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米国市場:1/2週の振返りと1/9週の予定

市場概況

 今週は、S&P500指数は3895.08と先週比+1.45%上昇し、好調に推移しました。NASDAQ、DOWも同様に好調に推移しています。これで、来週の9日の月曜日の立ち合いで-1.4%以上下がらなければ、1月に入ってから最初の5立会日がプラスで終了します。1月の最初の5立会日がプラスの場合、アノマリー的には83%の確率でその年(この場合2023年)はプラスに終わり、その場合の過去の平均パフォーマンスは+14%でした。特に今年は、大統領選挙後3年目の年に当たりますのでこちらのアノマリーとしても上昇しやすい相場になっており、今年は大きな期待をもって相場にのぞんでいきたいです。

 実態経済のほうに目を向けてみますと、12月の雇用統計が予想以上に好調で、12月の失業率は3.5%に低下しています。平均時給の伸びは前年比4.6%でしたが徐々に鈍化の傾向がみられています。また、水曜日と金曜日に発表されたISM指数は製造業、非製造業ともに50を割り込み景気の後退を示しているようにうかがえます。その結果、S&P500構成企業の2023年の売上高やEPS、設備投資の水準については、より慎重な姿勢になると思われます。具体的には支出を削減し、キャッシュフローを保全するとともに、プロジェクトをより厳選せざるを得なります。クリスマス直前には、マイクロンが今年と来年の資本支出を削減すると発表し、今週はベライゾンも同じことを述べています。また、今週、アマゾンは、当初の1万人という予想をはるかに上回る1万8000人以上の雇用を削減すると発表しました。セールスフォースも10%の人員削減を発表しており、12月期の決算シーズンに向けて、さらなる人員削減の発表があるものと思われます。
 この結果、アナリストが出す今年のS&P500構成企業の収益予想は引き下げられてくるものと思います。
 12月のFOMCの議事録では、FRBが来年に利下げを行う予定はないとの見解がわかり、サプライズではありませんでした。カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁もインタビューで、FF金利は5.0%に達し、「2024年まで十分に」そこに留まると見ていると発言しており、大方の市場予想にも一致しています。10年債利回りはすでに下げつつあり金利の低下が株式市場をサポートしてくると思われます。
 状況からすると、今年はテクノロジー株よりも金利低下に伴って恩恵を受けそうな株がテーマになってくるのではないかなと考えています。

米国経済

1/4(水):ISM製造業景気指数
 ISM製造業景気指数は48.4と予想48.6を下回りました。前回値は49でした。
 2ヶ月連続で50を下回り、リセッションに入ってきていることを指示しています。企業のコメントは一部の業界を除いて弱気なコメントが多く、新規受注も45.2と先行きの雲行きは怪しそうです。仕入れ価格も39.4と低下傾向が鮮明となってきております。製造業面でのインフレはすでに過ぎ去っているようです。

1/5(木):新規失業保険申請件数
 新規失業保険申請件数は20.4万件と予想22.5万件を下回りました。前回修正値は22.3万件(修正前22.5万件)でした。

1/6(金):失業率、ISM非製造業景気指数、製造業新規受注、耐久財受注
 失業率は、3.5%と予想3.7%を下回りました。前回値修正値は3.6%(修正前3.7%)でした。雇用者数は23.3万人予想20.1万人を上回りました。前回修正値は25.6万人(修正前26.3万人)でした。注目されていた平均時給は前月比+9¢の32.82$でした。前年比では+4.6%でした。こちらも22年3月の5.9%をピークに前年比は減少傾向にあります。賃金の伸びが収まってくることでインフレも収まりやすくなるため、市場にとって朗報でした。
 ISM非製造業景気指数は、49.6と予想55.1を大きく下回りました。前月は56.5でした。
 製造業はひと月早く50を下回りましたが、非製造業は12月に大きく下げております。こちらも悲観的なコメントが多く需要サイドが弱いように見受けられます。それを指し示すかのように新規受注の落ち込みが前月の56から45.2と大きく下げています。先行きが急速に悪化しているようにみえます。
価格の下げ幅は大きくはありませんが、すでにダウントレンドを形成しており今後急速に弱くなる可能性があります。
 製造業新規受注は、-1.8%と予想-0.3%を大きく下回りました。前回値修正値は0.4%(修正前1.0%)でした。
 耐久財受注は-2.1%と予想‐2.1%と一致しました。前回値は-2.1%でした。耐久財受注が下がっており、企業の設備投資が絞られてきていることが見受けられます。

