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米国市場:11/7週の振返りと11/14週の予定

市場概況

 先週は株価が大きく動き、10月31日週の下落分を戻してさらに補って余りある動きとなりました。S&P 500種指数は先週だけで6%近くも値を戻しました。それでも、今年も終わりに差し迫ったこの時期でも、同指数は年初来で16%近くも下落しています。DOWやNasdaqにも同様の回復の動きが見られましたが、Nasdaqに至っては、まだ27%以上下落している状況です。
 先週は、10月消費者物価指数(CPI)が予想より低かったことが、株価上昇のきっかけとなりました。のちに詳しく記載しますが、10月CPIは7.7%と、予想の8.0%、9月の8.2%から低下し、コアCPIは6.3%と、予想の6.5%、9月の6.6%から低下しています。このため、12月のFOMCでの金利引上げ幅のレートが変化し、0.5%の利上げが支持されるようになっています。ただ、12月のFOMC後の金利レートが引上げられた後でも、CME FedWatch Toolでは、3月のFF金利は4.75%~5%になるとされており、もうしばらく上昇すると予想されています。
 金利が上昇すれば、景気はさらに減速し、期待収益率は低下し、レイオフを発表する企業の数は増加すると思われます。FRBはインフレを抑えたと確信するまで、2023年までこの金利を維持すると予想されていることも念頭には入れておきたいです。
 また、中国が、感染者と密接に接触した場合の検疫を2日間から5日間に短縮するなど、厳しいCovid規則を一部緩和したことも、株価上昇に貢献しています。ただし、集中検疫の後、さらに3日間の自宅隔離が必要であることは変わらないため、効果としては限定的なものとなりそうです。木曜日、中国では4月以降で最も多い10,500人以上の新規Covid感染者を記録し、北京、広州、鄭州では現在過去最高の感染者数を記録しているため、引き続き動きには注目しておきたいです。
 このため、先週の株式市場の上昇は反射的なものと考えられ、一時的に株価はまた安くなると思われますが、金利上昇の終わりが見ていることもあり今後はドル高も是正されてくると考えられるため、今後も株価は引き続き高くなるのではないかと考えています。
 今後数週間で多くの経済データが得られるため、経済のペースやインフレの程度、今年の年末商戦で消費者が財布を開くことにどの程度前向きであるかなど、判断材料として今後の動き方を確認していきたいです。

米国経済

先週は経済指標の発表が少なく、CPIに注目が集まりました。
11月10日(木):消費者物価指数(CPI)、新規失業保険申請件数
消費者物価指数(CPI)は、7.7%と予想8.0%を下回りました。前回値は8.2%でした。6月にピークを付けて以来、前年比は下げ続けておりインフレの上昇率は今後も下降していくものと考えられます。CPIの前月比も0.4%と予想0.6%を下回っております。
 CPIの一服感の要因としては、いくつかの構造変化があると考えられます。まず第一にエネルギー・商品価格はすでに今年に入って下落傾向もしくは横ばいになっており、この部分での圧力がなくなってきていること。第2にISMのデータにも出てきている通り、サプライチェーンの混乱に改善の兆しが出てきています。最後に、賃金ですが、新規失業保険申請件数も上昇してきているおり、ITセクターではレイオフの嵐が吹き荒れており今後、こちらの数字が失業率、賃金上昇率にも反映されてくるため、今後、CPIの伸び率は鈍化していくとみています。金利上昇が過去にないペースで引き上げられたことによって、実体経済としての数字へはまだ反映されていませんが、今後こちらの数字も悪くなってくると思います。アナリストの多くは2022年末にはCPIは6%程度、23年末には2%台に収束していくとの予想が多くなっています。

