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米国市場:5/15週の振返りと5/22週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4191.98と前週比+1.65%で終了しました。NASDAQは12657.9と前週比+3.04%で終了しています。5月19日金曜日の株価は伸び悩みましたが、主要株価指数は週明けに上昇しました。S&P500とナスダックは年初来高値を更新し、ラッセル2000は黒字に転じています。
 先週は、米国の債務上限をめぐる懸念が再燃したため、金曜日は軟調な展開となりました。ケビン・マッカーシー下院議長の債務上限交渉担当者が、ホワイトハウス代表との非公開の会合を金曜日の朝に開始した直後に突然退席したとの報道を受け、週明けに浮上した合意への期待は後退しました。これは、単なる政治的なパフォーマンスと受け止めておりますが、過激なパフォーマンスが増えており、報道もそれに引きずられてエスカレートしている印象です。最終的には、双方合意には達すると思いますが、今週も上限問題をめぐるニュースに左右されるような展開となるのではないかと思います。ただ、合意に達したとしてもその詳細が重要だと考えており、その内容によって一喜一憂する場面があると思います。
 先週は、FRBの高官が講演を行っており、講演者たちのコメントも市場に影響を与えています。ただ、コメントの大半はタカ派的なコメントを発表していました。その結果、CMEのFedWatchツールによると、今年後半に2回程度の利下げが行われるのではないかと市場は予想しています。パウエルFRB議長はややソフトなアプローチをとり、FRBは6月の会合以降、利上げを一旦停止する可能性が高いと述べ、累積の引き締め努力と銀行破綻後の信用引き締めによるラグ効果を考慮する旨の発言を行っています。ただし、今後発表されるデータ次第である旨も伝えており、今週の4月PCE等を含めて6月のFOMC会合までに公表される経済指標の結果に注力する必要があります。
 また、先週は4月の小売売上高も発表されました。前月比+ 0.4%と市場予想の数字には達していませんでしたが、消費者のマインドが落ち込んでいないことが確認できました。雇用創出と賃金が上昇しているため目立って消費者の負債の話がされていませんが、先週のウォルマート(WMT)やターゲット(TGT)などの決算発表の際のコメントにあったように、消費者は支出を選別するようになってきています。今後も賃金と失業率の動きには注目していきたいです。
 以上のような状況から、先週のS&P 500は再び4,200近くまで上昇しましたがそのラインを抜けれずに終わってしまっています。今後は、FRBが一時利上げを停止する見通しであり、債務上限に関する合意がなされる可能性もあることから、これらがプラスの材料となって抜ける可能性もあるのですが材料としてはまだ力不足であり、もうしばらくは4200近辺をうようよしている気がします。

米国経済

5/15(月):ニューヨーク連銀製造業景気指数
 ニューヨーク連銀製造業景気指数は、‐31.8と予想‐3.8を下回りました。前回値は10.8でした。

5/16(火):小売売上高、設備稼働率、鉱工業生産指数
 4月の小売売上高は、前月比+0.4%と予想0.7%を下回りました。前回修正値は‐0.7%(修正前:‐1.0%)と上方修正されました。
 すべての小売りが好調ではなく、家具・インテリア販売店や百貨店、家電量販店など、新型コロナウイルス流行の恩恵を受けた分野は売上高がそろって減少。一方、外食産業やアルコールを提供する飲食店の売上高は伸びる結果となりました。
 設備稼働率は、79.7%と予想79.6%を上回りました。前回修正値は79.4%(修正前:79.8%)でした。
 鉱工業生産指数は、0.5%と予想0.1%を上回りました。前回値は0.4%でした。
 
5/17(水):住宅建築許可件数・着工件数
 住宅建築許可件数は141.6万件と予想143.2万件を下回りました。前回修正値は143.7万件(修正前:141.3万件)と上方修正されました。
 住宅着工件数は、140.1万件と予想140.5万件を下回りました。前回修正値は137.1万件(修正前:142万件)と下方修正されました。
5/18(木):中古住宅販売件数、新規失業保険申請件数
 4月の中古住宅販売件数は、428万戸と予想430万戸を下回りました。前回修正値は443万戸(修正前:)でした。
 前月比では、‐3.4%となり、前年同期比では‐23.2%となりました。中古住宅価格(中央値)は、38.88万ドルと前年同期比-1.7%となりました。過去最高だった昨年6月の41.38万ドルからは‐6.2%の下落となっています。地域別には、西部地域が昨年比で大きく下げています。中古住宅販売件数は過去15カ月のうち14カ月で減少し、2022年初めの水準の3分の2程度となりました。     昨年の政策金利の引き上げに伴い、住宅ローン金利が急上昇したことで、多くの買い手候補にとって住宅購入のハードルがさらに上がり、需要を圧迫しています。しかも金利上昇に伴い、低利の固定住宅ローンを利用している住宅所有者が売却を渋っているため、通常よりも市場に物件が出回りにくくなっていることも原因しているようです。
 新規失業保険申請件数は、24.2万件と予想25.3万件を下回りました。前回値は26.4万件でした。
5/19(金):
 

