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米国市場:5/23週の振返りと5/30週の予定

市場概況

今週は、Nasdaqを除く主要株価指数が5%以上上昇し、S&P500は節目の4000を回復しました。Nasdaqはまだ月間で2%近く下げてはいます。ただ、先週までの課題であったインフレの進行、記録的なガソリン価格、資金繰りに苦しむ消費者、継続するサプライチェーン問題、小売業者の在庫の肥大化など、いくつかの大きな課題は山積されたままです。

今週、市場が上昇したのは、FRBとインフレとの戦いに関する一般的なシナリオがある程度イメージが見えたことからだと考えられます。5月のFRB議事録では、6月と7月に50ベーシスポイントの利上げを行うと予告されており、こちらは、短期金利が上昇していることから市場も織り込みを始めていると思われます。また長期金利も2.7%~3%で落ち着きを見せてきています。
これを裏付けるものとして、超党派の議会予算局(CBO)によるインフレ見通しが出されています。CBOは、個人消費とサービス需要に牽引され、今年のGDP成長率が3.1%になるとの予測を発表しています。CBOは、消費者物価指数で測定される「猛烈な」インフレは頂点に達し、2022年は4.7%、2023年は2.7%、2024年は2.3%と、毎月冷え込むはずだという見解を示されています。CBOは、FRBが2022年末までにFFレートをを1.9%に引き上げ、2023年にはさらに2.6%に上昇させると予想しています。

金曜日に発表された4月の個人所得指数は前月比で低下し、CBOのインフレ予測に信憑性が出てきた気がします。CBOの予測では、米国経済が不況に陥ることなくFRBのインフレ対策に耐えられることを示唆しており、それが今週の市場の上昇につながったかもしれません。しかし、夏の間はガソリン価格が上昇し、インフレ圧力が高まり、個人消費にとってはアゲインストの状態ですのでまだリセッション懸念をもちつつ観測を続けたいです。

ガソリンやそれに関連する個人消費への影響に加え、景気減速の報道が増えてきています。今週は特にSnapがガイダンスを引き下げたことで、ネット系企業に大きく影響が出てました。
 上海でもロックダウンの解消に向けて進展があり、6月には解除の方向とのことです。ロシアとウクライナの戦争については、ロシア軍がウクライナ東部に進攻しており、バイデン米政権がウクライナに最新鋭の長距離兵器システムの派遣を検討していると報じられています。また、ロシアが400億ドルの国際債の利払いについても27日金曜日に実施されたかどうかも注目されます。この後、ロシアは6月23日と24日に2つの債券の支払いに直面しており、こちらも一時的なボラティリティの要因になるかもしれません。

米国経済

5月23日(月):
新築住宅販売件数が発表され、59万1千件と予想75万件を大きく下回りました。前月修正値も大きく改訂され、70万9千件でした。(修正前:76万3千件)
 金利上昇によって、30年固定金利が5.5%付近に戻ったことで、借換指数は前年比75%減となっています。また、住宅ローン申請状況を見ている減少しているようで5月の新規住宅販売件数も大きくならない可能性があります。

5月25日(水):
耐久財受注(前月比)が発表され、0.4%と予想0.6%を下回りました。前月修正値は0.6%でした。(修正前:1.1%)受注に軟化の傾向が見えてきており、6月も鈍化する可能性が高いです。鈍化することは、S&P 500種構成企業の売上高と収益の予想が再び下方修正されることになる可能性が高くなってきているということなのかもしれません。

5月26日(木):
2022年第1四半期GDPの2次予測が発表されました。実質GDPは事前予測の-1.4%から年率1.5%の減少に下方修正されました。このレポートにおいて、気になった点は個人消費が2.7%から3.1%に上方修正されている点です。これは、金利上昇やほとんどの商品・サービス、特に食料品とエネルギーのコスト上昇にもかかわらず、米国の消費者が第1四半期においても重要な成長エンジンとして機能していました。ただ、最近の消費者信用に関するデータでは、消費者がこうした買い物のためにさらにリボ払いの借入金に手を染めていることが指摘されて始めています。しかし、金利が更に上昇すれば、消費者所得のより多くの部分がこうした高水準の債務の返済に充てられることになり、個人消費が落ち込む可能性があります。
 後知恵ながら、2022年第1四半期のGDP改定値で指摘された個人消費の好調さは、物価上昇への懸念から消費者が耐久財などの購入を前倒ししたことが一因だったと考えてもよいかと思います。

