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米国市場:9/18週の振返りと9/25週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,320.06と前週比-2.93%で終了しました。NASDAQは13,211.81と前週比-3.62%で終了しました。
 先週の株価は、長期金利の上昇によって株価は下落しました。長期金利は4.3%から上昇し4.48%と4.5%を伺う展開となっています。大型ハイテク株は2%の下落を記録しています。株価指数をみると、3日連続でほぼ安値引けの展開となっており落勢が強いことを示唆しています。
 9月の取引日はあと1週間は残っていますが、今月は例年通り状況は芳しくありません。Nasdaq指数は今月5.3%近く下落し、S&P500は4.1%ほど下落しています。来週に、大規模なラリーが起きない限り、株価指数は2ヶ月連続で下落することになります。もし、今週同様に売りの趨勢が強いようですと、株価指数は約5%下落した2022年12月以来の最悪の月となるかもしれません。
 今週のイベントを振替ってみると、FRB理事会とその後のパウエル議長の会見は、ほぼ予想通りの内容だったと思います。ただ市場はその結果に対し失望したのか、FOMCの後の株式市場は大きく下げています。株式市場はすでに調整局面に入っていましたが、FOMC後のパウエル議長の会見によって、市場が活力を取り戻すという展開にはなりませんでした。
FRBは今週の声明で、全米で力強い経済成長が続いていることを指摘しています。パウエル議長はこの結果を称賛し、その理由とて「消費が予想の他、強かったからだ」と説明しいました。が、現段階では力強い成長が経済にインフレをもたらすことも懸念しているようでした。しかし、現在の引き締め政策が役立っており、数年ぶりに実質金利がプラスに転じていることを認めていました。これは、インフレ率を2%に安定させる目標に向かって今後の展開に期待させるものでした。
 住宅市場の状況も発表されていますが、住宅着工件数、中古住宅販売ともに予想を下回る結果となっています。金利上昇によって、住宅ローンの金利も上昇しておりその結果、住宅市場も活力を失いつつあるというのが出てきているように見受けられます。
 長期金利は急上昇し、過去17年(2006年)には見られなかった水準に達しています。10年物利回りは4.5%近辺で推移しましたが、30年物利回りは木曜日に上昇し、4.5%近辺を上回って引けています。長期金利の上昇についても、FRBは言及していました。長期金利は今のFFレートよりもまだ低い状況ですが、市場がデータを咀嚼し、景気の過熱に対処するにつれ、金利は上昇を続けるかもしれないません。この金利上昇が続くと、これまで低金利を前提として組まれていたビジネスモデルが壊れ始めますので、結果として、銀行、金融、住宅、商業用不動産に影響が出てくることは明らかですし、その傾向は現れ始めています。ただ、大きな問題としてまだ取り上げられてはいません。
 エネルギー価格は上昇基調にあり、特に原油価格は今週1バレル90ドルを超え、好調を維持しています。エネルギー、天然ガス、ガソリンは消費者が必要とするものであるため、この価格上昇は消費者にとっての痛手であり、成長にとって逆風となる可能性が高いです。これらの価格が上昇すればするほど、消費者の裁量支出(小売、旅行、外食)が減少しますので、GDP成長という意味でブレーキがかかるかもしれません。先週の消費者物価指数(CPI)のヘッドラインは非常に高い数字でしたが、これはエネルギー価格の上昇によるものでした。来月発表される9月もそうなる可能性がある。ただ、原油価格が100ドルを超える展開になるかというと、そこまでは力強さはないかなと考えています。
 先週は、宅配・配送商品の大手であるフェデックスの決算発表がありました。同社は最終損益では黒字を達成したが、売上高では未達となりました。しかし、今後の業績見通しは上方修正された。このことは、一部の経済分野が依然として堅調であることを物語っており、年末商戦と配送シーズンを目前に控えたこれらの企業は、引き続き好調を維持する可能性が高く、株価は木曜日の下げ相場の流れに逆らって上昇しました。
 今週で、9月、そして今四半期の取引は最終週を迎えます。株式市場の下落傾向が強まってきてはいますが、VIX指数はそれほど上昇しておらず、また今週はエネルギーセクターが好調だったこともあり、市場に対しての恐怖が足りていないようにみています。そして、金利上昇も続いておりこちらの上昇が落ち着くまでは市場の観察に徹していたほうがよいと考えています。10月にそこをつけることがこれまでは多かったので、10月に入り市場の雰囲気が少し変わるまではのんびりと構えておいてもよいかもしれません。

