米国市場:12/12週の振返りと12/19週の予定
市場概況
12月はアノマリー的に強気トレンドの時期ですが、先週は23年のアメリカのGDP成長率が0.5%程度になるという予想が発表されて、株価は大きく下落しました。S&P500は前週比‐2.1%と下落して終えました。下巻でも5.6%下落しており、4000の節目をあっさり割っております。
今週のFOMCでは成長率の低下、失業率の上昇、FF金利の上昇を予想として出されておりリセッションは避けられないものとなってきています。13日火曜日に発表されたCPIは予想を下回る結果となり、株価は大きく上昇しましたが、そのラリーが続きませんでした。
また、小売売上高が予想を大きく下回り、前月は下方修正されたことも大きく影響があったと思います。
このことから、2023年の S&P 500種構成企業の収益予想がまだ高すぎるといえると思います。実際、アナリスト予想として来年の予想を下方修正が進んできています。また、FRBのドットプロットも来年のGDP予想を下方修正(1.2%から0.5%)しており、同様のことが示唆されてきています。今後、さらに政策金利が引上げられ、金利が上昇すれば、企業の成長は難しくなりますが、10年債利回りはすでに3.5%で政策金利よりも低いところで安定しており、市場自体は利下げがどこでされるかを待っているものと思われます。また、12月の雇用統計は強いものでしたが、ドットプロットからはFRBは2023年と2024年にさらに多くの解雇が起こると見ており、労働市場が緩んでくることで、インフレ賃金圧力が徐々に緩和されることを期待したいです。
米国経済
12/13(火):消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数は前年比7.1%増と予想7.3%を下回りました。前回値は7.7%でした。結果、5カ月連続の鈍化してきており、上昇率は今年最低となりました。全米ガソリン価格が下がってきていることからエネルギーの上昇寄与も弱くなっています。
前月比は0.1%増と予想0.2%増を下回りました。前回値は0.4%でした。こちらも0.5%を7月以降下回ってきており、今後もインフレ圧力が弱くなってきていることを示唆する内容となってきています。エネルギー、商品先物もダウントレンドに入っていることから、CPIの伸びは鈍化するものと思われます。
12/14(水):FOMC
大方の予想通り、0.5%の利上げが発表されました。23年の金利見通しとしては、5~5.25%が示されこちらは市場予想より若干高めでした。インフレ鈍化を認めつつも、利下げの時期は明言せず次回の0.25%の利上げの可能性を残すものとなりました。
雇用統計を除き、他の指数はインフレ圧力がなくなってきた旨を示しているので、今後は利下げ時期を探ることになるかと思います。
また、2023年の成長率は0.5%に下方修正されており、ほとんどゼロ成長といっていいと思います。
12/15(木):小売売上高
小売売上高は-0.6%と予想-0.1%を下回りました。前回修正値は1.2%でした。(修正前1.3%)
新規失業保険申請件数は21.1万件と予想23.1万件を下回りました。前回修正値は、23.1万件でした。(修正前23万件)
12/16(金):
株式
アナリストは2022年第4四半期のS&P500構成企業の業績予想を前期比で小幅に、5年平均比で大幅に引き下げています。1株当たりで見ると、第4四半期の推定収益は9月30日以降で6.1%減少しています。この減少幅は、2022年第3四半期に記録した-6.8%の減少幅よりも小さいが、5年平均の-2.5%、10年平均の-3.3%の四半期よりも大きい。
2022年第4四半期にマイナスのEPSガイダンスを発表したS&P500企業の数は、前四半期の数より少ないが、5年平均より多いです。現時点では、インデックスに含まれる97社が2022年第4四半期のEPSガイダンスを発表しており、この97社のうち63社がマイナスのEPSガイダンスを、34社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。
この結果、2022年第4四半期のEPSは第4四半期の開始時点と比較して現在低くなっています。9月30日の推定(前年同期比)成長率3.7%に対し、本日現在、S&P500の(前年同期比)減益率は-2.8%との予想がされています。
仮に-2.8%が今期の実際の減益幅となった場合、同指数が(前年同期比)減益を記録するのは2020年第3四半期(-5.7%)以来のこととなります。
売上面では、アナリストが予想を引き下げており、その結果、2022年第4四半期の売上高は、第4四半期の開始時点と比較して、現時点では低くなっています。9月30日の推定(前年同期比)収益成長率6.3%に対し、本日現在、S&P500は4.0%の売上成長率を報告すると予想されます。
4.0%が今期の実際の成長率となった場合、同指数が報告した(前年同期比)収益成長率は2020年第4四半期(3.2%)以降で最低となる。
フォワード12ヶ月PERは17.3であり、5年平均(18.5)を下回るものの、10年平均(17.1)を上回っている状況です。また、第3四半期末(9月30日)に記録したフォワードPER15.2を上回っています。これは、9月30日以降、指数の価格が上昇する一方で、フォワード12カ月予想EPSが低下しているためです。(FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
12/19(月):
<寄付き前>
<引け後>
12/20(火):
<寄付き前>General Mills (GIS)
<引け後>Calavo Growers (CVGW), FedEx (FDX), Nike (NKE)
12/21(水):
<寄付き前>Cintas (CTAS)
<引け後>Micron Technology (MU)
12/22(木):
<寄付き前>CarMax (KMX), Paychex (PAYX)
<引け後>
12/23(金):
米国の主な経済指標
12/19(月):
12/20(火):住宅建築許可件数・住宅着工件数
12/21(水):中古住宅販売件数
12/22(木):実質GDP(前期比年率)
12/23(金):個人所得・消費、耐久財受注、PCEデフレータ、新築住宅販売件数
今週の着目点
先週は多くの経済指標が発表されました。FOMCも大方の予想通りの結果となっているため、今後は、利上げペースの鈍化、利上げの停止を確認した後で、いつ利下げが始まるかに焦点が移ってくると思います。その意味で、材料出尽くしで今後はPERのエクスパンションに期待していきたいです。今週は特にクリスマス週間ですので取引量は減ってきますが、この週はアノマリー的にプラスで終わることが多いためその結果に期待です。
経済指標面では、11月の個人所得・支出、個人消費価格(PCE)価格指数の最新情報を確認していきたいです。11月のPCE価格指数は、9月の6.3%に対し10月は前年同月比6.0%増、コアPCE価格指数は9月の5.2%に対し5.0%増と、ダウントレンドに入りつつあるため、このまま、11月のデータでもさらなる改善が見られることをはっきりと確認したいです。今週のFOMCでパウエルFRB議長が、FF金利の終値について検討する際、「インフレが持続的な低下経路にあるという確信、実質的にさらなる証拠」を探しているというコメントがあったことからも注目する必要があるかと思います。
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