5月27日(金):
 4月の個人所得・支出が発表されました。個人所得は前月比0.4%と予想0.5%を下回り、個人支出は0.9%と予想0.8%でした。このことから、消費者が貯蓄を使い、借金をしながら買い物をすることが確認できます。4月の実質可処分所得は5ヶ月連続で減少したが、実質個人消費は前年同月比2.8%増でした。
 4月のPCE(個人消費支出価格指数)は前年同月比6.3%増と予想6.2%を上回りましたが、3月の6.6%を下回りました。FRBが最も注視するPCEコアデフレーターは前年比4.9%増と予想4.9%と一致し、3月の5.2%を下回ってます。このことから、インフレ圧力がピークに達した可能性が高いという見方ができますが、数字からは、インフレ圧力が依然として高い水準にあることも示唆しています。
 このコア数値は食品とエネルギーを除いたもので、今週のガソリン価格は、この特殊なインフレ圧力がすぐに収まるものではないことを示唆しています。AAAによると、今週の米国におけるレギュラーガソリン1ガロンの平均価格は4.60ドルに達しています。これは1年前に比べて51%の上昇です。さらに、ガソリンの在庫が5年前の水準を下回っていることから、さらに悪化する可能性もあります。
 JPモルガンは、8月までにガソリン価格が1ガロン6ドル以上に跳ね上がる可能性があると予測しています。現状では、一般的な消費者がガソリン代として使う金額は年率4,800ドルで、前年比70%増となっており、支出に大きな影響を与えています。このため、小売業の過剰在庫の解消には時間がかかるとみられ、小売業も明暗がさらに分かれてくる可能性が高いと思います。
 ミシガン大学消費者信頼感指数の確報は、速報値の59.1から58.4に低下しました。4月の同指数は65.2でした。家計は、経済に対する短期的・長期的な見通しで特に悲観的になっています。現在の状況を示す指標は13年ぶりの低水準となる63.3まで下がり、将来の期待を示す指標は55.2まで低下しています。消費者は、今後1年間に物価が5.3%上昇すると予想しており、40年来の高水準に近い値を維持しています。今後5〜10年間は年率3%で上昇すると予測していました。

株式

S&P 500構成企業の97%が2022年第1四半期の決算発表を終えています。このうち77%の企業が予想を上回るEPSの実績を発表しており、これは5年平均の77%と同じである。企業全体では、予想を4.7%上回る利益を発表しており、5年平均の8.9%を下回っています。今期の利益成長率は9.2%となる見込みです。
 収益に関しては、S&P 500種構成企業の73%が実際の収益を予想を上回っており、これは5年平均の69%を上回っています。これは5年平均の69%を上回っています。企業全体では、売上高は予想を2.7%上回り、これも5年平均の1.7%を上回っています。今期の売上成長率13.6%となっています。
 今後の見通しとして、アナリストは2022年第2四半期に4.1%、第3四半期に10.2%、第4四半期に9.9%の収益成長を見込んでいます。2022年CYについては、アナリストは10.1%の利益成長を予測しています。
 フォワード12ヶ月PERは17.1と、5年平均(18.6)を下回っていますが、10年平均(16.9)は上回っています。

来週の主な決算発表(予定)

5/30(月):祝日(戦没者追悼記念日)
5/31(火):
<引け後>Ambarella (AMBA), ChargePoint (CHPT), Digital Turbine (APPS), HP (HPQ), Salesforce (CRM), Victoria's Secret (VSCO)
6/1(水):
<寄付き前>Capri Holdings (CPRI)
<引け後>Chewy (CHWY), GameStop (GME), Netapp (NTAP), PVH (PVH), SentinelOne (S)
6/2(木):
<寄付き前>Ciena (CIEN), Designer Brands (DBI), Hormel Foods (HRL).
<引け後>Broadcom(AVGO), Calavo Growers (CVGW), CrowdStrike (CRWD), lululemon athletica (LULU), Okta (OKTA).
6/3(金):
<寄付き前>
<引け後>

米国の主な経済指標

5/30(月):祝日(戦没者追悼記念日)
5/31(火):S&Pケースシラー住宅価格(20都市)(前年比)
6/1(水):ISM製造業景気指数
6/2(木):ADP雇用者数(前月比)、新規失業保険申請件数(前週比)、製造業新規受注(前月比)、耐久財受注(前月比)(確報)
6/3(金):失業率、ISM非製造業景気指数

今週の着目点

3連休明けは、月初の経済データが出てきます。4月のISM製造業と非製造業の指数があげられます。この指標では、新規受注や投入・生産コストに関するインフレコメントを注視し、現在の経済スピードと今後数カ月間の見通しに関する見方をさらに鮮明にしたいです。インフレに関しては、6月10日にCPI、14日にPPIの5月分が発表されるので、それを示唆するようなコメントを確認したいです。

賃金圧力については、5月の雇用統計で報告された前年同月比の平均時給上昇率を前月データと比較することになる。パウエルFRB議長は、インフレ圧力の重要な部分は雇用市場の逼迫に関連しているという見解を示しておりこの賃金上昇がどうなっているかは丹念に確認したいです。

FRBが6月15日に2日間の金融政策決定会合を開くため、この時点でのデータはかなり重要です。現在のところ、50ベーシスポイントの利上げが予想されていますが、会合が近づくにつれて得られるデータが、FRBの正式な政策声明とその後の記者会見でのパウエル議長のトーンの両方を決定することになりそうと考えています。

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