期のGDPは2.6%のプラスで、2022年のGDP全体は基本的にゼロに戻りました。あまり注目はされてきませんでしたが、高インフレ、成長鈍化、大量解雇の可能性などの経済問題は、中間選挙を控えた民主党が政権を維持する上で、困難な状況となっており議会は共和党が優勢となるものと思われます。
米国経済
10/25(火):S&Pケースシラー住宅価格、コンファレンスボード消費者信頼感指数
8月のS&Pケースシラー住宅指数(20都市)は13.08%の上昇と予想14%を下回りました。前回修正値は16.01%(修正前:16.06%)でした。
今回の指数では上昇率が過去最大の減速となりました。借入コストが倍増しているため需要を抑えていることが浮き彫りになってきています。このため、住宅市場は低迷し始めています。ただし、価格は伸びが鈍化しているが、依然として昨年の水準を上回っている状態です。7%に近づいている住宅ローン金利も影響し、潜在的な買い手が遠ざかり、一部の売り手も撤退しているようです。
10月の米消費者信頼感指数は102.5と、予想106.5を下回りました。前回修正値は107.8(修正前:108)でした。
この指数の低下は3カ月ぶりとなります。物価上昇のほか、米経済が来年リセッション(景気後退)に陥るとの懸念が重しになっていると考えられます。
10/26(水):新築住宅販売件数
9月の新築住宅販売件数は60.3万件と予想58.1万件を上回りました。前回修正値は67.7万件(修正前:68.5万件)でした。
前年同月比-10.9%となっており、こちらでも住宅ローン金利の上昇によって住宅市場が軟化していることがうかがえます。住宅価格の中央値は47万600ドルと前年同月比13.9%上昇しています。
10/27(木):耐久財受注、新規失業保険申請件数
耐久財受注は0.4%と予想0.6%を下回りました。前回修正値は0.2%(修正前:-0.2%)でした。
新規失業保険申請件数は21万7千件と予想21万9千件を下回りました。前回値は21万4千件でした。
10/28(金):個人所得・支出、PCEデフレーター
9月の個人支出は0.6%と予想0.4%を上回りました。前回修正値は0.6%(修正前:0.4%)でした。
個人所得は0.4%と予想と一致しました。前回値は0.3%でした。
9月は自動車、食品、衣類、処方薬、娯楽用品への支出が増加し、モノへの消費は0.3%増と、3か月ぶりに増加に転じています。旅行や外食などのサービス支出は0.8%増加しています。
このため、家計が貯蓄を取り崩して消費に回している可能性があること出てきています。貯蓄率が3.1%と、前月の3.4%から低下しています。
9月のPCEデフレータは0.3%でした。前回値は0.3%でした。
株式
先週末までにS&P500に属する企業のうち52%が2022年第3四半期の決算を発表しています。このうち71%が予想を上回るEPSを発表しており、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っています。EPSの実績値としては、予想を2.2%上回る結果となっており5年平均の8.7%、10年平均の6.5%を下回っています。このまま、2.2%が最終的な値となると、過去9年間で2番目に低いサプライズ率となります。
売上面では、S&P 500種構成企業の68%が予想を上回る売上を発表しています。これは5年平均の69%を下回っていますが、10年平均の62%を上回ります。全体では、各社の売上は予想を1.7%上回っています。これは5年平均の1.9%を下回りますが、10年平均の1.2%を上回っています。この結果、第3四半期の混合売上成長率は、先週の8.5%に対し、今週は9.3%となりました。この9.3%が今期の実際の成長率であれば、指数が10%を下回る収益成長率を報告したのは2020年第4四半期(3.2%)以来となります。11セクターすべてが前年同期比で増収を記録しており、エネルギーセクターがリードしています。
今後の見通しとして、アナリストは2022年第4四半期の収益成長率を0.5%、CY2022の収益成長率を6.1%と予想しています。2023年第1四半期と第2四半期については、アナリストは3.2%と2.0%の利益成長を予測しています。2023 年 CY については、アナリストは 6.4%の利益成長を予測している。
フォワード12ヶ月PERは16.3であり、5年平均(18.5)および10年平均(17.1)を下回っています。(FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
10/31(月):
<寄付き前>Global Payments (GPN), On Semiconductor (ON), Ryman Hospitality Properties (RHP), XPO Logistics (XPO)
<引け後>American Water Works (AWK), Hologic (HOLX), Kennametal (KMT), NXP Semiconductors (NXPI).