株式

 2022年第4四半期のS&P500構成企業の業績予想は、前期比では小幅に、5年平均比では大幅に下がりました。第4四半期のEPS予想は9月30日時点の予想から12月31日までに6.5%減少しました。この減少幅は、2022年第3四半期に記録した-6.8%の減少幅よりも小さいが、5年平均の-2.5%、10年平均の-3.3%の四半期よりも大きい状態です。
 2022年第4四半期にマイナスのEPSガイダンスを発表したS&P500企業の数は、前四半期の数より少ないが、5年平均より多いです。現時点では、指数構成企業100社が2022年第4四半期のEPSガイダンスを発表しており、このうち、65社がマイナスのEPSガイダンスを、35社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。5年平均の57社より多くなっています。10年平均では65となります。
 2022年第4四半期の利益予想は第4四半期の開始時点と比較して低くなっています。9月30日の推定(前年同期比)増益率3.5%に対し、本日現在、S&P500は前年同期比-4.1%の減益が予想されています。
 売上面でも予想値は下げられており、2022年第4四半期の売上予想は、9月30日時点の前年同期比の売上成長率予想6.3%に対し、現在(1月6日時点)では、S&P500は3.8%の売上成長率と予想されています。
 フォワード12ヶ月PERは16.5で、5年平均(18.5)、10年平均(17.2)を下回っています。しかし、第3四半期末(9月30日)に記録したフォワードPER15.2を上回っています。これは、9月30日以降、指数の価格が上昇する一方で、フォワード12カ月予想EPSが低下しているためです。
 今後1週間、S&P500種構成企業9社(うちダウ30種構成企業2社)が第4四半期の決算を発表する予定です。(FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

1/9(月):
<寄付き前>Acuity Brands (AYI)
<引け後>Jefferies (JEF), PriceSmart (PSMT), WD-40 (WDFC)
1/10(火):
<寄付き前>Albertsons (ACI), Bed Bath & Beyond (BBBY)
<引け後>-
1/11(水):
<寄付き前>-
<引け後>KB Home (KBH)
1/12(木):
<寄付き前>Taiwan Semiconductor (TSM)
<引け後>
1/13(金):
<寄付き前>Bank of America (BAC), BlackRock (BLK), BNY Mellon (BK), Citigroup (C), Delta Air Lines (DAL), JPMorgan Chase (JPM), UnitedHealth (UNH), Wells Fargo (WFC).

米国の主な経済指標

1/9(月):-
1/10(火):-
1/11(水):-
1/12(木):消費者物価指数(CPI)、新規失業保険申請件数
1/13(金):ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 先週は、重要な経済指標が発表されましたが、今週は重要な経済指標は12日のCPIまで特になく、ゆっくりとしたスタートになりそうです。13日からは12月期の決算発表の本格化を告げる銀行系の発表があります。金利の上昇に伴って、資金繰りに苦しむ消費者が増えているのではないかとも考えており、銀行系の特にJPM、WFC、BACが消費者、経済に対してどのようなコメントを発するのか確認していきたいです。
 また前日にTSMの決算発表があります。23年、24年の設備投資計画をどうしていくのかに着目したいです。マイクロンが発表したように設備投資を削減する可能性が高いとは考えています。
 次週の16日はMartin Luther King祝日のため17日からたくさんの決算発表が控えており、忙しくなる前に12月期の決算がどのような形になりそうなのかまとめて行きたいです。

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