株式

 S&P500種構成企業の第3四半期の業績見通しは、最近の四半期と比較するとマイナス幅は小さくなっています。マイナスの業績見通しを発表した企業の割合は10年平均と同程度となっていますが、アナリストによる業績見通しの引き下げ幅はこれまでの平均より小さくなっています。第3四半期の同指数は4四半期連続で前年同期比減益となる見込みです。しかし、第3四半期の予想減益幅は、この4四半期連続の中で最小となる見込みとなっています。
 ガイダンスに関しては、S&P500構成企業のうち、2023年第3四半期のEPSガイダンスがマイナスの企業の割合は10年平均と同じとなっています。EPSガイダンスを発表した会社の116社のうち、74社がマイナスのEPSガイダンスを、42社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。2023年第3四半期のEPSガイダンスに否定的な見解を発表している企業の割合は64%(116社中74社)となり、5年平均の59%を上回っているが、10年平均の64%と同水準となっています。
 予想修正に関しては、アナリストが2023年第3四半期の業績予想を引き下げた幅は平均より少ないです。1株当たりでは、第3四半期の予想利益は6月30日以降0.2%減少していますが、この減少幅は5年平均の-3.6%、10年平均の-3.4%より小さくなっています。
 全体として、S&P500種構成企業は第3四半期は前年同期比-0.2%の減益となると予想されています。。仮に-0.2%が実際の減益率であれば、S&P500種指数は4四半期連続の減益となります。仮に-0.2%であった場合、4四半期連続の減益になるが、この間の減益幅(前年同期比)は最小となります。
 11業種中8業種が前年同期比で増益となる見通しで、その筆頭は通信サービス業と一般消費財です。一方、前年比で減益になると予想されるセクターは、エネルギー・セクターと素材セクターを筆頭に3つあります。
 収益面では、S&P500種構成企業は前年比+1.5%の増収が予想されています。1.5%が実際の増収率であれば、S&P500種指数は11四半期連続で増収となります。
 前年同期比で増収が予想されるセクターは9つで、その筆頭は一般消費財と不動産です。一方、前年同期比で減収と予測されるセクターは2つあり エネルギーと素材となっています。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年第4四半期の利益成長率(前年同期比)を8.2%と予想しています。CY2023については、アナリストは(前年比)1.1%の増益を予想しています。。CY2024については、アナリストは(前年比)12.2%の利益成長を予想しています。(Source FactSet)


来週の主な決算発表(予定)

9/25(月):
<引け後>Thor (THO)
9/26(火):
<寄付き前>Cintas (CTAS), Ferguson (FERG)
<引け後>AAR Corp (AIR), Costco (COST), Progress Soft (PRGS)
9/27(水):
<寄付き前>Paychex (PAYX)
<引け後>Micron (MU)
9/28(木):
<寄付き前>Accenture (ACN), CarMax (KMX), Jabil (JBL)
<引け後>Nike (NKE), Vail Resorts (MTN)
9/29(金):
<寄付き前>Carnival (CCL)

米国の主な経済指標

9/25(月):
9/26(火):S&Pケースシラー住宅価格、新築住宅販売件数、コンファレンスボード消費者信頼感指数
9/27(水):耐久財受注
9/28(木):新規失業保険申請件数、GDP
9/29(金):個人所得・支出、PCE、

今週の着目点

 今週は第3四半期最後の週となります。先月好調だった耐久消費財は、予想に基づき大幅に上昇する可能性があります。金曜日は、9月の個人所得・支出、PCE、シカゴPMI、消費者信頼感指数などが発表されます。先週のFRBの決定を受けて、これらのデータは力強い成長のトレンドが続くかどうか注意深く観察しておく必要があります。
 今週も、決算発表は少ないのですが、今週は重要なデータを示唆してくれる企業がいくつかあります。NIKE(ナイキ)の発表によって小売業と中国の売上高/生産高を読み取ることができると思います。PAYX(ペイチェックス)も水曜日に決算を発表し、給与支払いに関する手がかりになると思います。COST(コストコ)の決算発表は火曜日の夕方ですが、期待度は高いです。最後に、CCL(カーニバル)が金曜日に決算を発表します。旅行需要が落ち着きつつありますが、今後の見通しについての一つの示唆になるのではないかと思います。
 ただ、今週は長期金利の動きを観察していきたいです。このまま上昇を続け新波動に入るかどうか、それとも4.5%付近で停滞するのか。この動きによっては、株式市場がさらに下落する可能性を秘めています。


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