11/1(火):
<寄付き前>AGCO Corp. (AGCO), Eaton (ETN), Henry Schein (HSIC), Eli Lilly (LLY), Molson Coors Brewing (TAP), Newmont Corporation (NEM), Pfizer Inc. (PFE), Simon Properties (SPG), Uber (UBER).
<引け後>Advanced Micro Devices (AMD), Airbnb (ABNB), Cheesecake Factory (CAKE), Clorox Co (CLX), Cirrus Logic (CRUS), Match Group Inc (MTCH), McKesson Corporation (MCK), Mondelez International (MDLZ), ZoomInfo Technologies Inc (ZI).
11/2(水):
<寄付き前>Canada Goose (GOOS), Estee Lauder (EL), Generac Holdings (GNRC), Martin Marietta (MLM), Vulcan Materials (VMC), Yum! Brands (YUM).
<引け後>APA (APA), Bookings Holdings (BKH), Callon Petroleum (CPE), CF Industries (CF), Equinix (EQIX), Etsy (ETSY), Fastly (FSLY), Ingersoll Rand (IR), MGM Resorts (MGM), Omega Health (OHI), Qorvo (QRVO), Qualcomm (QCOM), Robinhood (HOOD), Roku (ROKU), Rush Street Interactive (RSI), Transocean (RIG), Tanger Factory (SKT).
11/3(木):
<寄付き前>ADT (ADT), Air Products & Chemicals (APD), CyberArk (CYBR), Barrick Gold (GOLD), Cheniere Energy (LNG), Cummins (CMI), Datadog (DDOG), Huntington Ingalls Industries (HII), Hyatt Hotels (H), Intercontinental Exchange (ICE), InterDigital (IDCC), Kellogg (K), Marriott (MAR), Moderna (MRNA),Papa John's (PZZA), Peloton (PTON), Regeneron (REGN), Restaurant Brands International (QSR), Royal Caribbean Cruises (RCL), Shake Shack (SHAK), Spirit AeroSystems (SPR).
<引け後>Air Lease (AL), Amgen, (AMGN), AMN Healthcare (AMN), Block (SQ), Cloudflare (NET), Coinbase Global (COIN), Corsair Gaming (CRSR), Con Edison (ED), DoorDash (DASH), Dropbox (DBX), EOG Resources (EOG), Insulet (PODD), Live Nation Entertainment, (LYV), Maxar Technologies (MAXR), PayPal (PYPL), Skyworks Solutions (SWKS), Starbucks (SBUX), Synaptics (SYNA), Twilio (TWLO), Universal Display (OLED).
11/4(金):
<寄付き前>Cboe Global Markets (CBOE), DraftKings (DKNG), Fluor Corp (FLR), Hershey Foods (HSY), Magna International (MGA), Malibu Boats (MBUU).
<引け後>
米国の主な経済指標
10/31(月):
11/1(火):ISM製造業景気指数
11/2(水):FOMC
11/3(木):ISM非製造業景気指数、耐久財受注、製造業新規受注、新規失業保険申請件数
11/4(金):失業率、非農業部門雇用者数
今週の着目点
今週の月曜日で10月が終わります。22年4Qの3分の1が終了しますが、主要株価指数の年初来の安値から少し回復基調にあることが見通せてきました。
今週は先週に引き続き決算発表が目白押しです。先週は1,055社が発表しましたが、今週は約1,700社が発表します。また、11月のFOMCとそして、月初の経済指標とイベントが多い週となります。
その中で、S&Pグローバルとサプライマネジメント協会が発表する10月の製造業とサービス業に関する最終報告がある。2022年第3四半期のGDPは+2.6%と予想を上回ったため、景気の減速を確認するためにデータを見る人が後を絶たないだろう。
11月2日のFRBの正式な政策声明とパウエル議長の記者会見ではFFレートを0.75%引き上げるというのが大方の予想です。ただ着目点としては、12月と2月に予定されているFRB会合においてどのように利上げし、FRBが何を言うかにフォーカスしていきたいです。先週は、これらの会合でFRBが利上げのp-エスを落として利上げを実施するとの見方(12月0.5%、2月0.25%)がありました。しかし、0.75%という大きな引き上げをするかもしれないという可能性も高まっています。
ただ、大方の予想としては、2月のFRB会合後の政策金利は0.5%になっているであろうというのがコンセンサスとなりつつあります。これから12月と2月の会合までの間にさらに多くの経済統計データの発表がありますので今後もこの予想が変化することにも着目していきたいです。
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