新規失業保険申請件数は、22.5万件と予想21.9万件を上回りました。前回修正値は21.8万件でした。

株式

 S&P500種構成企業のうち、第3Qの決算発表を終えた企業は91%となっています。このうち、69%が予想を上回るEPSを発表しておりますが、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っている状況です。予想とのアップサイドの幅ですが、現状は予想を1.8%上回るEPSが発表されていますが、これは5年平均の8.7%を大きく下回り、10年平均の6.5%を大きく下回っている状況です。1.8%が今期の最終的なアップサイド幅であった場合、過去9年間で2番目に低い値となります。また、実際のEPSですが、第3四半期のブレンド(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定実績を組み合わせたもの)成長率は、2.2%となっており、9月30日時点の予想2.6%を下回っている状況です。2.2%が今期の実際の成長率であれば、指数が報告した収益成長率としては2020年第3四半期(-5.7%)以来の低水準となります。11セクターのうち4セクターが前年同期比で増益となっており、エネルギー、不動産、産業セクターがいい感じです。一方、前年同期比で減益となっているのは、7セクターで通信サービス、金融、素材などが厳しそうです。
 売上面では、S&P 500種構成企業の71%が予想を上回った発表をしています。これは5年平均の69%、10年平均の62%を上回っています。企業全体では、収益は予想を2.5%上回り、5年平均の1.9%を上回り、10年平均の1.2%を上回っています。第3四半期のブレンド売上成長率は10.6%です。
仮に10.6%が当四半期の実際の成長率であれば、7四半期連続で10%を超える売上成長率となります。
 今後の見通しとして、アナリストは、2022年第4四半期は-1.7%の減益、CY2022は5.3%の増益を予想しています。2023年第1四半期と第2四半期については、アナリストは1.7%と1.1%の利益成長を予測しています。CY2023については、アナリストは5.8%の利益成長を予測しています。

来週の主な決算発表(予定)

11/14(月):
<寄付き前>Clear Secure (YOU), monday.com (MNDY), Tower Semi (TSEM), Tyson Foods (TSN)
<引け後>DLocal (DLO),
11/15(火):
<寄付き前>Home Depot (HD), Walmart (WMT)
<引け後>Advance Auto (AAP)
11/16(水):
<寄付き前>Lowe's (LOW), Target (TGT), TJX Companies (TJX)
<引け後>Bath & Body Works (BBWI), Cisco (CSCO), Kulicke & Soffa (KLIC), Nvidia (NVDA), Victoria's Secret (VSCO), Williams Sonoma (WSM)
11/17(木):
<寄付き前> BJ's Wholesale (BJ), Kohl's (KSS), Macy (M)
<引け後>Applied Materials (AMAT), Farfetch (FTCH), Gap (GPS), Palo Alto Networks (PAWN), Ross Stores (ROST), StoneCo (STNE)
11/18(金):
<寄付き前>Buckle (BKE), Foot Locker (FL)
<引け後>

米国の主な経済指標

11/14(月):
11/15(火):生産者物価指数(PPI)、ニューヨーク連銀製造業景気指数
11/16(水):小売売上高、設備稼働率、鉱工業生産指数
11/17(木):住宅建築許可件数、住宅着工件数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数
11/18(金):中古住宅販売件数

今週の着目点

 今週は14日にバイデン米大統領と中国の習近平国家主席は、インドネシアでのG20サミットに先立ち、バイデン就任後初の直接会談を行う予定です。台湾をめぐる緊張、進行中のロシア・ウクライナ戦争、米国の対中関税、最近のチップやチップ機器の対中輸出規制などが話題となりそうです。

 先週に発表された10月CPI(消費者物価指数)が8%を下回ったことで、株式市場は大きく伸びましたが、10月生産者物価指数(PPI)もしっかりと確認しておきたいと思います。コンセンサス予想では、10月PPIは9月の8.5%から8.3%に低下すると予想されていますが、実態についても見極める必要があります。万が一、10月PPIが高い数値となった場合、先週上昇した相場に冷や水を浴びせ、またゆっくりとした下落相場になる可能性もないわけではないです。10月PPIが予想の8.3%を下回れば下回るほど、FRBが今後数ヶ月に行う利上げの規模が小さくなる可能性が高くなってきます。
 ただ、一つ気を付けておきたいこととして、PPIの数字から市場がFRBが利上げのペースを落とすと決めつけ、株式市場が再び大きく動くことです。次のFOMC(12月14日)までに、経済データがCPI、PPIの発表を控えており、こちらが違う方向性を示せば、市場の動きがギクシャクしたものになるかもしれません。
 上院は民主党が過半を握ることが決定しましたが、下院はまだ決まっていない州があり、11月24日の感謝祭までには中間選挙結果が大筋見ているでしょうから、今後のバイデン政権の運営にどのような影響があるのかがはっきりしてくると思います。どちらにせよ、11月、12月は今後も慎重に強気で行きたいとは考えています。

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