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米国市場:5/22週の振返りと5/29週の予定

市場概況

 今週のS&P500指数は、4205.45と前週比+0.32%上昇して終了しました。NASDAQは12975.69と前週比+2.5%で終了しました。
 米国の債務上限交渉の進展が報告され、ハイテク株が大きく動いたことで、週明けは好調に推移しましたが、結果としては、ほぼ横ばいの展開となりました。ハイテク株が中心なNasdaqは上昇しましたが、S&P500指数は、0.3%の小幅な上昇、ラッセル2000は横ばいで、ダウは1.0%下落しました。
 FRB高官のタカ派的な発言や、FRBの努力にもかかわらずFRBの目標とする2%のターゲットに対して、インフレ(特にサービス業)がほとんど進捗していないとの見方が出てきている兆候もあります。22年はロシアのウクライナ進行に伴う、エネルギー価格の高騰があったため前年比較でこれまでは容易に下げてきましたが、エネルギー価格は横ばいになっていることから、しばらくはこのまま停滞すると考えられます。その後、住宅ローン金利の上昇に伴う、住宅価格の下落等がインフレに反映され、労働市場が落ち着いてくることにより、安定してくるのではないかと思います。直近の動きとしては、PCEコア価格が予想を上回るなどインフレが再加速しているような兆候も見られるため、市場は、FRBがインフレ対策にもっと力を入れる可能性があるとの見方を強めています。パウエル議長は、インフレ率をFRBの目標値である2%に戻すためには、ある程度の痛みを伴うことが必要だろうと述べましたが、これまでのところ、まだ実現していないようです。
 今週のS&P500の動きは、4,200の抵抗線にぶつかっているように見られます。債務上限に関する進展が予想されることから、おそらく来週には、経済、雇用創出、インフレに関する重大な更新があるときに、市場は動くかもしれません。
 NASDAQは買われすぎの状態となってきていますが、プチバブルとしてこのまま加速していく可能性もあります。ただ、AI関連の一部の銘柄の上昇によって支えられているとの見方も増えつつあり、今後はAI関連銘柄にも幅広く買いが集まるのか、それとも、引き続きAI関連に資金が集まるのかの観察は続けておくべきと考えます。後者の場合、持続的な成長という観点では難しくなります。

米国経済

5/22(月):
5/23(火):新築住宅販売件数
 新築住宅販売件数は、68.3万戸と予想66.2万戸を上回りました。前回修正値は65.6万戸(修正前:68.3万戸)から下方修正されました。住宅の中央価格は420,800ドルと前年比で初めて下落に転じています。
5/24(水):
5/25(木):実質GDP、新規失業保険申請件数
 新規失業保険申請件数は、22.9万件と予想24.7万件を下回りました。前回修正値は22.5万件(修正前:24.2万件)でした。
5/26(金):個人所得・支出、PCEデフレータ、耐久財受注
 個人所得は、前月比+0.4%($80.1B増)と予想と一致しています。前回値は+0.3%でした。
 個人支出は、前月比+0.8%($151.7B増)と予想+0.4%を上回りました。前回修正値は‐0.1%(修正前0.0%)でした。
 PCEデフレータは、前年比+4.4%と予想4.3%を上回りました。前回値は4.2%でした。PCEコアデフレータは、前年比+4.7%と予想4.6%を上回りました。
 耐久財受注は、前月比+1.1%と予想‐1%を上回りました。前回修正値は3.3%(修正前:3.2%)でした。

株式

 5月26日までにS&P500に属する企業の97%が2023年第1四半期の決算発表を終えています。このうち、78%の企業が予想を上回るEPSの実績を発表しており、これは5年平均の77%を上回り、10年平均の73%も上回っています。全体として、企業は予想を6.5%上回る利益を報告しており、これは5年平均の8.4%を下回るものの、10年平均の6.4%を上回っています。
 この結果、第1四半期の混合決算(決算発表済みの会社の実績と決算発表前の会社の見込みを合算したもの)は、第1四半期末(3月31日)時点の減益率-6.7%に対し、5月26日時点では-2.1%となりました。仮に-2.1%が最終的な結果となれば、2四半期連続の現役となります。
 売上に関しては、S&P500に属する企業の76%が実際の売上が予想を上回って発表しており、これは5年平均の69%および10年平均の63%を上回っています。これは5年平均の69%、10年平均の63%を上回ったものです。この結果、第1四半期の売上高成長率は、第1四半期末(3月31日)時点の予想1.9%に対し、5月26日時点では4.1%となりました。。
 仮に4.1%が当四半期の実際の成長率となった場合、同指数が報告した売上の成長率としては2020年第4四半期(3.2%)以来の低さとなります。
 今後について、アナリストは2023年下半期も売上の伸びを予想しています。2023年第2四半期については、アナリストは-6.3%の減益を予想しています。2023年第3四半期および第4四半期については、それぞれ1.0%および8.4%の増益を見込んでいます。CY2023全体では、アナリストは1.3%の増益を予想となっています。
12ヵ月先のPERは17.8で、5年平均(18.5)を下回るが、10年平均(17.3)を上回る。また、第1四半期末(3月31日)の予想PER18.1倍を下回っています。
来週は、S&P500の9社(うちダウ30構成銘柄1社)が第1四半期の決算を発表する予定です。(Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

5/29(月):
5/30(火):
<寄付き前>
<引け後>Ambarella (AMBA), Box (BOX), Hewlett Packard Enterprise (HPE), HP (HPQ)
5/31(水):
<寄付き前>
<引け後>C3.ai (AI), Chewy (CHWY), CrowdStrike (CRWD), NCino (NCNO), Nordstrom (JWN), Okta (OKTA), Salesforce (CRM).
6/1(木):
<寄付き前>Dollar General (DG), Hormel Foods (HRL), Macy's (M)
<引け後> Broadcom (AVGO), ChargePoint (CHPT), Five Below (FIVE), lululemon Athletica (LULU), SentinelOne (S), Zscaler (ZS)
6/2(金):
<寄付き前>

米国の主な経済指標

5/29(月):
5/30(火):S&Pケースシラー住宅価格(20都市)
5/31(水):
6/1(木):ADP雇用者数、新規失業保険申請件数、ISM製造業景気指数
6/2(金):失業率、非農業部門雇用者数(NFP)

今週の着目点

 今週で、5月が終了します。5月はNasdaqを除き、主要指数は横這いの展開が続きましたが、月が変わりますので相場の雰囲気も変わります。Worst is Overとして、市場が上昇していくことに期待したいのですが、上昇の雰囲気を醸し出すエンジンがまだ見つからないです。6月は、今四半期の最終月となります。この期間に、製造業およびサービス業に関する多くのデータ、5月の雇用創出に関する複数のデータ、そしてインフレに関するいくつかのデータが提供されます。26日金曜日に発表された4月のコアPCE価格指数が予想を上回ったことや、月内にインフレが悪化したことを受け、CMEのFedWatchツールは、FRBがフェドファンドレートをさらに0.25%挙げる方向に傾いています。それと同時に、他の経済指標は、懸念されていたよりも良好に推移していることを示唆しておりリセッションは来ないのではないかと、市場に一定の安心感を与えつつあるようです。
 今週は、経済とインフレのスピードから金融政策について、かなり考えさせられることになりそうです。データを見ながら、来週のFRB高官が発言する内容のトーン・シフトに注目したいところです。市場はまだ、現在のレートの前後で年内は推移することを織り込みつつありますので、その方向性と乖離はないかという点に注目していきます。


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