株式

 先週までに、S&P500に属する企業のうち95%が、2023年第1四半期の決算発表を終えています。このうち、78%の企業が予想を上回るEPSの実績を発表しており、過去5年平均の77%を上回り、10年平均の73%も上回っています。全体として、企業は予想を6.5%上回る利益を報告しており、これは5年平均の8.4%を下回るものの、10年平均の6.4%を上回っています。この結果、当指数は第1四半期末の予想に比べ、本日発表された第1四半期の結果が上振れした結果となっています。第1四半期のブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の見込みを合算したもの)の減益率は、第1四半期末(3月31日)の予想減益率-6.7%に対し、本日は-2.2%となりました。仮に-2.2%が当四半期の実際の減益幅であれば、同指数が2四半期連続で減益を記録することになります。
 売上に関しては、S&P500の76%の企業が予想を上回る売上高を発表しており、、これは過去5年平均の69%および10年平均の63%を上回っています。また、第1四半期の売上高が四半期末の予想と比較し上方修正され4.1%となっています。(第1四半期末(3月31日)の売上成長率は1.9%でした。)4.1%が当四半期の実際の売上成長率であれば、同指標が報告した売上の成長率としては2020年第4四半期(3.2%)以来の低さを記録することになります。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年後半は増益を予想しています。2023年第2四半期については、アナリストは-6.4%の減益を予測していますが、2023年第3四半期と第4四半期については、アナリストはそれぞれ0.7%と8.1%の増益を予想しています。2023年CY全体では、アナリストは1.0%の利益成長予測となっています。
 フォワード12ヶ月PERは18.3となっています。過去5年平均(18.6)を下回りますが、10年平均(17.3)を上回っています。
 今後1週間、S&P500の13社が第1四半期の決算を発表する予定です。
(FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

5/22(月):
<引け後>Nordson (NDSN), Zoom Video (ZM)
5/23(火):
<寄付き前>AutoZone (AZO), BJ's Wholesale (BJ), Dick's Sporting Goods (DKS), Lowe's (LOW), Williams-Sonoma (WSM).
<引け後>Agilent (A), Palo Alto Networks (PANW), V.F. Corp. (VFC)
5/24(水):
<寄付き前>Abercrombie & Fitch (ANF), Analog Devices (ADI), Dycom (DY), Kohl's (KSS)
<引け後>American Eagle (AEO), Degital Turbine (APPS), elf Beauty (ELF), Guess? (GES), Nvidia (NVDA), Splunk (SPLK), UiPath (PATH).
5/25(木):
<寄付き前>Best Buy (BBY), Dollar Tree (DLTR), Ralph Lauren (RL)
<引け後>Costco (COST), Deckers Outdoor (DECK), Gap (GPS), Marvell (MRVL), Ulta Beauty (ULTA), VMware (VMW).
5/26(金):
<寄付き前>Booz Allen Hamilton (BAH).

米国の主な経済指標

5/22(月):
5/23(火):新築住宅販売件数
5/24(水):
5/25(木):実質GDP、新規失業保険申請件数
5/26(金):個人所得・支出、PCEデフレータ、耐久財受注

今週の着目点

 今年後半の金融政策の方向性についてFRB高官が相次いで発言したことを受け、CMEのFedWatchツールでは、9月での利下げの予想が後退しましたが、引き続き11月、12月での利下げの可能性が高いと市場は判断しているようです。また、今週は議会が債務上限に関する法案を採決する可能性が高いのですが、ギリギリまで政治パフォーマンスが続くと考えると今週は市場にとっては動きづらい状況であると考えます。この方向性が確認されると市場は一気に動き出すと思います。
 経済指標では、個人所得・支出が発表されます。この動向が、先週発表された、ホームデポ、ウォルマート、ターゲットなど、小売業界の大型決算の結果を裏付ける格好になるかを確認を進めたいと思います。消費者がどのような支出をしているのか、また、消費者が貯蓄を切り崩しながら支出を続けているのか、などを確認することになりそうです。
 このデータと合わせて、FRBが好むインフレ指標の一つである最新の個人消費支出(PCE)価格指数も発表されます。今年1~4月のコアCPIが5.5~5.7%の範囲で推移していたのと同様に、コアPCEも11~3月は4.6~4.8%の範囲で推移しています。4月のデータでもこの傾向が続くようであれば、金融政策の先行き、先ほど述べた2023年後半の利下げがまだ織り込まれていることについて、市場が再考することになるかもしれません。

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